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企業における人事労務関連制度の実施状況について(一財)労務行政研究所の調査結果に触れて

労働評論家・産経新聞元論説委員・日本労働ペンクラブ元代表 飯田 康夫

会社には、人の採用に始まり、定年退職まで、いや人手不足の今日、定年後もシニアの活用のための勤務延長・再雇用制度など幾多の人事労務に関連した制度が多く存在する。それらは新しい会社も歴史のある会社も、幾多の変遷の中で、制度が誕生し、時に消えることもある。
人事労務制度は、会社の歴史を背負っているとも言われ、会社の歩みの中で誕生し、労使関係の中で生まれた制度もあろう。
今日、働き方改革が進み、柔軟な働き方や社会情勢を反映した仕事と家庭の両立支援、嫌がらせ・パワハラなどのメンタルヘルス対応、資格制度や労働時間短縮への取組、休暇制度―男性の育児休暇の取得、幅広い福利厚生制度など、取り上げれば際限がない。

世間の会社では、どのような普及を見せているのか。新しい課題としては仕事上での旧姓使用やテレワークのその後の取組、シニアの活躍策と70歳までの就業確保措置など、人事労務関係者にとっては、気掛かりな課題は山積だ。

そこで、最新データ(一般財団法人労務行政研究所が行った)である「企業における人事労務関連制度の実施状況」から,関心度の高い課題などに焦点をあて、その実態を示したい。
同調査では、28項目の制度・施策の実施率を取り上げているので、その数値を眺めることとしたい。

☆資格等級制度
職能資格制度の導入  53.7%
役割等級制度の導入  46.6%
職務等級制度の導入  35.9%

☆採用
職務別採用    83.2%
リファラル採用  57.4%
人材スカウト会社の利用 49%

☆労働時間・休暇
裁判員休暇   74.8%
フレックスタイム制  49.0%

☆柔軟な働き方
テレワーク・在宅勤務  73.2%
サテライトオフィス   15.8%

☆中高年・シニア
定年後の再雇用制度    90.3%
70歳までの就業機会確保措置 32.2%
61歳以上の定年制     22.5%

☆仕事と家庭の両立支援
男性社員の育児休業取得促進  49.3%
治療と仕事の両立支援    18.5%
LGBTQへの配慮施策    7.4%

☆福利厚生
独身寮    31.5%
福利厚生代行サービス 28.9%
GLTDへの加入  17.1%

☆メンタルヘルス
メンタルヘルスに関する相談窓口   76.8%
私傷病休職から復職支援プログラム  42.3%

☆リスクマネジメント
内部通報制度   93.3%
ハラスメント対策研修  81.2%
情報管理規定の作成   75.8%

☆その他
仕事上での旧姓使用  84.6%
副業・兼業の容認   52.3%
エンゲージメントサーベイ   48.3%
人事労務関連業務でのAI活用  20.8%

※なお、このデータは全国証券市場の上場企業などを対象に調査し、回答のあった298社の結果を集計したもの。

上記、実施率から見えてくるものは、少子超高齢社会を迎えている今日、男性の育児休暇制度利用が進み、60歳定年以降も、シニア世代の活用を考えた勤務延長制度が広がりを見せていることだ。
さらに副業・兼業を認める傾向が高まっていること。仕事と家庭の両立支援の輪がじわじわと高まり、旧姓使用を認める傾向が目立ち、嫌がらせ・いじめなどのパワハラが相変わらず相談件数のトップにある現実からその対応も多くの企業で取り組みが見られることなど、企業の取り組む姿勢が見えてくる。時代の流れに遅れをとらないよう、一歩、先んじた人事労務関連施策を重視していきたいものだ。
気掛かりな数値として、がん闘病者が増えている今日、治療と仕事の両立支援措置が低迷しているのが気になる。
定年後の再雇用や旧姓使用は、高い実施率を見せ、今後も90%台に向かうかと思われる。
人事労務に関連した諸制度は、働く者にとっては糧となり、働き甲斐、喜びをもたらすだけに、常に労使での点検と、明日の生きがいを生み出すものとして、社員やパートさんらの意見を踏まえた制度改革が求められる。大手企業、中堅企業、中小企業も、その実施率を参考に、時には独自の制度設計を生みだしてほしいものだ。