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今月のテーマ(2013年1月)ミドルマネジャーの働く環境の整備が大切

ミドルマネジャーの評価についてのアンケート等を見ますと企業組織における重要性は多くのトップも認めていますし、現在はその期待に沿っていると の見方も多いようですが、新ビジネスの企画提案やグローバル化への対応、部下指導等についてはまだ不足していると感じている人もいます。

ミドルマネジャー自身も日常の業務に追われ、現在の仕事の仕方に不安を持っている人は少なからずいます。トップの期待に応え、現在の不安をなくすためには、会社、本人が何をすべきか具体的な方策を考え、実行する必要があります。

ミドルマネジャーの基本的な役目は「担当組織に期待されている目標、ミッションを部下との協力体制の下で達成し、組織を活性化していくこと」「部下を指導し、人材育成を行うこと」などで、このこと自体は昔も今も同じようなことが求められています。

しかし、経営環境が大きく変わり、新たな期待がミドルマネジャーに求められるようになってきています。従来型の仕事の仕方で今後、モチベーションを高めつつトップ層の期待に応えていくことは現実的には難しいといってもよいでしょう。

現在のミドルマネジャーの労働実態をみますと多くの人はプレイングマネジャーとしてかなりの業務を抱えつつ、個 人の業務目標や担当組織の目標達成、部下の指導、人材育成、新ビジネスの企画提案、トップ層への情報提供等を一応行っていますが、今後は今以上に質の高い 内容が求められることが予想されます。

一方、働く環境としては、グローバル化により競争が激化し、仕事量は増加していますが部下の人員は抑制されてい ます。経営はスピード化し、広い知識と能力、的確な判断と実行が求められていますが、そのような力が現在十分備わっていない状況にあります。処遇は成果反 映型になっていますので当然自分の目標達成にも注力しなければなりません。さらに、最近は働く人の意識が多様化し、結論を出すことに時間がかかりますし、パワハラ・セクハラにも留意して仕事をしていくことになります。

ミドルマネジャーは上司と部下の間の問題に加えて子供の教育、親の介護などいろんな問題が重なる時期でもあり、メンタル面で問題になっているとの話もよく聞きます。

経営環境の変化は一人の力では止めようがないものが多いのですが、それを乗り越えて仕事ができてこそ期待される ミドルマネジャーになれるのだという意見もありますし、実際に実行している人もいます。それだからと言って今まで通りの仕事の仕方でいいということにはな らないのではないでしょうか。厳しい経営環境の中でミドルマネジャーがよりよい仕事をしていくためには、会社も本人も効果的に仕事ができるように工夫をし ていかなければなりません。

会社全体が仕事の仕方についての見直しを求め、ミドルマネジャーが意識や仕事の仕方等を積極的に変えることで、 時間や心のゆとりを持つことができれば、会社の体質を変え、今以上の優秀なミドルマネジャーが育つ環境になると思いますし、そのことで、企業はもう一段質 の高いレベルの企業に発展することが可能になります。

それを実現するためには次の4点を実行することが大切です。

1つは、トップが自社をとりまく経営環境の変化や進むべき方向性を明確に示し、目標達成を全従業員に協力を呼び かけるとともに、仕事の仕方は過去にとらわれることなく、効果的な仕事ができるように抜本的に見直すことを社内に強く求めることが大切です。そのことに よって第一線のミドルマネジャーはその方針を積極的に推進することができ、効果的な仕事を通して、活力のある組織に変えていくことができます。

2つは、全社の人材教育、とりわけ管理・監督者の教育を強化し、広い視野と構想力、的確な判断ができる多くの人 材を育てることが大切です。ミドルマネジャーの能力が高まれば、部下の教育にも良い影響を与え、少ない人数で質の高い多くの仕事をしていくことが可能にな りますし、顧客から喜ばれる製品・商品・サービスを提供することも可能になります。そのためにはミドルマネジャーのニーズに合致した研修等も行って将来不 安を払しょくしていくことも大切です。

3つは、ミドルマネジャーは担当組織の仕事の内容を常に見直し、部下への業務委譲も含めて効果的な仕事をするよう努力するとともに部下にも業務改善を求めることです。

人数も増やすことが難しい状況下で、今までやってきた仕事に加えて新たな仕事をしていくことは不可能といってよ いでしょう。仕事をする際には、常に要・不要、拡充・縮小の視点に立って業務を見直し、必要度が低くなったものを廃棄し、新たにやるべきことを追加してい くことが大切です。

業務改善は、社内運動として会社全体が継続して行うことによって社内に定着し、効果は一層高まります。上司は必 要性のないものは依頼しない。必要な資料の優先度を決めて資料を常に的確に整備しておくこと、会議は効率よく、早く結論を出す、時間を有効に活用するなど 改善する方法はいろいろあります。無駄と思われるような業務をやめることや簡素化するには、経営トップ層や直属上司が率先して実行することが重要です。そ れができるようになればミドルマネジャーは無駄を省き、本来やるべき職務に注力できますし、会社の発展に寄与する提案やイノベーションを実現することがで きるようになります。

4つは、会社は透明性、公正性、納得性のある信賞必罰の処遇制度を導入することです。

従業員は自分の働いた結果が透明・公正・納得性の下で評価・処遇されることを望んでいます。そのためには処遇制 度をそのようなシステムに切り替えていくことが大切です。処遇方針・制度が明確であれば、上司は部下の指導・育成についてよく話し合い、お互いの信頼関係 をつくっていくことがしやすくなります。

ミドルマネジャーが心と時間に多少のゆとり持つ環境を作ることで能力開発に努め、新たな発想や難しい仕事へチャ レンジする気力が高まり、充実感のあるメリハリのある職場生活を送ることができようになります。組織の中核にいるミドルマネジャーが仕事に意気込みを持つ ことができれば会社全体の業務遂行に対しても大変好影響を与えることになるでしょう。

【MMC総研代表 小柳勝二郎】