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労働あ・ら・かると

労働時間はキレイにしておこう

社会保険労務士 川越雄一

 

労働時間をキレイにしておくというのは、労働時間と非労働時間を明確に区別し、働かせた時間に対する賃金をキチンと払うということです。こうすることにより、職場内に時間を大切にする意識が醸成され、適度な緊張感により良好な雇用関係を築くことができます。

 

1.労働時間は雇用関係の中核

労働時間や休日は雇用関係の中核をなすもので、賃金に直結しますから、うやむやな部分は極力排除しておきます。雇用関係において労働時間は信頼関係づくりの基本です。

●労働時間とは
労働基準法において、労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことをいいます。指揮命令下に置かれている時間とは、使用者の明示または黙示の指示により業務に従事する時間、始業時刻前のラジオ体操など参加が事実上強制されている時間とされています。黙示とは口には出さず暗黙の中に意思を表示することです。
●労働時間の基本は1分単位
労働時間は1分単位で加算されます。たまに、1日15分未満を自動的に切り捨てる、いわゆる“丸め”がなされていることがありますがこれはNGです。仮に残業代を15分単位で払いたいのであれば、残業の指示を15分単位でおこない、それを過ぎたら業務を制止し退勤させます。「何もそこまで」かもしれませんが、今はそんな時代です。
●求められる客観的な把握・記録
厚生労働省の「労働時間適正把握ガイドライン」によれば、労働時間の把握方法等について次のように示されています。「労働日ごとに始業・終業時刻を確認・記録すること」、「始業・終業時刻の確認と記録は原則として客観的な方法によること」。また客観的な方法としては、原則として「使用者自ら現認すること」または「タイムカード・ICカードなどによる記録」とされています。

 

2.労働時間のズレは雇用関係のズレに

立場の違いから、経営者と従業員には労働時間について認識のズレが生じやすく、そのことが雇用関係のズレとなり、早期離職や未払い残業代請求をもたらします。

●経営者と従業員に認識のズレ
「何でこれが労働時間なんだ」、「何でこれが労働時間ではないのですか」といった具合に、経営者と従業員の認識にはこのようなズレがしばしば生じます。例えば、始業時刻の前に行われる全員参加の会議、会社に全員集合させ、社有車に乗り合わせて現場まで移動する時間などです。小さなズレは徐々に大きな不信・不満となって雇用関係のズレとなります。
●安心・安全感のない会社は見切られる
安心・安全に働きたいというのは従業員の基本的な欲求です。労働時間は賃金に直結しており雇用関係の中核ですから、ここがキレイでないと従業員は安心して労働時間を提供できません。特に働かせた後、賃金を払う時になって「労働時間ではない」と、勝手に時間をカットされたりすれば良好な雇用関係など築けようがありません。
●未払い残業代請求リスク
労働時間のズレは従業員の雇用関係のズレを生じるばかりか、未払い残業代を請求されるリスクもはらんでいます。多くの場合は経営者に労働時間であったとの認識がないのですが、客観的に見れば労働時間と評価されることがほとんどです。今は賃金請求の時効は3年ですから、毎月の賃金支払日から3年間は請求できます。もちろん離職後も同様です。

 

3.労働時間は貸し借りなしにしておく

労働時間をキレイにしておく第一歩は、従業員との間に変な貸し借りをつくらないことです。そのためには、労働時間と非労働時間、恩情と会社の義務を区別し、1カ月ごとに精算しておきます。

●労働時間と非労働時間を区別する
労働時間と非労働時間を明確に区別します。労働時間は目に見えませんから、その気がなくても区別が曖昧になりがちです。ですから、区別の認識をお互いにルールとして共有するとともに日々運用します。そして労働時間については賃金を払いますし、払わないのであれば明示または黙示を問わず働かせません。
●恩情と義務は割り切る
会社が施す恩情と課せられている義務は相殺できませんから、「それはそれ、これはこれ」と割り切ることが必要です。例えば、遅刻や所定労働時間中の中抜けを、恩情で賃金控除していないからといって、残業時の時間外労働手当を払わなくても良いということにはなりません。恩情はその場限り、義務はどこまでもついて回ります。
●1カ月ごとに精算しておく
労働時間の精算は原則として1日単位です。ですから、1日ごとに労働時間を把握しておき賃金計算期間である1カ月で精算します。原則として、日や月をまたいだ労働時間の貸し借りはできません。よく代休を多用する会社もありますが、これも貸し借りみたいなもので基本的には同一週内または月内処理しておきます。

「親しき仲にも礼儀あり」といいますが、雇用関係を良好に保つうえで労働時間をキレイにしておくことは最低限必要なことです。そのためには、労働時間と非労働時間を明確に区別し、従業員と変な貸し借りをつくらないことが肝要です。