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25卒就活生と学生の就職観

就職・採用アナリスト 斎藤 幸江

●25卒のスタートが早いっ!
昨年(24年春卒業予定者の採用)から、インターンシップ参加者の青田買いが増加していたが、今年はさらに早い。10月以降、夏のインターンシップに参加した25年春卒業予定者へのアプローチが、かなり盛んだ。
エン・ジャパンのスカウトサービス iroots調べによると、25年春卒業予定の学部生、大学院生の17.1%が、9月中旬時点ですでに採用選考段階、もしくは内定済みだという。(25卒学生640人に聞いた「25卒 早期選考/インターン」の実態調査 エン・ジャパン株式会社調べ https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000733.000000725.html)。
相談の現場でも、理系の院生、学部生を中心に、選考対策へのアドバイスのニーズが高まっている。以前から選考時期が早い建設系は、規模を問わず、早期選考に進んでいるところが多い。

●「就活」に向き合いたい
「今度が最終なんですよ」
11月になるとそんな声も増えてきた。
「スーパー早期枠なんで」
いい学生は、是が非でも確保したいという採用側の必死の思いが伝わってくる。
「内定が出たら、どうするの?」と聞くと、学生たちは眉をひそめる。
学生が共通してみせるのは、「1、2週間のインターンシップに参加し、社員と一緒に毎日、作業をした。人事や他部署の方と懇談する機会もあり、その企業のことは、かなり深く理解している。入社しても、自分らしく働けるそうだなと思う。
しかし、今、決めるのは時期尚早以外のなにものでもない」
という反応だ。
ある院生は、「僕的には、就活が始まったという実感がないので、終わらせるなんて選択はありません」と言った。
人生で大きな選択をするのだから、まずはしっかり就活に向き合わせてほしい、というのが、早期選考途上の25卒の本音だ。早く内定を出しても、歩留まりは読めない。

●下級生の焦りも誘引か
部活やサークルなどでこうした先輩の動きをみて、不安を感じる2年生も出てきた。
「1年後には、もう選考を受けているかもしれない」
「いやいや、その前にインターンシップ選考に通らないと!」
そうした焦りからか、「ぶっちゃけ、何をすれば採用側に評価されますか?」と真剣に答えを求める質問が、去年より増えた印象を持つ。つい最近では、「ベンチプレスは何キロ上げたら、履歴書に書けますか?」という質問まで飛び出した。
キャリア教育科目を担当するこちらとしては、「早く無事に内定」ではなく、「自分らしいいい選択ができた」と前向きに働ける職場との出会いを重視してほしい。それに学生がイメージするような正解など、書類にも面接にも、あるはずがない。

●華麗な成果を語りたい
「TOEICでの高得点、アルバイトやサークル、ゼミでのリーダー、学業では好成績で給付型の奨学金を獲得。そんな成果を披露できれば、就職はうまくいく。そう思っている人が多いかもしれないけれど、そんなことはない。むしろ、落とされることもあるよ」と話した。
さらに、「たとえば『花』がないような地道な経験でも、目標、具体的な取り組み、そこで見つけた課題と対応、最終成果を伝えられれば、高く評価される」と説明した。
それでも納得できない2年生がいる。どうして?と聞いたら、高校の推薦や大学のAO入試で、華々しいアピールで受かってきたからだという。
今は大学生の半数がAOや推薦で入学する。選考に向けた書類、面接対策を、その時の経験の延長で考える学生が多いようだ。

●学生までは「入力」、仕事は「出力」
そこで、こんなふうに説明した。
学生は、知識や経験を吸収して成長する。つまり、しっかりインプットして自身の向上や前進につなげることを、期待されている。自分のためだから、原則、学費も学生になる人が負担する。
でも社会人は違う。自分以外の誰かや何かのために貢献できなければ、価値はないし、そこを期待しているから、賃金を支払う。
つまり、「出力する人を求めていますが、あなたはそれができますか?」という問いに答えるのが、選考であり、就職。その視点の違いを踏まえてアピールしていこう。
すると驚くほど、理解が進んだ。
「なるほど! 頑張ってTOEIC 800点取りました、ではなく、何のために取ったのか。取るときに経験した努力や工夫を、今後、誰かのために使えるのか。そういう説明が必要なんですね!」
それから、自分は誰のために出力できるのか、したいのかをよく考えた方がいいですね」

「うーん。どうも学生はキラキラしたエピソードを披露したがるなぁ」と感じたら、「働くとは、誰か、もしくは、何かのための出力作業。地味でいいので、出力者目線での説明をお願いします」と投げかけてみては、いかがだろうか。