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労働あ・ら・かると

面接当日は商談のつもりで取り組もう

社会保険労務士 川越雄一

採用面接は商談と同じようなところがあると思われませんか。それぞれ対象とするものは違っても、お互いの条件を出し合って合意に至るところは同じだからです。商談を大まかにいえば、序盤は「挨拶・名刺交換」、中盤は「商品・サービス提案」、そして終盤は「クロージング」という流れです。面接当日も、この流れで取り組むとポイントを外すことなくうまく運びます。

 

1.面接序盤は

 

面接序盤は商談同様、お互いの人間関係づくりに重点をおきます。面接においての第一印象は3秒で決まるといわれているように、ここでの成否がその後の面接に大きく影響を及ぼします。
●商談でいえば「挨拶・名刺交換・世間話」
商談当日は、いきなり商売についての話に入るのではなく、まずは挨拶・名刺交換の後、軽い世間話から始めます。落語でいうところの“まくら”ですが、これでその場の雰囲気を和らげます。雰囲気が和らぐと、その後の会社紹介や商品・サービス紹介が自然なカタチで受け入れてもらいやすくなります。
●面接でいえば「来所のお礼・自己紹介・軽い質問」
面接を受けに来る人は少なからず緊張しています。また、数多い求人企業の中から選んで面接に足を運んでくれたわけですから、まずは「面接にお越しいただきありがとうございます」とお礼を述べ、こちらから自己紹介します。そして、商談同様、「会社の場所は分かりましたか」などと最初は軽い話でその場を和ませます。
●来社後3秒間が勝負
面接において応募者の第一印象は、会場へ入室後3秒間で決まるといわれています。もちろん、応募者から見た会社の印象も同じです。ですから、面接序盤の入口ともいえる受付の方の存在は重要です。社内は小奇麗にしておくことはもちろん、「いらっしゃいませ、面接に来られた□□さんですね」と、優しい笑顔で迎えるなど、来社後3秒間に注力します。

 

2.面接中盤は

 

面接中盤は商談同様、応募者の労務(労働時間)をどういう条件で売買するかという核心部分になります。対等な立場とはいかないまでも、お互いの言い分をすり合わせて合意点を見出します。

●商談でいえば「商品・サービス提案」
提案資料を基に、自社の商品・サービスが、顧客にとってどれだけ有益かを提案します。また、顧客のニーズなどもヒアリングしながら提案内容の変更もあるでしょう。さらには、商品を持ち込んで実際に使用してもらったり、サービスを体感してもらうこともあります。そのようなことを通じて顧客の共感を得ます。
●面接でいえば「業務内容・労働条件のやり取り」
面接の場合は、求人票を基に業務内容や労働条件の説明をします。会社がしゃべり過ぎることなく、応募者の質問や希望をキチンと聴くことです。もちろん、応募者の希望を全部受け入れることはできませんから、面接中のやり取りで妥協点を見出します。場合によっては、職場体験で数日間実際の職場で働いてもらうことも考えられます。
●お互いの希望を出し合うには最適
商談同様、どこの会社に就職するか、誰を採用するかというのは応募者・会社それぞれの自由です。だからこそ、雇用関係に入る前にお互いの希望は出し合っておきます。この段階は雇用関係もなく、お互いに就職という目的に向かって前向きな段階ですから希望を出し合うには最適です。逆に、この段階を逃すと、なかなか話を切り出しにくくなります。

 

3.面接終盤は

 

面接終盤は商談同様、契約を結ぶ段階、いわゆるクロージングとなります。ここまでの過程で積み上げたものが結実します。重要なのは、面接(商談)終了後のフォローです。これが採用辞退を防ぐ肝です。

●商談でいえば「クロージング」

商談では、最終的な契約段階であり、これで一段落ということになります。ここに至るまでには苦労も多く、「やったー!」と喜びもひとしおですが、ここで事を急ぐとキャンセルの憂き目にあってしまいます。ですから、ここは念には念を入れ、商談後のフォローを怠らず、顧客が契約したことに納得感を持つことが必要なのです。
●面接でいえば「労働条件の確定」
面接の最終目的は労働条件を確定させて雇用契約を結ぶことです。特に、面接でのやり取りを通じ、求人票で明示した労働条件と違う内容で合意に至った場合は、変更理由を明示し納得させることが必要です。「給料は悪いようにはしないから」で面接を終え、核心部分を先送りするのは、お互いの食い違いを生みトラブルが起きるのは必定です。
●辞退率を下げるお礼ハガキ
商談では、終了後にお礼メールを送ったりしますが面接にもこれが有効です。面接が終了したら即日、最終面接者が手書きのお礼ハガキを差し出します。面接で良い印象を持ってもらっていたら、それをより強固なものにするためです。「どうしようかな」という入社意向を、「どうせなら入社したい」に変えるひと押しです。

せっかく就職したいと思って面接に来てくれた人をその気にさせて、採用を成功させるには商談のポイントが大いに役立ちます。採用難の今、面接当日は商談のつもりで取り組むことが必要なのです。