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パートさんの募集・面接は商談のつもりで取り組もう

社会保険労務士 川越雄一

 

パートさん雇用の入口は募集・面接です。早期離職やトラブルの多い会社に限って、ここが甘く双方に食い違いが起きやすくなります。ですから、募集・面接は商談のつもりで、パートさんに会社を選んでもらえるような取り組みが必要です。

 

1.採用手順が甘い
パートさんの採用は正社員に比べて軽く扱われ、採用手順も甘いことが多いのではないでしょうか。もちろん、仕事の責任度、人件費等を考えればある程仕方ないところもありますが、チーム全体で考えればパートさんも貴重な人材です。
●求人票の記載が甘い
求人票が甘いと応募対象企業から外れます。例えば「仕事の内容」がスカスカで抽象的、「賃金額」の範囲が大きくてもらえる賃金額が不明確、「求人条件特記事項」が簡単すぎて会社のイメージが分かりにくいというようなものです。パートさんの獲得においてライバルは大手企業であることもあり、それらより自社に魅力があることを伝える必要があります。
●面接後のフォローが甘い
採用面接は面接時間が重要ですが、その後のフォローはもっと重要です。これが甘いと面接後に辞退されることが多くなります。履歴書を見ながら型どおりの質問をし、型どおりの回答で面接終了、肝心な労働条件の詰めや、応募者のニーズの把握はサラッと済ませ何となく採用し、明日から出勤ということも珍しくありません。
●働き方ニーズの把握が甘い
パートさんの場合は配偶者の扶養家族となって働いていることが多く、働き方のニーズもそれに沿ったものであることがほとんどです。しかし、わずか30分程度の面接では正確なニーズを把握することは困難です。また、配偶者の意向も強く働きますから面接時だけでは把握が甘くなります。扶養家族の範囲だけでもいろいろなレベルがあります。

 

2.入口での食い違いは致命傷
人が二人以上いれば少なからず食い違いが生じます。特に、パートさんとの雇用関係において入口である採用時の食い違いは致命傷です。パートさんの多くは食い違いを我慢して働き続けることはないからです。
●「えっ、こんな労働条件なんですか」
人は自分に都合よく解釈する傾向が強く、曖昧な求人票では互いの食い違いが広がります。そして、入社後の現実に「えっ、こんな労働条件なんですか」ということになります。この食い違いはなかなか修復できません。パートさんの場合は、賃金はともかく、仕事の内容、労働時間、休日は要注意です。
●「他社が決まりましたから」
面接を終えてホッとするも束の間、「他社が決まりましたから」と採用を辞退される人も少なくありません。これは良いという人に限ってそういうことが多いのでガクッとくるのです。どうせなら、辞退理由をもっとオブラートに包んでほしいものですが、今どきはダイレクトですから、会社にショックを畳みかけます。
●「こんなはずじゃなかった」
扶養家族として働くというのはパートさんにとっての最重要事項です。扶養家族制度の是非はともかく、現行制度がある以上、その恩恵が受けられなければ「こんなはずじゃなかった」と早々に離職です。特に、配偶者の収入が多いほど扶養家族の恩恵は大きく、それが受けられないような働き方など想定していません。

 

3.会社への信頼を高める3つの取り組み
募集・面接時は求職者に会社への信頼を高めるために重要な場面ですから、例えば次のような取り組みが有効です。小さな会社でもその気になればすぐにできます。
●求人票は求職者目線を徹底する
求人票は求職者が見てどう思うかがポイントです。どうしたらパートさんが応募しようという気になるかです。パートさんの場合は「休みやすさ」が重要です。また「経験者優遇」は応募しづらくなります。もちろん、求人票に書いたことは事実である必要があり、客寄せパンダ的な求人票は論外です。
●面接来訪お礼状で会社の誠意を示す
お礼状はハガキで良いのですが、30人程度の会社であればトップによる手書きが原則です。面接日当日に差し出しますと翌々日には届きます。面接後に複数の会社から内定をもらい「どっちの会社にしようかな」と迷ったときに、このような手書きのハガキが微妙に影響するのです。仮に影響しなくても63円で済みます。
●応募者アンケートで事前面接を行う
応募者アンケートというのは病院の問診票のようなものです。面接前に応募者へ送り面接日に持参していただきます。主な内容は扶養家族の希望レベル(税金、社会保険、配偶者の家族手当支給基準)、将来の勤務時間延長の可否などです。ポイントは配偶者等の家族と相談のうえ記入していただくことです。これにより「こんなはずじゃなかった」になりにくくなります。

今、多くの会社ではパートさんを選んで採用できる状況ではないと思います。ですから、パートさんから選んでもらえるよう、商談のつもりで募集・面接に取り組むことが求められているのです。