労働あ・ら・かると
パートさんの採用時はその家族を意識しよう
社会保険労務士 川越雄一
〇採用面接を終え、採用日を迎えますと何となくホッとします。しかし、パートさんの確保はここが起点です。私は人材確保を、採用した人が定着するまでと捉えていますが、パートさんは正社員に比べ格段に難しいと思います。なぜなら、パートさんは働くうえで家族の影響を受けやすいからです。そのために、本人はもちろんですがその家族を意識した信頼づくりが重要なのです。
1.パートさんは辞めやすい
〇パートさんは正社員に比べ辞めても代わりの仕事が見つけやすく、働きづらい会社にそう我慢してしがみつくことはありません。特に優秀で他社でも通用する人はなおさらです。
●採用はできたものの
〇求人票を出しても応募、問い合わせすらない会社も少なくありません。多くの中小企業は採用面接とはいうものの「人を選べない」のです。ですから、採用できただけでもありがたく、採用日を迎えると採用活動から解放されホッとします。それも束の間、「すみません辞めさせてください」。ちょうど3カ月ほど過ぎた頃が鬼門のようです。
●代わりの仕事が見つけやすい
〇正社員の仕事は、一旦辞めてしまうとそう簡単に代わりは見つかりません。ですから、少々嫌なことがあっても我慢して働き続けます。しかし、パートさんの仕事であれば、大企業や官公庁、中小企業まで選り好みしなければいくらでもあります。つまり、パートさんは仮に辞めても代わりの仕事が見つけやすいのです。
●そう我慢をする必要はない
〇代わりの仕事が見つけやすいパートさんですから、休日や勤務時間が自分の都合に合わなかったり、職場での理不尽な対応に我慢してまで会社にしがみつく必要はありません。特に今のような超売り手市場の時代はなおさらです。また、扶養家族として働いていることが多く、パートさんの定着には配偶者など家族の意向が大きく影響するのです。
2.ありそうでないのが会社への信頼
〇採用時点において、パートさんが会社へ全幅の信頼を寄せているとは言い難く、その家族はもっとです。ですから、本人はもとより家族を意識した信頼づくりが必要になります。
●会社への信頼はゼロを意識する
〇求人票を見て応募したわけですから、会社への信頼ゼロは言い過ぎかもしれません。しかし、会社としてはそれくらいの意識を持って丁寧な対応が必要ということです。採用時はパートさん確保の起点であり、ここからの対応が定着を左右します。特に、今の時代は会社を信頼していただき、勤務先として選んでいただくことが重要なのです。
●家族は本人以上に会社への信頼がない
〇家族にしてみれば信頼できる会社なのかどうか、採用段階では半信半疑ではないでしょうか。パートさんは面接も含めて何度か接しているものの、家族と会社が直接接することは基本的にないからです。「聞いたこともない会社だけど大丈夫だろうか…」と、家族関係が良好であればあるほど家族の心配は募ります。
●誠意でコツコツと築く信頼
〇パートさんは家族の影響を受けやすいので、本人以上に信頼を得ることが重要です。重要ですが一朝一夕にはできません。何しろ信頼というものは相手が決めることですから、こうしたら大丈夫という絶対的な方法はないのです。ですから、とにかくこちらの誠意をコツコツと重ねて不安感を取り除き信頼を得るしかありません。その一つが家族宛の採用挨拶状です。
3.家族の信頼を得る採用挨拶状
〇パートさんの定着に影響のある家族を意識した、信頼づくりの一つが採用挨拶状です。ポイントは手書きですが、他社がやっていないからこそ差別化になります。郵便料金は一通110円です。やってみる価値は十分にあります。
●採用挨拶状とは
〇会社トップからパートさんの家族へ差し出す手紙です。盛り込む内容としては採用のお礼に始まり、トップの自己紹介、会社の沿革、パートさんの育成体制、パートさんの仕事ぶりなどを盛り込みます。差し出すタイミングとしては法定試用期間が過ぎ、会社として継続雇用できると判断した採用後2週間くらい経った頃です。
●誠意が伝われば信頼を得やすい
〇手紙を書き慣れないとハードルが高いと思いますが、採用挨拶状はできればトップの手書きが良いです。字のうまい下手は関係なく手書きで一所懸命に書かれた手紙だからこそ、パートさんの家族に誠意が伝わりやすく信頼を得やすいのです。パソコンで下書きし、それを写せば意外と簡単に書けます。
●個人情報への配慮も忘れない
〇採用挨拶状はパートさんの家族へ差し出しますが、宛名情報の取得に配慮が必要です。今の時代、良かれと思って差し出しても「何で私の名前を知っているの」となりかねません。ですから、採用時の提出書類に緊急連絡先を加えておき、「会社からの連絡等に使用させていただくことがあります。」と明記しておきます。
〇パートさんは働くうえで家族の影響を受けやすいものです。だからこそ、採用時にその家族を意識して信頼を得ることがとても重要なのです。

