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コロナ対応で見切られる会社・惚れ直される会社

社会保険労務士 川越 雄一

コロナ禍にあって、特に飲食店は感染拡大の温床のような言われ方もされており、感染拡大防止策にはひときわ注意が払われています。そして、その対応如何により客から見切られたり、惚れ直されたりすることも少なくありません。ここで、お店を会社、お客を従業員に置き換えてみれば、今どき労務のポイントが見えてきます。

1.コロナ対応で分かれる飲食店の評価
今や多くのお店では、入口での検温・手指消毒などが当たり前になっています。客としては少々面倒なところもありますが、慣れてくると、逆に何の対策も実施されていないようなお店には不安を感じます。
●入口での検温・手指消毒になぜか安心
1年前なら入口での検温・手指消毒など、テレビで見るパロディーでしたが今は常識です。また、客同士の間隔が空けられたり、換気も頻繁に行われたり、いわゆる「三密」が回避されていると、なぜか安心しますし信頼感を持ちます。さらに居酒屋などで閉店時間が早くなっていると、努力が分かるぶんなおさらです。
●大丈夫かなと不安なお店
逆に、今どき何も対策が実施されていないようなお店は不安になります。「いらっしゃませ!」などど、相変わらず店員さんがマニュアルどおりに大きな声を張り上げたり、カウンター越しの料理人がマスクすらしていないというのは論外ではないでしょうか。
このようなお店は、すべてにおいて大丈夫だろうかと不安は募るばかりです。
●対応によって客層が決まる
飲食店には集まりやすいお客の集団ができます。いわゆる客層といわれるものです。コロナ対応についても客層により反応が変わるというか、対応により客層が決まるのかもしれません。無頓着で何とも思わない客層と、それなりの対策がされていないと落ち着かない客層です。後者の客層であれば対策を愚直に実践していること自体を評価してくれます。

2.コロナ禍で加速する従業員の過剰反応
最近の従業員は衛生面などに敏感なのですが、コロナ禍においては従来以上に過剰反応する人が増えています。過剰反応とはいえ世間並みに対策は実施しておかないと、今どきの人からは不信感を持たれ見切られてしまいます。
●コロナ対策は分かりやすい
「三密の回避」「マスクの着用」「手指の消毒」「換気」など、飲食店に限らず今はどこの会社でもこの程度の対策は実施されています。実施・未実施が誰にでも分かりやすく、分かりやすいので話題になりやすいのです。そうなりますと、従業員は対策が実施されているかどうかで会社のすべてを評価しかねません。
●無頓着な会社は見切られやすい
確かに、国などが示しているコロナ対策にどれほどの効果があるかどうかは分かりません。しかし、毎日のようにニュースで流れるコロナ対策に無頓着というのはどうなのでしょうか。今どきの従業員は衛生面に敏感ですから、対策がいい加減だと「うちの会社って大丈夫なのか」と不安感や不信感を持ちやすいのです。
●何か起きると「○○すらしていなかった」
何か起きると世間の目は厳しいものです。コロナ感染は仕方ないこととしても、重要なのは対策をどこまで実施していたかです。そうしておかないと「あの会社、○○すらしていなかった」と世間は非難します。これはコロナ対策そのものというより会社経営全体に言えることです。ですから、世間並みの対策は必要ということです。

3.従業員に惚れ直させる3つのポイント
コロナ対応で飲食店間の差が出ていますが、労務においても同じです。特に、最近は時流やルールにも過剰反応する従業員も多いので、それに対応することが会社に惚れ直させるポイントです。
●時流に乗る
コロナ禍で鳴りを潜めていますが『働き方改革』も順次適用されています。有給休暇年間5日取得義務、時間外労働上限規制はすでに適用されていますし、同一労働同一賃金は中小企業でも今年4月から適用されます。詳しい内容まではともかく、言葉自体は世間一般に広まっています。時流という波が徐々に押し寄せているわけですが、これには乗っておく必要があります。
●法律や制度を守る工夫をする
新しい法律や制度ができると、コロナ対策と同じで従来なかった制約を受けることになります。その制約は中小企業にとってはかなりの負担になりますから、守るためにはそれなりの工夫が必要です。苦労しながらも、何とか法律を守ろうとする経営者の姿勢に従業員は安心しますし惚れ直します。
●ルールに則った対応をする
労務におけるルールといえば就業規則です。特に、労務トラブルが起きやすい病気休職や退職の場面においては、就業規則のルールに則って対応しておくことが重要です。そのような対応をしているぶんにはそう大きな問題にはなりません。従業員も事前にルールを知っていれば、それなりの心づもりを持つからです。

コロナ対応は労務管理上の好機かもしれません。なぜなら、そのような対策をキチンと行うことにより、コロナ感染防止はもちろんのこと、労務管理全体の信頼感を高め、会社を惚れ直してもらえるからです。結果として、コロナ後における会社間の格差はさらに拡大するのだと思います。