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労働あ・ら・かると

今月のテーマ(2013年1月 その2)人材ビジネスいろはかるた

2013(平成25)年のお正月です。被災後2度目の冬の中、遅々として進まない復興の途上にある大震災と原発事故被災者の方々、困窮の中にある世界中の人びとに思いを寄せつつ、新年のご挨拶を申し上げます。

今回はお正月に因んで「人材ビジネスいろはかるた」と題してみました。

い 一を聞いて十を知る
『論語』の子貢が顔回を褒めた故事に基づいて、「物事の一端を聞いただけで全体を理解する」という意味で、非常に賢く理解力があることのたとえで使われ ますが、求人企業がこれを人材ビジネス会社に求めて、担当者が困惑することもよくあります。 「いい人がいたら採用したい」の「いい人」とは何かを、「一 を聞いて十を知」り、求人要件に落とし込んで可能な限り具体的な記述をした求人票を作成し、詳しい職務内容を、職場環境を含め、具体的かつ詳細に明示でき る人材紹介コンサルタントが求められているのです。
また、人材派遣ビジネスの場面においては、「一を聞いて十を知る」派遣スタッフは気配りに優れているので、担当業務外の電話受けやお茶出しをついつい行ってしまい、このことを派遣法違反と指摘されることもあり、「見ざる言わざる聞かざる」を行政指導によって強いられています。
ろ 論より証拠
元来は、「理論や仮定をあれこれ論じるよりは、目に見える事実や実例を示すほうが説得力がある。」という意味ですが、人材ビジネスの利用者からは「いく ら営業トークが『立て板に水』でも信用できない。 必要な候補者の履歴書を集めて持参し、具体的に期日に人を揃えられるかどうかを『論より証拠』で示してくれ。」という風に使われます。
人材を推薦する場面でも、「○○ができます。」「○○の経験があります。」だけよりは、やはり「○○の経験があり、自分の実力を確認するために試験を受けて○○の資格を取りました。」と言えるほうが、説得力があるのは当然。
は 花より団子
風流よりも実益、外観よりも実質を重んじることのたとえ。グローバル化の時代、「Pudding rather than praise.」という言葉も覚えておいたほうが良いかも。中国語ではなんというのでしょうか?台湾では「花より男子」が人気があると聞きましたが。
20年前は人材派遣のスタッフ募集広告に「大手町のオフィス街で働くお仕事情報!」といったキャッチフレーズが見られましたが、最近は「正社員募集!」とすると応募が殺到すると聞きます。「正社員」という言葉が「絵に描いた餅」でなければ良いですが。
に 憎まれっ子世にはばかる
人から憎まれるような者が、世間で蔓延(はびこ)ること。そのビジネスが「憎まれる」理由が、嫉妬心や単なる羨望であるのなら、大いにその能力を正しく 発揮して頑張ってほしいものですが、法の網の目をくぐる所業で憎まれているのなら、困ったものです。
またユーザーからのみ喜ばれ、働く人材からは恨まれるような人材ビジネスは、長続きできない仕組みが必要だと思います。
ほ 骨折り損のくたびれ儲け
求人企業のわがままとも思える求人条件を、ほぼ満たした人材をやっと探し当てたスカウト会社が、何度もの面接を繰り返してやっと内定寸前にこぎつけたの に、突然「本国の指示で採用は凍結なので」と言われてしまった場面や、職務経歴書の書き方を何度も添削し、面接の練習にもつき合った人材の「この会社を第 一希望にします」という言葉を信じて面談にも立ち会ったのに、「やっぱり辞退します。」と言われてしまった場面に脳裏を横切る言葉。「やはり成功報酬だけ のビジネスモデルはいかがなものか」と思える瞬間です。
へ 下手な鉄砲数打ちゃ当たる
人材ビジネスの場面では、「ビル倒し」と称し、人材派遣会社の新入社員教育の一環として高層ビルの最上階から地階まで飛び込み営業訪問をし、集めた名刺 の数を競わせる手法が流行りました。私の勤務先の一般社団法人日本人材紹介事業協会の事務所にも、未だに稀にお見えになり、一生懸命覚えた紹介予定派遣の 利用のメリットなどについて、滔々とお話しになったりするのを見ると、「看板見て入ってきましたか?」と言うのも気の毒になる場面も。 転職サイトを利用 する人材コンサルタントが「スカウトメール」を多発して高コストを招いている場面などでも見聞きします。場合によっては登録人材の希望をよく読まずに、ピ ントの合わない求人紹介をしようとして不評や苦情を招いていることも。
と 遠くの親戚より近くの隣人
韓国人の友人から聞いた話では、韓国の人の多くは失業すると「雇用安定センター(日本の職業安定所に相当)」に行くより前に、親戚の中の成功者を訪ねた (る?)ものだそうです。「深層心理に、国家の制度より親戚一族を頼る意識があるのかしら?」という思いが胸をよぎります。日本では、国家として憲法第第 27条「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」の要請に応えることと、国が無料の職業紹介をしなければならないというILO条約遵守の観点から 設置されているハローワークですが、縁故入職のほうがハローワーク経由より多い現状を見ると、親戚だけではありませんが、日本にも縁故を頼る実状があるよ うに思います。

<参考データ/平成24年版労働経済の分析(概要)/P.16>
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002jnnjatt/2r9852000002jnp0.pdf

続きは、後日のお楽しみと言うことで。
読者の皆様も考えてみられてはいかがでしょうか?

(注:この記事は、岸健二個人の責任にて執筆したものであり、人材協を代表した意見でも、公式見解でもありません。) 

【岸 健二 一般社団法人 日本人材紹介事業協会 相談室長】