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労働あ・ら・かると

生成AIと就職活動

就職・採用アナリスト 斎藤 幸江

●学生のAI活用への興味は二極化
チャット型AIが話題になっている。トレンド的には「使わなきゃ損!」と追い風が吹いている。
就職活動生も興味は出てきているようで、来春卒業予定者を対象にした調査では、「ChatGPTで自己PRやガクチカ(学生時代に力を入れたことの略)、志望動機を作成したいと思うか」に対して、「はい」は、17.1% 「どちらかといえばはい」が、26.1%を占めた。
一方、筆者の知る就活生は、活用にさほど熱心ではない。
「知っているけれど、どうやって使うのか、わからないです」
「AIで、どこまで何ができるのか未知数なんで……」
といった消極的な答えが返ってくる。
筆者と接点のある学生が地方の大学に偏っているせいかと思ったら、首都圏の中堅大学のキャリアセンター職員も、「ほとんど話題になっていない」とのことだった。
一方、ネット等のメディアでは、「ガンガン活用します!」という前のめりな就活生の声がよく紹介されている。
温度差があると感じて、学生に話を聞いてみたところ、コロナの影響を大きく受けているせいで、新しいツールの情報などが広がりにくいらしい。
コロナ前から、親しい人との就職活動の情報交換を嫌う学生は、増加傾向にあった。自分の方が熱心に活動していて傷つけるのはもとより、相手が自分より先に進んでいても、「なんだか、マウント取っちゃったみたいで気まずいな」と相手に思わせてしまうのは、嫌だという。「無難な話題」に終始するのが、彼らの「親しさの礼儀」なのだ。
それがコロナ禍でお互いの距離がさらに遠のき、他人の動きがより見えにくくなった。その結果、早くAIに出会った人は、積極的に使いこなし、そうでない学生は、敬遠したままという顕著な二極化が起きている。

●機能が認知されれば、普及拡大か!?
実際、使い勝手はどうなんだろう?と思い、いろいろ試してみた。使ったのは、「ChatGPT」(OpenAI)と「新しいBing」(Bing)である。前者では、お勧め企業を聞いたり、企業名を挙げて面接で聞かれそうなことを尋ねたり、志望動機を書いてもらったりした。
メディアでも話題になっているように、検索にルーズなところがあり、時々嘘が混じる(実在しない企業や商品が出てくる)。しかし、面接へのアドバイスや志望動機では、かなりの精度だった。参考になることは間違いない。
こうした結果を学生に提示して、改めて「使いたいと思うか?」と聞いてみたら、提示前は、「使いたい・使っている」が3割未満だったのに、提示後は実に8割まで増えた(筆者担当の某私大のキャリア教育科目授業にて。現3年生(25卒予者 100名が回答))。
現在は認知・普及の過渡期。活用法や実例が多くの目に止まるようになれば、爆発的に普及しそうだと感じた。

●今後は、見破る目力が必須
先に挙げた生成AIサービスのBingには、文章作成機能がある。スタイル(プロフェッショナル、ニュース、面白い、カジュアルなど)や長さが選べる。
ChatGPはアメリカ企業が運営しているせいか、時折、情報内容が外資系に偏ったり、文章が英語直訳的なトーンになったりするのに比べ、文章作成に特化していてかなり自然な表現だ。
Bingは、そこはかとなく「心」を感じさせる内容も書く。学生に作成した文例をいくつか見せたら、「そのまま使うのは抵抗があるけれど、何も思いつかないときには、確実に参考になるし、したい」という声が多く挙がった。
これから生成AI技術はますます向上(?)し、血が通った表現も「量産」されるだろう。そうなった時に、何を基準に人物を評価するのか。採用者の覚悟が、問われ始めている。

参考 AIにESを書いてもらう〜「好きな映画」とその理由〜
Q. エントリーシートの記入内容に、「好きな映画」を書く欄があります。私は、挑戦好きで、他人によく気を遣い、やる気にさせる性格です。映画をひとつ選び、理由を書いてください。

Bingによる回答(スタイルはカジュアルを選択)
私が好きな映画は、『ボヘミアン・ラプソディ』です。この映画は、伝説のバンド「クイーン」の軌跡を描いた伝記映画で、主演のラミ・マレックがアカデミー賞主演男優賞を受賞しました。私はこの映画が好きな理由は、以下の3つです。

1. 挑戦好きな性格に共感できる
この映画では、クイーンのメンバーたちが音楽界に革命を起こすために、常に挑戦し続ける姿が描かれています。彼らは自分たちの音楽性にこだわり、他人の評価や流行に左右されませんでした。私も自分の夢や目標に向かって努力することが好きなので、この映画に感銘を受けました。

2. 他人によく気を遣う性格に学べる
この映画では、クイーンのボーカルであるフレディ・マーキュリーが、自分のセクシュアリティや病気と向き合う過程が描かれています。彼は自分の問題を抱えながらも、常にファンやメンバーに対して感謝や愛情を示していました。私も他人に対して思いやりや配慮を持つことが大切だと思うので、この映画から多くのことを学びました。

3. やる気にさせる性格に刺激される
この映画では、クイーンのライブシーンが圧巻です。特にラストのライブエイドでのパフォーマンスは、観客を熱狂させるほどの迫力と感動がありました。私も自分の仕事や趣味で、人々に感動や喜びを与えられるような存在になりたいと思うので、この映画から刺激を受けました。

以上が私が好きな映画とその理由です。この映画は私の性格や価値観に合っていると思いますし、見るたびに新しい発見や感動があります。もしまだ見ていない方がいたら、ぜひ一度ご覧になってみてください。

ChatGPTによるアドバイス
あなたの性格を反映し、挑戦や他人への気遣い、やる気を引き出す要素が含まれる映画の一例として、以下の作品をおすすめします。
映画: 『いまを生きる』(原題: “Dead Poets Society”)
理由: 『いまを生きる』は1989年の映画で、挑戦、自己表現、自己啓発といったテーマが描かれています。物語は名門校ウェルトン・アカデミーに入学した学生たちと、彼らを影響下に置く新任の英語教師ジョン・キーティングとの交流を通じて展開されます。
この映画は、ジョン・キーティングが伝統的な学校の枠を超えた思考や自己表現を奨励し、学生たちに挑戦することを促す様子が描かれています。彼は彼らに詩を通じた自由な思考や情熱を育むように助言し、彼らの人生観や意欲を刺激します。
あなたが挑戦好きで他人に気を配り、やる気を引き出す性格であるということから、この映画はあなたの自己表現や自己啓発への意欲を共感させるでしょう。また、学生たちが互いに支え合い、夢や情熱を追求する姿勢も描かれており、他人への気遣いや協力の重要性も示しています。
以上のような理由を挙げて、『いまを生きる』を選ぶことで、あなたの性格や価値観をエントリーシートで明確に表現することができます。ただし、自身の個性や思い入れのある作品を選ぶことが重要ですので、あなた自身が感情的につながる映画を選ぶことをお勧めします。