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雇用の入口と出口は記憶ではなく記録に残そう

社会保険労務士 川越雄一

 

雇用関係では入口(採用時)と出口(退職時)が重要です。もめ事の多くは入口と出口で起きているからです。人の記憶というのは、自分に都合の良いものが残りやすいため、記録として書いたものがないと、“言った、言わなかった”の水掛け論になりやすくなります。ですから、人の出入りが多い3月、4月は、特に就業規則、雇用契約書、退職願(届)などは記憶ではなく記録に残しておくことが重要なのです。

 

 

1.採用時に就業規則を説明する

 

就業規則には雇用関係における基本的なルールが規定されているわけですから、まずはそれを説明することが必要です。そして、説明を受けた証として就業規則確認書にサインをもらっておきます。

  • 従業員が理解してこその就業規則

就業規則というのは雇用関係におけるルールブックですから、従業員に説明し理解させておくことが最低限必要です。重要なものですから大切に扱うのは当然ですが、金庫にしまい込まれて誰も見ることのできない状態では意味がありません。法律上も従業員に周知されていることが求められています。

  • 「はぁー、そんな規定があるんですか?」

就業規則を引っ張り出すというのは、平常時ではなく問題発生時が多いのではないでしょうか。ですから、会社は「就業規則にこう書いてあるから、これに基づき…」と言ったところで、就業規則が周知されていなかったり、理解していない従業員からは「はぁー、そんな規定があるんですか?」と開き直られてしまいます。

  • 就業規則確認書にサインをもらっておく

採用時というのは、雇用関係も友好的な場合が多いので、就業規則の規定もスムーズに理解しやすいと思います。ですから、雇用契約書を取り交わす前に就業規則を説明し理解させるとともに、

その証として就業規則確認書にサインをもらっておきます。雇用契約書の中に「就業規則の説明を受けました」という文言を入れておいても良いと思います。

 

 

2.雇用契約書はもめる事を想定して取り交わす

 

そもそも、雇用契約書というのは、もめ事が起きた際の解決手順書のようなものです。ですから、もめ事になりそうなことを想定しキチンと記録として取り交わし残しておきます。

  • もめそうな事項を盛り込む

雇用契約書に盛り込むべき事項は法律で決められていますが、大体は雇用関係においてもめ事になりそうな事項です。①いつから雇用契約が始まったのか ②どのような場合に退職又は解雇になるのか、どのような手続きで行うのか ③労働時間は何時から何時までなのか ④賃金はいくらなのか ⑤賞与や退職金はあるのか、無いのか、などです。

  • “あなた任せ”になりやすい

労働時間は法律の枠がありますから、法律を守っていればそれ自体でもめ事になることは少ないはずです。しかし、賃金については求人票では○○円~○○円、面接時にもはっきりと提示しない会社もあります。まして、雇用契約書もなければ“あなた任せ”になりやすく、トラブルの火種となりかねません。

  • 仕事をさせる前に取り交わす

契約書なしに家を建てる人はいないのと同じで、雇用契約書は採用日当日、仕事をさせる前に取り交わすことが鉄則です。「会社は、あなたをこのような条件で雇用したい。もしこの条件で良いのならサインしてください」と説明します。このようなことを堂々と言われると会社への信頼は高まりますし、怪しい人は恐れおののいて自ら早々に撤退してくれます。

 

 

3.退職願(届)を必ずもらう

 

別れ際が難しいのは世の常ですが、雇用関係においても同じです。ですから、退職時には少なくとも退職願(届)において退職日と退職理由をキチンと確定させておきます。

  • ポイントは退職日と退職理由

退職願(届)の提出は法律上の義務ではありません。しかし、就業規則において退職日の1カ月前までに申し出るとされていることが多いのではないでしょうか。退職願(届)でポイントとなるのは退職日と退職理由です。最近はパソコンで書いたものが多いと思いますが、それでも名前くらいは自署が良いでしょう。

  • 都合の良い記憶がぶつかり合い

いつの間にか来なくなるという従業員は中小企業ではめずらしくありません。そして、しばらくして「会社から辞めさせられた。不当解雇だ!」などと言いがかりをつけてきます。自己都合と解雇では雲泥の差であり、退職願(届)という記録がないと、お互い自分に都合の良い記憶だけでぶつかり合いドロドロした関係になるのです。

  • 紙に書いてもらいすぐに承認する

退職願(届)は紙に書いてもらうことが重要です。用紙はチラシの裏紙でもかまいせん。もちろん、「一身上の都合と書いてね」というように退職理由を強制することはNGです。あくまで本人の意思に基づいて書いてもらいます。そして、退職願(届)を受け取ったら、直ちに人事権のある人が承認印を押しておきます。例えば、「○年○月○日 社長承認」というようにです。