労働あ・ら・かると
人材獲得競争で予選を通過できる求人票をつくろう
社会保険労務士 川越雄一
〇ハローワークに求人票を出しても問い合わせすらない会社もあれば、そこそこに採用できている会社もあります。その違いは、人材獲得競争における予選を通過できているかどうかではないでしょうか。予選を通過するには、求職者が重視するといわれている「仕事の内容」「求人に関する特記事項」「事業所からのメッセージ」の工夫が重要なポイントです。
1.仕事の内容
〇仕事の内容は、経験者であれば専門用語を使っても求職者は理解できますが、そうでなければ中学生でも理解できる内容であることが必要です。ここでは未経験者を想定した記載内容を提案します。
●最初の3行(90文字)が勝負
〇仕事の内容は求職者が最も重要視する項目の1つです。360文字(12行×30文字)まで記載できますが、ハローワークインターネットサービスの検索一覧では最初の3行しか表示されません。この3行で関心を持ってもらえればさらにその先を読んでもらえますが、そうでなければそれで終わり、予選落ちです。また、この3行は民間のインターネット求人情報でも使用され、表示される箇所です。
●記載内容のポイントは
〇最初の3行で、当社はこんな会社で、こんな仕事をしてもらいますということを伝えます。新聞でいえば見出し部分のようなもので、ここの魅力度により読み続けてもらえるかどうか決まります。そして、4行目以降で内容をできるだけ具体的に記載しますが、次のような切り口で記載すれば分かりやすいと思います。書ききれない分は「求人に関する特記事項」へ記載します。
●求職者の知りたいことを切り口にして記載する
〇少し古い調査ですが、山形労働局が公表した求職者アンケートによれば、仕事の内容に詳しく記載してほしい内容は多い順から次のようになっています。1日の具体的な業務量、未経験者が仕事を覚えるまでの時間 、最初に覚える仕事、付随する業務です。ですから、箇条書きでも良いので、このような項目を切り口にして記載すると求職者の印象に残り応募へとつながる可能性が高まります。
2.求人に関する特記事項
〇求人に関する特記事項欄は、求人票1ページ目、真ん中の列下部に位置し、結構目立つ場所にあります。仕事の内容やその他の欄で書ききれなかった、「求職者から見た魅力」を記載します。
●600文字(30文字×20行)は大きい
〇求人に関する特記事項欄は、600文字(30文字×20行)まで記載でき、求人票の中では最も大きなスペースです。いろいろな会社の求人票を拝見しますが、ここがスカスカだったり、何も記載していないものも多く、実にもったいないことです。仕事の内容や労働条件がさほど変わらない場合、ここで求人内容をいかに深掘りできるかが大きなポイントです。
●何を記載すればいいのか
〇求職者が知りたいことを重点的に記載しますが、それぞれを箇条書きにしても良いと思います。例えば、始業から終業までの基本的な1日のスケジュール、資格取得支援や研修体制、ハラスメント防止のための体制、子どもが急病時の体制、年次有給休暇を取得しやすい仕組み、飲み会やレクリエーション等福利厚生の実施状況などです。また、面接・内定・入社予定日を記載しておくと応募しやすいと思います。
●このひと言で応募を後押しする
〇求人に関する特記事項欄は、600文字も記載できますから、上記の項目を記載してもスペースがある場合は、テレビショッピングと同じで、最後に求職者へ行動を促すメッセージを添えます。例えば、「会社見学は大歓迎、お気軽にお越しください」「詳しくは当社ホームページをご覧ください」「お気軽にお問い合わせ、ご応募ください」というようなメッセージを記載します。
3.事業所からのメッセージ
〇事業所からのメッセージ欄は、求人票には表示されませんが、インターネット検索では、見ることができます。「事業所からのメッセージ」があるのと無いのとでは、求職者の受ける会社の印象は大きく違います。
●600文字(30文字×20行)で他社求人との差別化を図る
〇求人に関する特記事項欄と同じく求人票では最大の600文字も(30文字×20行)まで記載できます。もちろん、改行やスペースも必要ですが、それでも500文字くらいはあるわけですから、他社求人との差別化が図れますので、この記載欄を使わない手はありません。基本的に何を書いても良いので、求人に対する会社の熱い思いを盛り込めば求職者にも伝わります。
●何を記載すればいいのか
〇何を記載しても良いのですが、例えば次のような内容が考えられます。
【社長のプロフィール】
〇プロフィールというのは他人が真似しようがなく最大の差別化項目です。社長が創業前にどんな経験をしたか(できれば失敗談が良い)、何がきっかけで起業したのか、2代目であれば事業を引き継いだきっかけ、会社(事業)を通じて何を実現したくて、どんな仲間がほしいのか、趣味、好きな食べ物、などです。
【先輩社員からのメッセージ】
〇最近入社した先輩社員がいれば、その人の言葉として、応募の動機、入社時の不安、研修体制、現在どんな仕事をしているのか、仕事で嬉しかったことなどをメッセージとして記載します。求職者にとって、身近な人の話は現実的であり応募の参考になります。
〇人材獲得競争は、予選を通過し決勝戦に残らないと面接・採用できない時代です。そのためには、ハローワーク求人票における3つの記載欄を見直してみることが有効です。