労働あ・ら・かると
最新データを読み解く 次代の企業社会を担う子どもたちの職業選択は
労働評論家・産経新聞元論説委員・日本労働ペンクラブ元代表 飯田 康夫
〇企業には、常に経営の近代化・刷新と発展、成長が求められる。それには、時代の流れを読み取る確かな情報の収集、商品企画力の強化、新卒採用や転職者などの人材の絶え間ない確保が必要だ。創業間もない企業も、10年、30年、50年、あるいは100年企業も人材の確保なくしては、経営の継続はあり得ない。
〇20歳前後で就職した新入社員も、やがて中堅から経営幹部へ、やがて定年を迎える。この間、約40年前後、企業の最前線で活躍し、リタイア組に入り、後輩に引き継ぐことになる。そこには常に、新卒採用や中途採用の転職組の人材が企業経営を継続することとなる。どの企業にあっても、40年前後の経過を経て、人材は入れ替わることとなる。
〇その次代を担う人材は、いま、小学生や中高校生だ。かれらは、今日の経済社会にあって、どのような仕事、職種にあこがれ、大人像を描いているのだろうか。今日の企業の明日を担う人材としてみれば、学生・生徒の姿をどう捉えればいいのだろうか。今どきの10歳代の子どもたちが望む仕事・職種の現実を眺め、10年後に社会人として登場するであろう子どもたちの夢、希望職業を展望したいと思う。
〇今どきの小学生・中高校生の将来の夢、なりたいものを、いくつかの調査機関のデータからひもとくと、時代の流れに敏感な子供たちのあこがれる仕事が読み取れ、興味が沸く。その一つ、学研教育総合研究所の調べによると、幼児の目に映るのは、1位が「パティシエ」と「警察官」、3位が「消防士」、4位が「アニメなどのキャラクター」、5位が「歌手・アイドル」だ。いずれもテレビ画面を通しての夢であり、憧れである。まだまだ社会の現実を知らない夢が前面に描かれているといえよう。
〇これが小学生になると、1位に登場するのが「ネット配信者」。10年前には登場することもなかった職業が一躍トップに躍り出てくる。2位には、「パティシエ」、3位が「警察官」、4位が「学校の教員」、5位が「医師」に変化する。
〇さらに中高生へと学びが上級生になると、中学生では1位に「会社員」が姿を見せ、2位には「公務員」と現実的な職種が登場。3位に「学校の教員」、4位に「エンジニア・プログラマー、ネット配信者、医師」へと変化してくる。
〇高校生になると、親の背中を見て、より現実的となり、1位が「会社員」、2位が「公務員」、3位が「学校の教員」、4位が「看護師」、5位が「エンジニア・プログラマー」となる。(いずれも2025年11月~12月に、2025年版幼児白書、小学生・中学生・高校生白書として公表)
〇こうしてみると、小学生は、ユーチューバーをはじめとするネット配信者の人気が高く、中高校生へと成長するにつれて、より現実的な職業選択眼が芽生え、現実的な「会社員」や「公務員」といったサラリーマン生活が浮上してくる。
〇続いて人財サービスを展開するアデコ㈱の小中学生2,700人対象の「将来就きたい職業」と「憧れの人」調査によると、アメリカのドジャースで活躍する大谷選手にあこがれ、男性の1位は「野球選手」、女性の1位は「パティシエ」。「憧れの人」は男性が「大谷翔平」、女性が「母親だ」。
〇小中学生男子の「将来就きたい職業ベスト10」は、以下のとおりとなっている。
〇1位「野球選手」、2位「サッカー選手」、3位「ユーチューバーなどの動画投稿者」、4位「会社員」、5位「エンジニア・プログラマー」、6位「警察官・刑事」、7位「公務員」8位「ゲームクリエーター」、9位「医者」、10位「建築・大工」。
〇小中学生女子の「将来就きたい職業ベスト10」は、以下のとおりだ。
〇1位「パティシエ」(お菓子職人)、2位「先生」(大学・高校・中学校・小学校・幼稚園)、3位「看護師」、4位「医者」、5位「会社員」、6位「公務員」、7位「美容師」、8位「ユーチューバーなどの動画投稿者」、9位「アニメーター」、10位「警察官・刑事」。
