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コロナ禍、3度目の春を迎えて

就職・採用アナリスト 斎藤 幸江先生

 

  • 「リアル」ってどうだった?

コロナの収束が読めない中、23卒の就職・採用活動が、本格的に始動している。飲食店や塾講師、販売などの対面型アルバイトは、通常シフトに戻りつつある。しかし、大学の授業は、まだまだハイブリッドが主流だ。

学内実施の企業セミナーや対策講座は3密を回避するために、ほとんどがオンランで実施されている。

そのため、彼らのリアルでの経験不足を感じさせる相談も多い。

「今までインターンシップ、そして2回の面接と、ずっとオンラインで進んできたのですが、最終だけは対面で、といわれています。うわー、本当に行くの?と期待と不安で揺れる中、準備していたら、何もわかっていないことに気づきました。

えっとー、ドアをノックしてどうやって入って、席に着くんでしたっけ?
あ、そうだ! 会場についたら、初めまして、で、あとは大学名と氏名で大丈夫ですか?」

大学で教えてくれなかったの?と聞いたら、オンラインセミナーだったので、自分自身、やってみたわけではないし、不明な点が多いという。動画を検索して確かめたけれど、「なんか、やれる気がしない」と不安がっていた。

同様の質問は、グループディスカッションやグループ面接でもある。オンラインでの経験はあるものの、リアルではなく、ゼミや授業でも感染防止の観点からなのか、対面での長時間の熱い議論は避けられているようだ。

「他人が話している時って、どこを見ればいいんですか?」

特に自治体などの公共機関では、感染対策から、面接官と応募者、面接官あるいは応募者同士の距離を通常以上に空けている場合がほとんどだ。

「満遍なく参加者の顔を見ると、動作がかなり大きくなっちゃうんです」

そんな嘆きも聞かれた。

面接指導をしていても、オンラインでは見落としが多い。身体の揺れや、手や足の不自然な動きには気づかず、実際に会って「うわっ!」と驚くこともある。

そんなわけで、採用担当者のみなさん。「最近の大学生は、きちんとした態度も取れないのか」と嘆く前に、彼らの経験不足を考慮してください。

 

  • 動きの遅い学生が増加?

今年2月にいくつかの大学で、23卒予定者を対象にライブアンケートを実施した。そこで驚いたのが、昨年以上の活動内容や意識の格差である。

以前にも書いたが、最近の学生は友人同士で就職活動の情報を交換しない。さらに、キャンパスで22卒予定者の先輩に会う機会も激減しているし、就活イベントで周囲の学生の様子をつかむこともできない状況で、主体的に求めなければ情報は入らない。

その結果、2月時点で何もやっていない学生が昨年以上に増えた印象がある。

「インターンシップは行ったの?」

「いや、ワクチン接種と日程が被りそうだったし、オンラインだったら意味ないかな、って思ってやめました」

「それならその分、今から企業研究を頑張った方がいいよ。やっぱり参加者は、それだけ多くの情報を得ているから。早期選考が始まった人もいるしね。」

「早期じゃなくて、一般選考でも入れるんですよね? だから、企業研究は3月の情報解禁の後、説明会をいくつか見てから絞って、本当に行きたいところを効率よく研究したいです。それで大丈夫ですよね?」

「そのペースでは、間に合わないと思うよ。3月には応募書類の提出が集中する。だから、それまでにある程度、志望動機や入社後にやりたいことを整理したり、強みをそれらに関連づけたりした方がいい」

「あれ? 選考は6月1日からですよね?」

実際、こんな会話が増えている。

 

  • 広がる活動格差

一方で、インターンシップには2桁参加し、着実に早期選考ルートに乗り、複数の内定を手にしている学生もいる。さすがに第一志望の超大手企業からの内定はまだだが、「リクルーター制をとっているとの情報を早めに入手していたので、5人の卒業生に会い、エントリーシートをみてもらい、連絡待ちです」と胸を張る。

出遅れている同じ企業の志望学生に、「そんな話もあるから、先輩を探して早く会おう」と促したら、「リクルーターってなんですか?」。

説明したら、「えー、就活の実態ってそうなんだ。闇が深い」と嘆息。

対面型の説明会や就活イベントが徐々に増えそうではあるが、出足の鈍い学生が自らのポジションに気付くのには、もう少し時間がかかりそうだ。さらに、実態把握から選考ルートへの道筋も、スムーズには行きそうもない。

ウクライナ情勢など新たな要素が加わり不透明だが、今のところ、採用意欲は回復かといわれる23卒予定者。

スロースターターの急増が予想される中で採用予定数を確保するには、長期戦になりそうだ。