安全衛生

労災事故と示談の手引 改訂新版

カテゴリー ー 安全衛生
著者 秋永 憲一 著
編者/編著者/編集
監修
発行 労働調査会
発行日 2018-10-15
判型/頁数 A5判/524頁
価格 3,300円(税抜価格3,000円)
送料 【1部 330円税込】
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ISBN 978-4-86319-670-4
備考
制作
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要約

本書は、労災示談についての基礎知識を丁寧に解説し、示談書の作成・留意点、示談交渉のポイントなど、示談の実務を網羅的に詳解。また、労災民事賠償額の算定方法から、最新裁判例をはじめ、裁判例における労災民事損害賠償額の算定事例を幅広く解説しています。高額労災事件一覧などの資料も充実。改訂新版では新たに労災裁判例等を大幅に加筆しました。初心者から専門家まで幅広く使える1冊です。

 

目次

第1部 労働災害における民事損害賠償の基礎知識

第1章 労働災害が発生すると企業はどのような責任を問われるか
1 労働災害における全産業の死傷者数(死亡及び休業4日以上)は前年に比べ約2.2%増加
2 過労死等の労災補償状況について-精神障害の労災請求件数、支給決定件数がともに2年連続で過去最多
3 過労死等防止対策推進法が公布・施行
4 労働災害について企業はどのような責任を負うのか
5 取締役が被災従業員に対して会社法上の損害賠償責任を負う場合とは

第2章 示談をするうえでの注意点-示談交渉を円滑に行うために
1 基本的な心得
2 被災者の迅速、適切な救助をはかり、受傷部位等の適切な医療処置ができる病院に速やかに移送すること
3 救助にあたり最善の努力をすること
4 労働基準監督署・警察署に連絡し、現場を保存すること
5 被災者の家族や遺族に速やかに連絡をとり、現場を案内し、了知した範囲で事故状況の概略を説明すること
6 見舞いに行くなど、被災者との接触を維持すること
7 死亡の場合、葬儀、初七日等の法事に必ず参列すること
8 事故状況の調査は事実に即して正確に行うこと
9 労働者死傷病報告書は事故のあった現場の所在地を管轄する労働基準監督署長に遅滞なく提出すること
10 被災者又は遺族の労災保険請求には積極的に協力すること
11 被災者又は遺族の今後の生活の不安を考慮すること(遺族補償-労災保険、厚生年金、企業内上積補償)
12 死亡やそれと同視し得る重傷事故の示談の時期は、被災者や遺族の身になって判断すること
13 傷害事故の場合は治癒の見通しが立ち、後遺障害等級が決定する頃に示談すること

第3章 労働災害の民事紛争事件を解決する方法とは
1 民事訴訟、示談、ADR等による解決方法とは
2 民事訴訟手続
3 労働審判手続
4 示談
5 労働組合との交渉

第4章 示談により労災事故に関する民事紛争を上手に解決するための基礎知識とは
1 示談とは
2 示談の効力とは
3 示談による解決方法の選択
4 状況によっては、示談をあきらめ訴訟を検討すること
5 示談書は公正証書にしておくのがベスト
6 示談と時効の問題は
7 示談書の作成について-最低限必要な記載事項
8 示談成立後に後遺症が発症した場合、追加請求できるか
9 示談が無効とされる場合とは
10 裁判上の和解に基づく義務の履行の態様が問題となる場合とは

第5章 示談に応じなければならないときとは
1 労災保険で被災労働者の全ての損害をてん補できるか
2 使用者の民事上の損害賠償責任の法的根拠は

第6章 一般不法行為責任とはどのようなものか
1 不法行為責任の成立要件
2 主張・立証責任
3 故意又は過失-損害発生の予見可能性と結果回避義務
4 相当因果関係
5 損害賠償の方法等
6 損害賠償の対象
7 過失相殺
8 損害賠償請求権の消滅時効

第7章 使用者責任とはどのようなものか
1 使用者責任とは
2 下請負人の被用者の不法行為について元請負人が使用者責任を負う場合とは-元請負人の被用者と同様の指揮監督関係の存在
3 元請会社が自社と雇用関係にない孫請会社の被用者の不法行為によって生じた損害について使用者責任を負う場合とは-直接間接に指揮監督するなど実質的な使用従属関係の存在