〇ベネッセ教育総合研究所の「将来なりたい職業(やりたい仕事)調査」によると、小学生男子では「プロスポーツ選手」が圧倒的な人気で、「ユーチューバー」や「研究者・大学教員」が続く。一方、小学生女子の1位は、「店員」(花屋・パン屋など)で、「パティシエ」や「看護師」、「保育士」などが上位にランクイン。
〇これが中学生になると、男子では「プロスポーツ選手」に加え、「教員」、「医師」、「ゲームクリエーター」などが人気を集め、女子では「教員」、「看護師」、「保育士」、「医師」が上位に。
〇高校生になると、男女ともに「教員」が1位に。男子では「SE」、「プログラマー」や「医師」が、女子では「看護師」、「保育士」が続く。
〇ベネッセ教育総合研究所の「将来なりたい職業(やりたい仕事)調査」ベスト10は次のとおり。
〇小学校4~6年生 1位「プロスポーツ選手」、2位「店員」、3位「教員」、4位「ユーチューバー」、5位「医師」、6位「パティシエ」、7位「保育士」、8位「看護師」、9位「芸能人」、10位「研究者・大学教員」。
〇中学生 1位「プロスポーツ選手」、2位「教員」、3位「医師」、4位「看護師」、5位「保育士」、6位「薬剤師」、7位「研究者・大学教員」、8位「ゲームクリエーター」、9位「イラストレーター」、10位「建築士」。
〇高校生 1位「教員」、2位「看護師」、3位「医師」、4位「地方公務員」、5位「保育士」、6位「SE・プログラマー」、7位「医療専門職」、8位「研究者・大学教員」、9位「会社員」、10位「薬剤師」。
〇調査機関によって、子どもたちが選択する職業に違いがみられるが、それはそれとして、多様性のある考え方が子どもたちの世界に広がっていると見た方が良さそうだ。
〇ここで、ソニー生命が昨年夏の段階で実施した全国の中高校生1,000人の「思い描く将来」をひもとくと、多角的な分析がなされ、興味がひかれる。(詳細はソニー生命のホームぺージを参照してほしい)
〇そこには、中高校生自らの将来について、「10年後は明るいか」、「日本と世界への意識」、「将来の夢」、「将来のライフスタイル」、「生きがい」、「ジェンダー意識」、「親との対話」、「学校の先生に対する評価」など多様だ。
〇いまの中高校生たちは、10年後には社会人として巣立っていく。その彼ら、彼女らは、「自身の将来」についての意識として、「10年後は明るい」と思い描く中学生が61%、高校生で54%見られた。果たして、これで、明るい将来が約束されているとみていいのか、不確定だが、まずは、明るさを描きたい子どもたちの期待に、社会がしっかり対応することが求められよう。
〇その子どもたちが「将来なりたい職業」(複数回答、3つまで)を眺めると、高校生男子のベスト10は、以下のようである。
〇1位「公務員」、2位「ITエンジニア・プログラマー」、3位「会社員」、4位「教師・教員」、5位「ユーチューバーなどの動画投稿者」、6位「歌手・俳優・声優などの芸能人」、7位「運転手・パイロット」、8位「ゲームクリエーター」、9位「モノづくりエンジニア」(自動車の設計や開発)など、10位「大工など建築」、「ゲーム実況者」。
〇高校生女子の「将来なりたい職業」ベスト10は、以下のようである。
〇1位「公務員」、2位「教師・教員」、3位「看護師」、4位「会社員」、5位「歌手・俳優・声優などの芸能人」、6位「保育士」、同6位「美容師」、8位「デザイナー」、9位「ユーチューバーなどの動画投稿者」、同9位「カウンセラーや臨床心理士」。
〇以上みてきたように、近い将来、企業経営の第一線で活躍してほしい、次代を担う世代の子どもたちの声に、今日の企業側がどう対応し、どういった明るい展望を描き、提供できるか問われていると言えよう。

