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労働あ・ら・かると

このようなときこそ“肌感覚”を大切にしよう

社会保険労務士 川越 雄一

 

コロナ禍にあり、小さな職場でもオンラインによる会議、メールやラインでのやり取りが一気に加速しています。その反動として、ちょっとした行き違いが大きなトラブルに発展することも少なくありません。直接顔を合わせないがゆえに、雰囲気や気持ちが伝わりにくいことも一因だと思います。ですから、このようなときこそ、お互いの気持ちを感じ取る肌感覚を大切にすることが必要なのかもしれません。

 

1.直接会わなくても、とりあえず「完了」

オンラインというのは、時と場所を選ばず、情報のやり取りが可能ですから、慣れてくると直接会ったり電話で話すよりも効率的で便利です。

  • リアルな接触は減るばかり

会議や打ち合わせはことごとくオンラインになっています。会場への行き帰りの時間も要らず、主催者側としては会場の確保も不要であり理屈から言えば結構なことかもしれません。また、テレワーク(在宅勤務など)を実施している場合は、日常業務で同僚と直接接触することも少なく、人間関係上は気楽な面もあります。

  • 情報は間違いなく伝わる

オンライン会議の場合、情報は間違いなく伝わります。ですから、単に情報伝達が目的であるなら便利なしくみです。リアル会議との大きな違いは、会議前や終了後、休憩時間の雑談がないということです。会議によっては、この雑談が自由なコミュニケーションの場となり物事が円滑に進む場合もあります。

  • 記録的には「完了」

メールやラインの場合は、送信時刻、既読時刻などが秒単位で記録されます。相手がどう理解したか、どの程度納得しているかなどは関係なく、「伝えた」「読んだ」ということが事実として残ります。ですから、記録には「完了」したことになります。しかし、相手がこちらの話をどのような顔をして聞いていたのかなど知る由もないのです。

 

2.無駄が減少しトラブルが増加

労使トラブルは今に始まった話ではありませんが、ここにきてより些細(ささい)なことでギクシャクしやすくなっています。その原因の一つとして、労使関係における無駄の減少がストレスを増加させているとも考えられます。

  • 伝わりにくい気持ち

オンライン会議、メールやラインでのやり取りも情報は正確に伝わるのですが、気持ちというか感情はなかなか伝わりにくいものです。伝わりにくいので、いわゆるボタンの掛け違いが生じるわけですが、直接会っていないので、それを感じにくいのです。ですから、最初は小さな掛け違いが徐々に大きな溝となってしまいます。

  • 文字が相手を傷つけることもある

メールやラインで用件を伝えようとした場合、文才のある人は別にして、どうしても形式的な表現となります。それどころか、時として相手を攻撃するような表現になることだってあるでしょう。特に地方の場合、方言で話せば少々厳しい表現でも受け入れやすいのですが、メールやラインは基本的には標準語で書きますから、相手に「きつい」と感じさせることもあります。

  • 無駄の減少がストレスに

人間関係における無駄は潤滑油のようなものかもしれません。効率化視点からは何の意味もない雑談なども、仕事上の人間関係では重要になります。リアルでのやり取りがないのは効率的ではあるのですが、そのぶん余裕がないため、かえってストレスを強めてしまいます。ストレスが強まるので、ちょっとしたことで関係がギクシャクしやすいのです。

 

3.肌感覚を大切にする3つの工夫

コロナが落ち着いたとしても、オンラインでのやり取りは増えることはあっても減ることはないでしょう。ですから、オンラインでも相手の気持ちを感じ取ることができるよう、肌感覚を大切にする工夫が必要になります。

  • 遊び(心)を持たせる

メールやラインは画面上に無機質な活字が並びます。ここで無機質というのは、喜怒哀楽がなく、感情をあらわさないというような意味です。 ですから、例えばメールやラインの文末に、「きょうは秋晴れで気持ちが良いですね」というようなことを付け加えます。これが遊びとなり、本文である用件も伝わりやすくなります。

  • たまには電話をする

直接会って話すことには及ばなくても、電話であれば声の抑揚(よくよう)や会話の間(ま)が伝わりやすくなります。メールやラインをした内容の確認でも良いでしょうし、たまには電話による言葉のキャッチボールも必要です。特に、部下に対して注意・指導をするような場合は文字ではなく言葉にしたほうが良いと思います。

  • 活字より手書き文字

確かに活字なら整然と綺麗な文書が書けますが、思いが伝わりにくいという欠点があります。ですから、たまにはメールやラインの代わりに手書きのハガキで伝えてみるのも一つの手です。活字が氾濫(はんらん)しているときだからこそホッとします。手間は掛かりますが、直接会えないぶん、こちらの誠意を見えるカタチにすることも必要です。

 

直接会って話すこともままならないご時世ですから、オンラインによるやり取りは仕方ないところです。しかし、人間関係は理屈ではなく感情面が大きく影響しますから、お互いの気持ちを感じ取る肌感覚を大切にしたいものです。