第8章 注文者責任とはどのようなものか
1 注文者責任とは

第9章 工作物責任とはどのようなものか
1 工作物責任とは

第10章 債務不履行責任-安全配慮義務違反とはどのようなものか
1 昭和50年最高裁判決-陸上自衛隊八戸駐屯地車輌整備工場事件
2 昭和59年最高裁判決-川義事件
3 安全配慮義務に限界があるのか
4 安全配慮義務違反についての主張・立証責任は誰が負うのか
5 安全配慮義務の具体的内容とは
6 使用者の安全配慮義務を規定-労働契約法

第11章 安全配慮義務と安衛法との関係は
1 安衛法は労災防止のための「最低基準」を定めたもの
2 安全配慮義務は安衛法の「最低基準」を超える義務を含む
3 安衛法を守るだけでは安全配慮義務の完全履行とはいえない

第12章 安全配慮義務は、雇用契約関係にあることが前提となるか
1 元請業者は、下請業者の被用者に対して安全配慮義務を負うか
2 元請業者及び下請業者は、孫請業者の被用者に対して安全配慮義務を負うか
3 注文者は、請負人の労働者に安全配慮義務を負うか
4 親会社は、子会社の被用者に対して安全配慮義務を負うか

第13章 過失相殺とはどのようなものか
1 不法行為責任と債務不履行責任とで過失相殺が異なるか
2 工作物の瑕疵によって発生した労働災害についても過失相殺がなされるか
3 過失相殺はどのようになされるか
4 裁判例にみる過失相殺の参考基準について
5 素因減額とは-過失相殺の類推適用
6 心因的要因を素因とする減額を肯定した裁判例
7 病的・体質的要因を素因とする減額を肯定した裁判例
8 「性格」を素因とする減額を否定した裁判例-電通事件最高裁判決とその判例理論に沿う裁判例
9 「性格」を素因とする減額を肯定した裁判例

第14章 安全配慮義務違反と不法行為責任に基づく損害賠償責任とで差異があるか
1 安全配慮義務違反と不法行為責任に基づく損害賠償責任の違いとは

第15章 業務上災害に関する労災保険給付の内容は
1 労災保険給付の概要
2 労災保険給付の種類
3 労災保険給付を補足する特別支給金とその性質
4 労災保険給付と民事上の損害賠償責任との関係
5 業務災害に関する労災保険給付請求の時効
6 業務災害の認定を受けるには、「業務遂行性」、「業務起因性」が必要
7 労働基準監督署長による労災保険給付に関する決定に不服がある場合の手続

第16章 脳・心臓疾患の発症と死亡(過労死含む)及び心理的負荷による精神障害の発病と自殺等の労災認定基準の概要等について
1 労働者自身の健康管理は基本的に個人の問題ではあるものの、過労死、過労自殺、セクハラ問題等は社会の重大な関心事
2 判例における労働者自身の健康管理責任と使用者の義務について
3 労災申請と裁判手続による使用者への民事損害賠償請求とは各々別個の手続
4 脳・心臓疾患の発症と死亡(過労死含む)及び心理的負荷による精神障害の発病と自殺等の労災認定基準の通達について
5 脳・心臓疾患の発症及び死亡(過労死含む)の労災認定基準通達の概要について
6 心理的負荷による精神障害の発病と自殺、セクシャルハラスメントの労災認定基準の概要について

第17章 労災保険給付と他の社会保険給付との支給調整とは
1 労災年金と国民年金・厚生年金との支給調整
2 休業(補償)給付と国民年金・厚生年金との支給調整

第18章 交通事故における使用者責任と運行供用者責任について
1 自賠法第3条の運行供用者責任の特徴は
2 運行供用者責任の免責要件とは
3 「運行供用者」とは
4 「他人」とは
5 自賠責保険給付の支払限度額及び仮渡金制度の概要について

