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従業員の病欠対応は3つの初動を意識しよう

社会保険労務士 川越雄一

たとえ健康な従業員も生身の人間ですから、ときには病気やケガで会社を休むこともあります。いわゆる病欠ですが、このようなときに会社がやるべきことをやらなかったり、やるべきでないことをやっていると、従業員から見切られるばかりか、会社への不満が噴き出し、ドロドロとした関係になりやすいものです。それを防ぐのが、休み始めに会社が行うべき3つの初動です。

1.お見舞いをする

まず行うべきはお見舞いですが、重要なのは担当者任せではなく、原則としてトップが自ら行うことです。弱っているときにかけられる情けほどグッとくるものはありません。
●トップ自ら見舞う
労務においては、トップが行うべきことと担当者レベルでも良いことがありますが、お見舞いは前者です。もちろん、今はまだコロナの関係もあり面会も制限されていますが、そのような場合は、ひと言でも良いので手書きのメッセージでお見舞いを伝えます。要はトップの思いを休んでいる従業員へ伝えることが重要なのです。
●弱っているときこそ情けが必要
病気などで心身が弱ると、日頃は何でもないことでも不安になったりするものです。だからこそ、親身に寄り添う情けが必要なのです。仮に、慶弔規程で入院しないとお見舞いの対象でない場合は、トップのポケットマネーでも良いと思いますし、メンタル系疾患が多い昨今、規程の見直しも必要かもしれません。
●ドロドロになりやすい病欠
特にメンタル系疾患の場合、最初にボタンの掛け違いがあると、その後は何をやっても裏目に出てドロドロになることも少なくありません。その原因の一つは、会社の初動、つまりお見舞いがされていなかったり、されていても担当者任せで形式的だったり、心のケア不足が考えられます。そのような状況なのに、理屈のみで冷たい対応をするからドロドロしやすいのです。

2.休みの区分けを明確にする

病欠とひと口に言っても、休みには大きく3つの種類があります。有給休暇、欠勤、休職ですが、この区分けを明確にしておくことが重要です。
●有給休暇、欠勤、休職の段階を意識する
病気で休もうとする場合、通常は有給休暇を使います。有給休暇がなくなったら欠勤となり、欠勤が一定期間過ぎたら休職になるのが一般的です。そして、会社の決めた休職期間が満了しても復職できない場合は退職ということになります。ですから、休み始めたときに、この流れを会社と従業員双方が理解しておくことは重要です。
●休みに応じた対応をする
3つの休みそれぞれに応じた対応をします。有給休暇は、そもそも取得する理由は不問ですから病欠であろうが基本的には関係ありません。仮に病気で休む場合であっても診断書の提出を求めるのはNGです。欠勤と休職の場合は何日以上で診断書の提出を求めるのか、それぞれ休める期間などは就業規則の定めに従います。
●区分けが曖昧だと不信感を生む
例えば、有給休暇で休んでいるにも関わらず、欠勤や休職しているような対応をすると不信感を生み、やがて不満となります。確かに、休んでいるわけですから、会社としては同じようなことなのですが、3つの区分けが曖昧だと「病気のときのために有給休暇を残して
いたのに……」などとなりかねません。

3.会社としてルールに則った対応をする

病欠に限ったことではないのですが、労務に関する手続きは、中途半端な感情に左右されることなくルールに則った対応が重要です。
●対応はルールに従う
ルールというのは就業規則です。有給休暇は法律ですから当然として、欠勤と休職は期間やその間の処遇などルールに従います。その大前提としてルールである就業規則が日頃から従業員に周知されていることです。そうではないのに、病欠時にいきなり「就業規則に基づき……」と言ったところで「それ何ですか?」と開き直られるだけです。
●ルールに則ってキチンと手続きを踏む
有給休暇を使い終えたあとのことを節目ごとに取り決めて書面にしておきます。
・いつから欠勤になるのか
・いつからいつまで休職になるのか
・復職の判断はいつするのか
・復職の判断基準は何なのか
・欠勤や休職中の賃金や社会保険料はどうするのか
以上のようなことが決まれば、あとはそれに則り、粛々(しゅくしゅく)と、事を進めていきます。
●病気を治療するのは医療機関
最近は、特にメンタル系疾患についてあれこれ対応策が出回っています。なかには、たまたま成功した対応策を、さも王道のように言う人もいます。しかし、ここで注意したいのは、「病気を治療するのは医療機関であり、会社ではない」ということです。素人の中途半端な対応は、かえって事態を深刻化させることも少なくありません。

従業員が病欠、特にメンタル系疾患だと何をどうしたら良いのか悩むところです。この場合、基本的には、お見舞いをする、休みの区分けを明確にする、そして.会社のルールに則った対応をする、という3つの初動を確実に実践すればそう大きな問題にはならないはずです。