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今月のテーマ(2012年02月 その4)有期労働契約の在り方についての審議会の建議と労働者派遣法の改正問題

有期労働契約の在り方についての審議会の建議においては、雇用形態について制限する記載はどこにもない。

労働者派遣法改正の政府案では、いわゆる登録型や日雇の派遣については特定の業務以外は禁止、製造派遣については常時雇用される労働者以外はすべて禁止されているのとは大違いだ。

昨年の民主・自民・公明の三党合意による修正案でも、登録型や製造の派遣の禁止は削除されたものの、日雇派遣については日雇の範囲を2月から30日に短縮し、禁止の例外を拡大したものの、原則禁止は残されている。

修正案自体は臨時国会の閉幕によりほごになったにせよ、これまでのところ派遣労働については雇用形態に制限を加えるという考え方は消えてはいない。

登録型派遣とは有期労働契約の雇用形態で行う派遣であり、日雇派遣とは有期労働契約のうち日雇の雇用形態で行う派遣であるから、労働者の雇用形態からみれば、登録型や日雇の派遣であろうと、有期労働契約であろうと違いはない。

それが一方では禁止されようとしていて、他方は何も制限を加えないというのは不思議でならない。労働者からすれば、何がどう違うのか、おそらく理解できないだろう。

両者の違いは、派遣の場合には派遣会社が労働者を雇用しているのに対し、派遣でない場合には、派遣会社ではなく、実際労働者を使っている会社が労働者を雇用している点である。

つまり、派遣会社が労働者を雇用しているものについては雇用形態に制限を加え、実際労働者を使っている会社が労働者を雇用しているものについては雇用形態に制限を加えないというものである。

派遣会社が労働者を雇用しているものについてはなぜ雇用形態に制限を加えようとしているのか、その理由は今もって分からない。

その理由を説明するためには、派遣会社が労働者を雇用しているものが実際労働者を使っている会社が労働者を雇用しているものと比較して、どのような問題があるのかを示さなければならないはずだが、労働者派遣法改正の政府案が国会に提出されて2年近くになるが、今もって示されてはいない。

結局、そういう問題はないというのが結論ではなかろうか。

確かに、リーマンショック直後の世界同時不況化では、いわゆる派遣切りが多数発生して、大きな社会問題となったが、それはそのときの一時的な現象で、その後は厚生労働省の毎月の発表でも有期契約労働者の方が派遣労働者よりも雇止めなどに遭っている。

つまり、有期契約労働者の方が派遣労働者よりも雇用が安定している訳ではないのだ。

ということは、労働者派遣法改正の政府案は、前提となる事実認識に誤りがあったとしか言いようがない。また、民主・自民・公明の三党合意による修正案も、日雇派遣の原則禁止を残している点で事実誤認があるのではないだろうか。

そうであるなら、有期契約労働者について雇用形態を制限しない以上、少なくとも派遣労働者についても日雇派遣を含め雇用形態を制限すべきではない。

労働者派遣法改正については、政府案が国会に出ているために、これに引き釣られて考えがちだが、冷静に客観的な事実に基づいて判断すべきで、政府案に囚われる必要はないのではないだろうか。

【木村大樹国際産業労働調査研究センター代表】