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インターンシップで母集団をつかむ

就職・採用アナリスト 斎藤 幸江

 

7月中旬、首都圏の大学や全国の国立大学を中心に、学内でのワクチン接種が本格的にスタートしている。

しかし、23年卒予定者にとっては複雑なようで、「対面・訪問型のインターンもあるので、移動や実習のことを考えれば、打っておきたい」と歓迎ムードもあるものの、「学内のワクチンはモデルナ。ファイザー以上に副反応が強い。実際に、身内の一人が『1回目後に発熱がひどく、翌日は会社を休んだ』、と言っていた。

せっかく参加が決まったインターンが、2回目接種とかぶってしまう。今回はパスに気持ちが傾いている」との声も聞かれる。今夏のインターンは「副反応で直前辞退」というケースが、相次ぐかもしれない。

 

  • インターンシップ=就業体験の徹底へ

大学側からの数年来の要請を受けて、昨年3月、学校団体(日本私立大学団体連合会、一般社団法人国立大学協会等の大学団体及び、高専・短大の各団体)と就職情報サイト運営企業等が加盟する、公益社団法人全国求人情報協会の連名で、「共同声明学修経験時間の尊重に向けたインターンシップの取り組みについて」が発表された。

ここで宣言されたのが、以下の2点である。

1. 学生の学修経験時間を担保するため、インターンシップは学事日程に影響を与えないよう、原則「長期休暇」「土日祝」を中心に開催することを推進する。

2. 単なる企業説明会や会社見学会が大半を占めると指摘される「ワンデーインターンシップ」という表記を使用しない。

これにより、半日〜1日の情報発信・提供型のプログラムは、インターンシップ情報サイトには、掲載されていない。また、これらは平日も含めた秋〜冬に開催されていたこともあり、実施がより困難になっている。

23年卒業予定者のインターンシップは、夏休みに「体験型プログラム」が集中している。

 

  • オンラインとリアルが混在

コロナ禍の懸念が払拭できない中、体験型プログラムの提供方法はオンラインとリアルが混在している。早くから告知を始めた企業では、ニトリのように「全面的にオンライン」を打ち出しているところが多い。さらに、全国から参加者が集まる人気企業では、オンラインでの実施が主流のようで、新型コロナのリスク低減に加えて、参加しやすさで地域格差を下げるねらいのようだ。

就業体験型が主流になって、今年のインターンシップでは、門戸が狭くなっている。応募書類の記入項目が増え、面接を複数回実施という企業も出てきている。

さまざまな背景が考えられるが、オンラインでワーク型となると、参加者のモチベーションや興味を一定レベル以上に高められるかどうかが、対面以上に重要だ。オンライン2年目を迎え、その点で選考プロセスを重視する企業が増えたと考えられる。

 

  • 足跡を確認できる構成に

体験型プログラムで重要なのは、「楽しかった!」で終わらせず、手応えを残す内容にすることだ。そこで、このプログラムで何をつかんだのかを自覚させる仕組みを取り入れたい。

今年は、実習に求めるスキル、実習内容、ねらいを明記する企業が増えているが、スタートにあたって、それらの内容を確認し、個人の目標に落とし込む作業を、ぜひ学生に課してほしい。

大きく分類すると、「業務や仕事を取り巻く知識」、「自分自身に対する理解・知識」、「企業や職場に対する理解・気づき」、「興味・関心の醸成・変化」の4分類で進捗確認や振り返りができると、手応えにつながる。

たとえば、「業務や仕事を取り巻く知識」では、「○○業界の主力商品について」、「○○業界と他業界の関わりについて」など具体的な項目を立てて、

1.充分知っている

2.だいたい知っている

3.なんとなくわからない

などの5段階でセルフチェックさせる。同時に増えた知識や興味・気づきを具体的に書き込んでもらうようにし、実習前、実習後、あるいは実習中と2〜3回にわたって実施すれば、インターンシップでの成果が具体的に見えてくる。

充実した実習だったという実感が、企業に対する興味の喚起や適性を踏まえた志望動機の形成につながり、よりよい母集団を形成できる。

 

  • ライブアンケートの活用を

「参加してよかった」と学生に印象を残すには、ライブアンケートの実施も有効だ。今の学生は、個人的な興味を聞いたり、聞かれたりすることへの抵抗が強い。ある大学で、「他の学生の動向で知りたいことがあれば、匿名参加のライブアンケートで聞きます」と提案したら、「志望業界とか知りたいですけど、これって、深掘りしすぎですよね?」と返答があり、びっくりした。

いざ実施してみれば、全員が参加し、かつ、「なかなか聞けなかったことを聞いてもらえ、状況がわかって、とてもよかった!」と非常に好評だった。

今の時期であれば、「志望業界・職種」、「インターンシップの参加企業数」、「参加対象は、『幅広く』か、『絞って』なのか(or大学の専攻との関連性は? 知っている企業と知らない企業の割合など)」、「就活準備をどこまで進めているか?」などだ。

Quizizzなどといった、無料で使えるサービスもある。これを機に、アイスブレークや実習の感想のシェアなどに利用しては、いかがだろう。学生の心を掴む可能性は、間違いなく高い。