第19章 交通事故と労災保険との関係はどうなっているか-第三者行為災害で示談をする場合、どのような点に注意したらよいか
1 第三者行為災害とは
2 民事損害賠償と労災保険との調整はどのようにするのか-「求償」と「控除」
3 労災保険給付調整の対象となる損害項目とはどのようなものか
4 自賠責保険等と労災保険との関係はどのようになっているか-被災労働者はいずれか一方を自由に選択できる
5 示談をする場合の注意点は
6 派遣労働者に係る第三者行為災害について
7 第三者行為災害に関する提出書類について

第20章 将来給付予定の労災保険給付金は損害賠償額から控除できるか
1 最高裁判所は非控除説を採用
2 従来の「非控除説」を微修正
3 民事損害賠償の側における調整措置(労災保険法第64条1項)
4 労災保険給付の側での調整措置(労災保険法第64条2項)

第21章 労災保険の遺族補償給付と民事損害賠償請求権者とが異なる場合の問題点とは
1 内縁関係にある配偶者への遺族補償給付の控除の可否
2 遺族補償給付の受給権者でない相続人への控除の可否

第22章 労災保険給付の遺族補償年金をもってする損益相殺的調整の対象となるのは「逸失利益の元本」か、それとも「遅延損害金」か等(最高裁大法廷平成27年3月4日判決)
1 損益相殺的調整の対象となるのはなにか

第23章 企業内労災上積補償制度について
1 企業内労災上積補償制度とは
2 どうして上積補償制度を設けるのか
3 上積補償制度と示談との関係は
4 大手企業における上積補償の水準はどうなっているか-死亡及び死亡と同視し得る重度障害に対して3,000万円台
5 上積補償規定を定めるときに注意すべきこと

別表1 「企業内労災上積補償の水準」

第2部 労災民事損害賠償額算定の実際

第1章 労災民事損害賠償額はどのように算定されるか
1 民事上の損害賠償だけでなく労災保険給付との関係についても考慮
2 労働災害による損害の区分
3 労働災害により死亡あるいは受傷した場合の損害賠償額の基本算定式
4 積極的損害の主な対象項目
5 消極的損害の主な対象項目
6 慰謝料額算定の基準は
7 損益相殺とは
8 損害額からの労災保険給付額の損益相殺と過失相殺との先後関係は-最高裁は控除前相殺説を採用
9 過失相殺の基準は
10 自賠責保険及び任意保険における過失相殺の基準は
11 ケーススタディー(実際に損害賠償額を計算してみる)

第2章 裁判例において労災民事損害賠償額はどのように算定されているか-損害額算定の部分を中心に
1 三六木工事件(横浜地裁小田原支部 平成6年9月27日判決)
2 喜楽鉱業事件(大阪地裁 平成16年3月22日判決)
3 暁産業事件(福井地裁・平成26年11月28日判決)
4 テクノアシスト相模・大和製罐事件(東京地裁 平成20年2月13日判決)
5 大庄事件(京都地裁・平成22年5月25日判決)
6 西日本旅客鉄道事件(大阪地裁・平成27年3月20日判決)
7 ニューメディア総研(訴訟承継人アドバンストラフィックシステムズ)事件(静岡地裁・平成24年10月11日判決)
8 環境設備・東部興産事件(福岡地裁・平成26年12月25日判決)
9 名神タクシー事件(神戸地裁尼崎支部・平成20年7月29日判決)
10 ナルコ事件(名古屋地裁 平成25年2月7日判決)

第3章 平均賃金を算定するには
1 平均賃金の基本的な計算方法
2 平均賃金の最低保障額
3 日日雇い入れられる者の平均賃金の算定方法
4 平均賃金算定例

巻末資料
1.高額労災判例一覧
2.自賠責保険の保険金額の変遷
3.慰謝料(死亡・後遺症)の裁判上の認定基準
4.入院・通院慰謝料表
5.後遺障害別等級表
※ 参考:外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準の改正について
6.傷病等級表
7.業務上災害による労災保険給付を補足する「特別支給金」について
8.労働能力喪失率表
9.労働能力喪失期間とライプニッツ係数表
10.簡易生命表・男
11.簡易生命表・女
12.被災者の生活費控除率
13.申立手数料額早見表-労働審判手続の申立等(裁判手続を利用する際に裁判所に納付する申立手数料)
14.公正証書等の作成などに準備する資料等について(抜粋)
15.少額訴訟手続及び民事調停手続の概要

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