労働あ・ら・かると
離島の仕事の職業紹介は今
一般社団法人 日本人材紹介事業協会 相談室長 岸 健二
〇先月下旬に遅めの春休みをとって八丈島へ出かけました。東京都の離島に上陸するのは、これが初めてです。
〇これまで訪れた離島といえば、利尻・礼文、隠岐、壱岐・対馬あたりでしょうか。もっとも、小豆島や淡路島は自分の感覚では「離島」という感じが少し薄い。そういえば若い頃、釣りで三宅島沖まで行ったことはありますが、漁船で向かって結局上陸していないので、あれは「行った」とは言いにくいですね。
〇八丈島に向かう飛行機の、羽田空港離陸から着陸までの飛行時間は実質正味約45分でした。一般的なビジネスパースンの通勤より短い時間で、羽田から八丈島には着けたわけです。
〇空港に降り立って気づいたのは、バスもタクシーも品川ナンバーだということ。「ああ、ここも東京なんだな」と、関東運輸局の東京支局管轄であることを再認識しつつ、と言うことはハローワーク(公共職業安定所)も東京労働局所管なのだろうと、宿泊先に向かいながら思い巡らしました。
〇筆者は、出張にしろ観光旅行にしろ、国内でも海外でも、旅行先では、できるだけ郵便局と職業安定機関をのぞくことにしています。
〇→<カンボジアの郵便局で「『しごと』と『しくみ』」を観察する>
〇今回も例外ではなく、八丈島訪問は観光がメインではあったのですが、「この島では企業はどのように人材を採用確保するのだろうか?」「人材はどうやって仕事を探すのだろうか?」との関心は、いつものようにむくむくと湧いてきました。
〇スマートフォンで調べてみると、八丈島にはハローワーク自体はなく、文京区の飯田橋公共職業安定所が管轄しているらしいので、実際はどうしているのか。島で出会った人たちに聞いてみました。
〇お目にかかることができた島在住の方(ずっと地元育ちの方にお話を伺うことができましたし、何年か前に移住してきたと話す方もいらっしゃいました)何人もに「仕事はどのように探す(した)のですか?」と聞いてみましたが、地元の方は「高校を出てすぐに就職したので、就職指導の先生のお世話にはなったけれど、ハローワークは使ったことない。」とあっさりおっしゃいますし、数年前に移住してきた方は「島での仕事はパソコンやスマホで探した。」とのことでした。なるほど、やはりそこに落ち着くのですか。
〇求人者側だった年配の方のお話では、「昔は郵便で求人票を飯田橋職安に送ったり、役場でファクシミリを借りて送信したりした。」「たぶん今は役場が相談に乗ってくれるみたいだよ。」とのことでした。
〇残念ながら今回の旅程は土曜日曜でしたので、東京都庁の出先の八丈支庁や八丈町役場を訪問することはできなかったのですが、パソコンやスマホで探したと伺えた方も、アクセス先はハローワークインターネットだったそうなので、建物や施設としての公共職業安定所がなくても、「一億総スマホ時代」の到来によって労働力需給機能は活きているように思いました。
〇島から戻って、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」を使い、東京都や八丈町が地方公共団体としての無料所職業紹介事業の届け出をして職業紹介を行っているのではないかと調べてみたのですが(筆者のリテラシー不足もあるのかもしれませんが)見つかりませんでした。
〇むしろ島で聞いた「町役場が設置しているネット掲示板があるよ」という話を頼りにWeb検索をしてみたところ「八丈町おしごと掲示板」がヒットしました。
〇閲覧すると10年位前に移住支援事業と連携して設置された様子で、「後継者を探している方、事業の維持、開始や拡大のために雇用したい方の情報を集約し、町内で働きたい方へ発信します。」とあります。
〇職業紹介ではなく「募集情報の掲示板」との性格付けの様子で「町は職業紹介や斡旋をしません」「募集事業主と求職者の間で、いかなる損害が生じても、八丈町はその責めを負いません」とありました。求人内容は、地域の特色を反映して観光産業や介護施設の求人が目につきますが、人材からの相談機能はないようですので、推測するところでは、そう活発に成果が上がっているのかは疑問です。
〇むしろUIJターンを考える人材が利用すると聞いている、厚生労働省の地方人材還流促進事業プロジェクト「LO活(Local+就活)」のほうが、連携先の多さ(全国46の自治体(道府県)・200以上の学校)もあってアクセスは活発ではないかと思い、ここからのリンクを活発にする方策を考えたほうが良いのではと、お節介ながら思います。
〇もっとも、Uターン(地方出身者が首都圏などから故郷に帰って就職すること)Jターン(自分の故郷の近くに就職すること)はともかく、Iターン(都市出身者が自然豊かな地方に就職すること)人材については、もしかすると多くの離島と人材の奪い合いになるのかもしれません。
〇今回は「スキマ旅」の八丈島訪問でしたが、印象に残ったことがもうひとつあります。それは新聞は飛行機で運ばれるため、天候が悪くて欠航の時は届かないし、ふだんも昼過ぎにならないと配達されないということです。
〇こういう話を聞くと、「やっぱり離島だな」と思いますが、今多くの人はスマホやPCで新聞を読むそうで、スマートフォンがあれば仕事も情報も手に入る。便利さと不便さが、同じ場所に同居している不思議な心地です。
〇便利になった分だけ競争も広がっているということ。島の中だけでなく、外ともつながっている以上それは避けられないという「情報量過多による競争の激化」も感じることができ、わずか45分で来られる場所にそんな現実があるという少し不思議な気持ちを抱えたまま、帰りの飛行機に乗り込みました。
〇以上
〇(注:この記事は、岸健二個人の責任にて執筆したものであり、人材協を代表した意見でも、公式見解でもありません。)

