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労働あ・ら・かると

コロナ禍下就活一期生として社会人となるみなさんへ、就活真っ最中のみなさんへ。

一般社団法人 日本人材紹介事業協会 相談室長 岸 健二

 
 未曽有のコロナ禍下、学生生活を終えて来月4月に新社会人としての第一歩を踏み出すみなさん、とんでもない災害の中で就職活動をしながら、ときにはめげそうになったり、この世を恨みたくなったりしたこともあったかもしれません。しっかりとした職業観を持ち、第一志望の企業の内定を取り付けた方もいらっしゃるでしょうが、何社も内定寸前で「お祈りメール」を受信して途方にくれた方、自分が一体どのように生きたいかを見失いそうになった方もいらっしゃるでしょう。なんとか就職先が決まっても、不本意感がぬぐえない方もいらっしゃるかもしれません。記憶というものは過ぎてしまうと薄らぎがちですが、今の気持ちを何らかの形で記録することをお勧めいたします。

 このパンデミックがなかったとしても、私たちが住むこの国の「働き方」は大きな変化の始まりの中にあったことにも目を向けてください。今この文章を「4月に新入社員になるのが当たり前」のように書いているわけですが、それすら10年後20年後、みなさんが企業の中で中堅となったときには、あるいは起業して新入社員を迎える立場になった時には、様変わりしていると思った方が良さそうです。
 昨年入社した「在宅ワークでの新人研修一期生」の先輩から、困惑の中でどのように就職先企業に溶け込んでいったのかの話も、積極的に聞きましょう。一年先輩も、みなさんも、後から振り返れば大きな歴史の節目の中にいるわけですから、その情報共有はいくらしても足りないということはないと思います。
 また、みなさんの10年先輩、20年先輩の話を聞けば、日本の企業が様々な経済危機の中、現在よりはゆっくりだったとはいえ、どのように「業態変容」しながら成長してきたのか、生き延びてきたのか、先輩自身は無意識のうちに、あるいは意識して「行動変容」し、会社の変化に適応してきたのかを知ることができるでしょう。

 様々な変化を一層加速させているのが、このパンデミックです。嫌な響きに聞こえるかもしれませんが、みなさんは「COVIT-19 下の就職活動一期生」でもあるのですから、この貴重な経験をこれからも是非記録してみてください。応募レポートではないのですから、肩ひじ張って起承転結を意識して作成する必要はありません。今はスマホの簡単な日記ソフトもある時代ですから、日々あったこと(見聞きしたこと)と、感じたこと(思ったこと)の二つをそれぞれ区別して短くメモしておくことだけで、将来の振り返りにとても役立ちます。新入社員として困惑したこと、先輩の言葉で印象に残ったこと、なんでも構わないと思います。その日に見聞きしたことと感じたことは、明日になると薄れてしまうものですから、その日の内にメモしましょう。

 一方、今大学三年生で、間もなく四年生になろうとするみなさん、人によってはもう実質内定を取り付けた方もいらっしゃるでしょうが、デジタル会社説明会に参加したり、オンライン先輩訪問真っ盛りの方も多いでしょう。「COVIT-19就活 二期生」の皆さんも、時間をかけずに簡単に「今日行ったことと思ったこと」をメモしてみてください。

 「多様な働き方」への変化が始まっている中でも、「企業と自分」という関係を見失わずに、冷静に企業の採用活動を観察すれば、新卒採用は依然として「質」重視が続いていることが見て取れるでしょう。このコロナ禍は否応なく様々な変化の速度を促進していますが、「就活」「採用」のしくみそのものの本格的な改革には、いまだ至っていない点も多々あることに気づくでしょう。
 でも近い将来の大きな変化の芽も各所でふき出していますから、これを見落とさず、冷静で確かな自己分析と、自分なりの企業研究とに裏打ちされた就職活動を行って的を定めて活動してください。
 来年の入社後も自分と企業のめざす方向性、社会の動向を検証していく習慣を、この一年で身につけることができれば、先行きこれほど心強いことはありません。

 新社会人も、就職活動真っ最中のみなさんも、「コロナストレス」で見えにくくなっていることを見逃さないよう眼を据えて、これからを過ごしましょう。

(注:この記事は、岸健二個人の責任にて執筆したものであり、人材協を代表した意見でも、公式見解でもありません。)