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2024卒の動向を読む

就職・採用アナリスト 斎藤 幸江

●院生と学部生で動きは、二極化
技術系採用を中心に、2024年卒業予定者の就職活動が、進んでいる。しかし、学生がその波に乗っているとは言い難い状況だ。
個人的な実感では、動きが早いのは、技術系大学院生。9〜10月に早くも結果を手にしそうという就活生もいた。
一方で、動きが鈍いのが3年生。夏のインターンシップへの参加意欲も、学部生と院生では隔たりがあった。前者は、1 dayなどの短期の仕事体験・見学型のプログラムへの参加が多く、 長期志向で職場や仕事を体験し、かつ採用直結を期待する後者との違いが見られた。
最近は、大学院進学を予定していても、学部時代にインターンシップへの参加や、就職活動を経験しておく理系学生が増えている。
「修士課程での研究時間を確保したい。そのためには、就職活動を軽く経験しておくと、スケジュールを立てやすい。
また、学部時代から方向性が決まっていれば、研究も就活も効率的に進められる」(24卒修士1年)という。
インターンを通して、社員から「研究テーマを選ぶなら、○○を勧めるよ」、「プログラミング言語なら、◆◆、実験や測定機器やアプリなら、□□のスキルや経験を身につけておくと、職場で役に立つ」などのアドバイスを得て、研究室やテーマ選びに活かす学生もいる。
学部3年生から今に至るまで、計画的に学んだり進路を選択したりしてきた院生は、早期選考の歓迎ムードが強い。

●「二択」で就活は後回し
3年生の出足がさほど伸びないのはなぜだろう。
多くの学生が、「就活か学生生活か、で後者を優先した」という。
今の3年生は、1、2年、長いところでは、今年度の前期までオンラインで授業を行なっていた。現場実習のある農学部やフィールド調査や地域連携などの活動がメインの社会科学系などでは、「期待していた学びが、まったくできなかった」と嘆く学生も少なくない。
「やっと同級生の顔を直接見られて、部活動やサークルも対面で活動できるようになった。リアルな学生生活が、とうとう始まった!というのが、今年度。
これからは、自由になんでもできる!と実感できた時、それなら就活も、という気持ちにはなれなかった。充実した学生生活も経験しないで、インターン、がんばろう!は、ちょっと無理だった」(2024卒3年生)。
院生と違い、進路の方向性も決まっていない学生が多い3年生。学生生活で失ったチャンスを挽回できる時に、卒業後に備えて動くのは、ハードルが高い。
ただ、大学祭が一つの節目と考えている3年生も、かなりいる。11月を機に、就職活動へ本腰を入れ始める学部生に期待できそうだ。
●入口のハードルを下げる
彼らにアプローチするなら、自己理解や進路選択に役立つもの、業種を問わず、仕事の視点、仕組みなどを体験的に学べる内容、学生同士の就職観の交換の機会など、方向性を限定せずに参加できる機会がよい。
こうした門戸を広げた企画の成功の鍵は、フィードバックだ。折に触れて、本人の特性の指摘や、個々人に合わせた就職活動の留意点を伝えるなどの一工夫が、学生の興味や印象を変える。「自分を見てくれた」、「ここならではの、役立つサポートを得られた」といった実感が入社への興味につながる。
「限られた学生生活なので、できるだけ多くの挑戦をしようと、意欲的に活動した。だから、面接や書類でアピールできることは、複数、ある」(2024卒学部生)
そう言い切る学生もいる。24卒のガクチカは、前年度の学生より、前向きな内容が増えそうだ。そうした経験を引き出し、評価する機会としても、早期短期間イベントの活用を検討したい。「いい学生生活だった」という個人の実感を採用側の視点で再評価してもらえることは、自己肯定そして企業への興味や関心の醸成になる。

●外国人留学生の採用を
24卒に関しては、外国人留学生の採用にも注目したい。2020年度から今年度前半にかけて、日本への留学が停止した。日本語学校に1〜2年間通い、その後、四年制大学へという留学ルートを考えると、26卒あたりから、在日外国人新卒採用の母集団の大規模な縮小が予想される。
24卒の留学生も日本人学生同様、オンラインでの学生生活が続いている。日本人以上に情報が不足し、就職活動の基本的なノウハウを知らない、就職できる自信がないなどの不安を抱える学生・院生も多い。
対面でコミュニケーションが取れなかったせいで、リアルな就活を知る機会がなかった、同国出身の先輩と会えなかったという声も聞かれる。
彼らに対しては、母国出身の社員と就職活動や仕事を語れる機会を積極的に提供するのは、どうだろうか。先輩社員も、オンラインの業務等で、なかなか自分の成長を確認しづらい世代である。後輩の役に立つことで、自身のスキルや経験を自覚し、仕事へのモチベーションを上げる効果もある。また、出身者という絆ができれば、入社後の退職抑止にもなる。

日本人、外国人を問わず、24卒の今後の採用に関しては、優しい目線で丁寧に進めてはいかがだろうか。