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労働あ・ら・かると

今月のテーマ(2012年02月 その3)若者よ! 気概を持ち、挑戦・未来志向と国際感覚を

2012年も、就職戦線は厳しい環境がつづく。「3月の卒業を前にした、この2月段階でも、就職先が決まらず、焦っている」、「履歴書を何通書いたことか。面接にも応じてもらえない」、「私も友人も数十社を回ったが、未だに働き口が見つからない」などなど、若者の働こうという意欲・気力を削ぐような悲痛な声が聞こえてくる。

厚生労働省の調べ(1月中旬発表)によると、この春、卒業して就職を希望し、就職先が内定している大学生は71.9%だ。前年対比ではプラス3.1ポイントの改善である。前年対比では、やや改善も、未だ3割近い学生の就職先が決まらず、悪戦苦闘しているのが今日の姿である。

その数、10万人を超える。2011年春から2012年春にかけて就職戦線を襲ったのが2011年3月11日の東日本大震災であり、その後のタイの洪水被害、超円高基調、欧州発の債務危機、発展途上国の成長路線にも陰りが見え始めるなど、企業を取りまく環境は激変、採用戦略は大幅に見直され、新卒者の就職意欲を削ぐ結果を招いた。

では、就活の印象はどうであったのか。厳しさに翻弄されつづけた就職活動であったのか、いや、それほどでもなかったのか。ここに興味深いデータがある。連合が実施した「2012年の新規就職者の意識調査」(2011年11~12月)によると、就職先が決まっている新卒、既卒3年以内の男女1,000人を対象とした結果では、「就活は“苦しかった”」が圧倒的に多いのかと思いきや、50.7%と過半数をやや上回る程度。それほどの「苦しさは感じられず“楽だった”」が49.3%と、これまた5割近い数値を示したことに注目したい。苦しかった、楽だったが拮抗するような就職戦線だったと理解していいのだろうか。

厳しい就職戦線を乗り超えてきた学生ほど、やる気やガマン強さがあるという人事担当者の声。就職するのに、それほどの努力もせず、楽して就職先が決まり、職場に入ってきた学生には、取りあえず就職できたからまずは本人も両親も一安心という気持ちがどことなくあって、甘えがみえ、いつしか離転職のグループに入ってしまう傾向がみられるという採用担当者の声。さぁ、この見方が当たっているか否かは、新卒者の心がけと受入れ側の人事労務戦略如何にかかってこよう。

ところで、全般的には就職戦線は厳しいとみていいが、2012年に入って、ここ1か月半近くの間に、主要企業、名の通った大企業の経営者、トップリーダーの語り口から、学生の採用にあたっての本音とグルーバル化する国際競争社会にあって、これからの人材(財)採用、とりわけ将来のリーダーをどこから、どのような姿勢で採用していこうとしているのか、機微に触れる発言が飛び出してきている。果たして、その方向とは―。

「会社は、社会的責任を果たすためにも、将来にわたって存続・発展させていかなければならない。それには、常に新たな人材(財)を確保し、育て、リーダーとしての役割を担ってほしいと思う。その覚悟のある人材を企業は求めている」と就職戦線に踊り出てくる学生に、就職するにあたっての覚悟、しっかりした考えを持って面接に臨んでほしいとエールを送る経営者は多い。

「会社は、経営戦略を考え、それなりに採用ワクを決め、試験や面接をして将来を任せられる人材の確保にやっきとなっている。新たに社会に飛び出そうとする新人には新人らしく振舞い、会社は、将来を託せる覇気と気概を持った学生であれば、採用ワクに捉われることなく採用するよう、人事採用担当者に申し入れているし、面接でもその点を聞き出すよう心掛けている」という経営者。

「これからの厳しい国際競争社会に打って出るには、日本人学生だけを採用していては、井の中の蛙になってしまう。外国人を将来のリーダーの一角に育てることも必要だと考え、多様な外国人採用を含め、対応してきている」と日本人学生に絞らず、優秀な外国人の学生にも広く門戸を開放している姿が読み取れる。

「面接していて強く気付くことがある。それは、日本人学生の目の輝きと外国人学生の目の輝きの違いだ。中国籍の学生や韓国籍の学生の方が、遥かに目が輝いている。キラキラしていると実感する。それに比べ、日本人学生の目に輝きが感じられない。面接を受ける態度・姿勢も甘すぎる」といった厳しい採用側からの声も聞かれた。

「新卒採用は、将来の幹部、リーダーを求めているのだ。このままだと、いずれ近い将来、経営首脳、リーダー層から日本人が消え、外国人経営者に占拠されてしまうのではと危惧する。相撲界ばかりでなく、社長も副社長も執行役員の大半が外国籍ということもあり得る」と指摘、日本人学生に、もっと気概を持てと鼓舞する経営者の姿も目にした。

そこには、何があるというのか。「いまの日本人学生は、就職というより、就社であり、まずは名の通った会社に入ることだけが目的化しているようだ。これでは、優れた外国籍の学生に遅れをとってしまう。会社の歴史や日本の歴史など外国籍の学生の方がよく学んでいるし、議論ができる。日本人学生は学んでいないし、議論を闘わせることに不慣れだ、逃げてしまう。残念だが力不足を感じる」と不満を洩らす経営者。

「グローバル化する経済、国際競争裡に出て行くには、日本人の持つ素晴らしい素質ともいえる真面目さ・堅実さ・研究熱心さ、助け合いのこころなど幾つもの利点を活かし、世界に雄飛する心意気をもっと発揮してほしい。その姿勢があれば就職戦線など怖いものなしだと思う」と学生に檄を飛ばす経営者。

責任の重い経営陣のポストまで登ってやろう、会社の将来を背負えるようチャレンジしよう―などと思うか、思わないか。経営者からは、昨今の学生を面接していて後者のグループが多いように感じる。これでは、何社もの面接を受けても、採用には届かないのではないかとの声も―。

雇用、採用など労働を長年ウオッチングしてきて感じることだが、日本の若者よ!もっと気概のある姿勢で面接を受けてほしい。芯からほとばしる覇気、未来志向が語れる、しかも国際的識見を養うことが、厳しい就職戦線で、面接に勝利できる近道の一つではなかろうかと思う。

世界は激しく動いている。その現実を学生時代に、しっかり学び、見極める力をつけているだろうか。会社は、国際舞台で勝負できる人材であれば、採用ワクなど関係なしに採用に踏み切ると断言する。

極端かも知れないが、採用してもらう、何とか採用してほしい側から、逆に、会社側がどうしても欲しい人材へと自らを磨き、気概という熱意を相手側に与えるぐらいの姿勢があってもいいと考えるが如何であろう。

【飯田康夫労働ジャーナリスト日本労働ペンクラブ前代表】