インフォメーション

労働あ・ら・かると

まもなく新ビジネスパースンとなるみなさんへ ーまずは周囲をよく観察し、短絡的に退職しないようにー

一般社団法人 日本人材紹介事業協会 相談室長 岸 健二

この「労働あ・ら・かると」に寄稿しはじめて18年目になると思いますが、このところ3月には、新社会人となるみなさんへのメッセージを記しています。
昨年3月は「まもなく企業人となる若いみなさんへ 就職先企業や業界の過去を冷静に見ておこう」と、敢えて勤務先企業の過去の負の歴史を見つめて「教訓化と改善」を忘れずにと訴え、一昨年3月は「まもなく社会人となる若い人材の方々へ」と、働き方改革の中、そしてIT技術の進歩・生成AIの登場といった激動の中、新たな職場に幻滅しても安易に無計画なドロップアウトをするのではなく、確かな自己分析と、自分の所属した企業の社会とのかかわりをみつめて検証していく習慣の重要性を説きました。
一括採用一括入社という日本の雇用慣行についての批判があっても、「年度替わりの節目」に学業を終えて企業人となる人びとはまだまだ多数派です。そのみなさんに今年は「まずは周囲をよく観察/しまったと思っても決して短絡的に退職しないように」を提言したいと思います。

観察のひとつには、入社の際に社長からみなさんに送られる講話をよく記憶しておこうということがあります。
筆者は毎年、企業ホームページで公表されたり報道される社長訓話に目を通します。多くの場合、みなさんのご両親より上の世代の社長からの訓話は、若いみなさんにとってあまり魅力的ではなかったり、ピンと来ないこともあるでしょう。でもその内容を記録しておいて、何年か後に読み返すと、新人の時には気づかなかったその含意にふむとうなずくことがあるのではないかと思います。
スタートアップ企業で皆さんの兄姉の世代の社長の話を聴くこともあるでしょう。これから成熟に向かう環境に身を投じた方々は、今の熱気を記録しておくことも価値あることです。企業の伸長には、上り坂下り坂があることは当然と思われるでしょうが「『まさか』という事態に遭遇することもある」とよく言われます。そんな時に入社式訓示を読み直すことは、何らかの役に立つはずです。
講話そのものも大事ですが、その講話に対する社内のさまざまなインフォーマルコメントも入手すると、多面的な評価が把握できることになります。
メンター制度もずいぶん普及してきたようですが、メンター経由だけでなく、社内の各世代、各職種の情報収集ができるとなお一層複眼的に、自分の働く環境についての理解が深まると思います。

もう一つは万一「しまった。こんな会社だったのか。」と思っても、深呼吸してよく状況を見まわしてください、ということです。そのような会社では先輩達の退職率が高いでしょうから、その方達がどのような業界・職種に転じているかの情報収集は、有益です。
くれぐれも転職先を決めずに退職することのないようにしてください。人材紹介会社に相談し、自分の浅い職歴での転職についてのアドバイスを得てみることもご検討ください。(経験に裏付けられたアドバイスなしに、どんどん求人を紹介するだけの担当者には距離を置くことも大切なコツです。)
そして納得できる転職先が見つかったら、自らきちんと上司や人事担当に退職の意思を伝え、今後の縁を大事にする姿勢を貫いてください。くれぐれも「違法な退職代行」に手続きを依頼することのないように気をつけましょう。この間退職代行を使っての退職意思表示を受けた人事担当者の中には、「こんな手続きも自分できちんとできない人間を採用してしまった自分が腹立たしい。」と語る人もいます。自ら明確に意思表示できる能力は、ビジネスパースンに必須ですし、今は「アルムナイ採用」「カムバック採用」もある時代です。どんなに理不尽や不愉快なことがあった職場・企業だったとしても、冷静に「立つ鳥跡を濁さず」でいきましょう。

この二つのことは、それぞれ重要だと思います。社長訓話とその反応には、入社した企業のエッセンスが凝縮されているはずですし、もし「こりゃだめだ」と思った時の気の持ち方も大事です。
今回入社した会社でずっと職業人生を貫く場合でも、人生の節目で転職するにしても、客観的な情報収集と自己研鑽を続けることが必要です。なぜ自分はこの就職先を希望したのか、自分の「どのような能力・スキル」を磨いて力を発揮していきたいのかという基本的なことを忘れずにいれば、職業生活の様々な変化やトラブルに対して、混乱せずに対処できるのではないでしょうか。

以上

(注:この記事は、岸健二個人の責任にて執筆したものであり、人材協を代表した意見でも、公式見解でもありません。)