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休憩時間で新入社員と“波長”を合わせよう

社会保険労務士 川越雄一

今月から新入社員を迎えた職場も多く、ちょうど今頃は研修の真っ最中かもしれません。新卒・中途採用にかかわらず、今まで見ず知らずの人たちと同じ職場で働くわけですから、仕事を覚えるというより、まずは職場での“波長”を合わせることが重要となります。そこで活用したいのが休憩時間です。

1.職場の”波長“は人間関係のキホン

人間関係において“波長”というのは「互いの気持ちや意思などの通じ具合」というような意味です。継続的かつ一日の大半を過ごす職場では、これが合うことはとても重要です。
●職場の人間関係は“運”のようなもの
働きやすい職場にはいくつかの要素があります。その一つである人間関係については、労働条件や仕事の内容と違ってあらかじめ予測することが困難であり、ある意味“運”のようなところがあります。今まで見ず知らずの人同士ですから、いきなり「互いの気持ちや意思などを通じ合う」というのは少々無理な話です。
●”波長“が合うと人間関係が良くなる
職場の人間関係は波長次第だともいえます。波長が合うというのは、ものの考え方や感じ方が似ている人のことです。一般的に「気が合う」とか「うまが合う」などともいいます。ですから、波長が合うと当然ながら人間関係は良くなります。そうなると、仕事面においても生産性向上、事故防止などに大きな効果をもたらします。
●仕事だけでは合いにくい”波長“
職場の波長は人間関係ばかりか、仕事面でも重要ですが仕事だけでは合いにくいものです。例えば、会社の会議や研修会において、休憩時間がやたらと盛り上がったり、そのような場で出席者同士の人間関係が深まることはよくあることです。終了後に懇親会でもあると、その関係はさらに深まります。

2.“波長”は休憩時間に合わせる

今でも建設業などの現場では、お昼以外に10時や15時に小休憩をとっている場合があります。現場監督は、その時間で作業員同士の波長を合わせると聞いたことがあります。
●休憩時間とは
小難しく言えば「労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」とされています。簡単に言えば、働く人が働いている途中で完全に仕事から離れることができる時間、ということになります。労働基準法に定める休憩の長さは、労働時間6時間超えで45分以上、8時間超えで60分以上となっています。
●休憩時間の三原則
労働基準法では休憩に関する基本的なルールとして、「途中付与の原則」、「一斉付与の原則」、「自由利用の原則」という三原則があります。ここで、波長との関係で注目したいのは「一斉付与の原則」です。もちろん業種により一斉付与しなくて良い場合もありますが、原則は全員一斉に休憩させるということです。
●本質的な生産性は“波長”で決まる
職場の仕事は基本的にチームワークですが、従業員同士の波長が合えばこそ仕事はスムーズに運び本質的な生産性は高まります。たとえ立派な作業マニュアルがあったとしても、従業員同士の気持ちがバラバラでは生産性など上がりようがありません。ですから、特に新入社員とは早めに波長を合わせることが重要です。

3.休憩時間に“波長”を合わせる3つの工夫

職場の波長を合わせるのに休憩時間は有効ですが、そもそも従業員の自由利用が原則ですから何かを強制するわけにはいきません。そこで一斉休憩を前提にした場合に考えられるのが次の3つです。
●同時に始めて同時に終了する
休憩は全員同時に始め同時に終了させます。仕事のONとOFFの切り替えを、みんな一緒に行うから波長が合うのです。「仕事の段取りもあるし、そんな無茶な」と思われるかもしれませんが、ココがダラダラしていると本来の仕事もダラダラとなります。休憩時間と仕事時間は隣り合わせに配置されているからです。
●同じ環境で休憩する
休憩時間は自由利用が原則ですからどこで休憩をとるかは自由です。ですからできるだけ同じ場所・環境で休憩しやすくします。具体的には休憩室の整備、お茶の設置などです。女性の多い職場であれば、自由に食べられるお菓子などを置いておくのも良いでしょう。同じ場所で同じものを食べると波長は合いやすくなります。
●雑談を奨励する
雑談は直接仕事には関係ありませんが、無駄ではありませんから奨励したいくらいです。従業員同士が仕事以外の会話をすることにより波長が合いやすくなります。何気ない雑談の中にも、仕事を行ううえでの情報がいっぱい含まれているからです。仕事上気をつける箇所、業務改善のヒントなどですが、仕事中よりも役に立つ情報が飛び交うこともあります。

新入社員には一日も早く戦力になってもらおうと、どこの会社も研修などに力を入れられていると思います。もちろんそれは重要ですが、その前に休憩時間を活用した従業員同士の波長を合わせる工夫もあったら良いのではないでしょうか。