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新型コロナ感染の影響下でも めげるな就活生

一般社団法人 日本人材紹介事業協会 相談室長 岸 健二

 先月は新型コロナウイルス禍の中に社会人となった新入社員のみなさんにメッセージを送りましたが、今月はもう一段若手の、現在就職活動中の学生の皆さんにお話ししたいと思います。
 例年であれば就職活動真っ盛りに差し掛かるはずのこの時期ですが、約1万7000人が受験するという国家公務員総合職第一次試験は4月の予定を5月24日に実施延期していましたが更に再延期となり、地方公務員試験も同様で、前代未聞の事態です。
 本稿がHPに掲載される頃には、少しずつ緊急事態宣言区域も縮小の方向に向かっていると期待しますが、「行動変容」が要求される中、すぐに今まで通りの就職活動ができるように戻るとは思えません。

 緊急事態宣言による「三密」回避、自粛要請で周囲の状況を把握しづらく不安にかられるかもしれませんし、周囲にすでに内定を獲得した知人がいて焦る気持ちになるかもしれませんが、前述のように司法試験や公務員試験も日程延期という中、まだまだ多くの就活生がその活動を終えてはいません。

 まず「みなさんはひとりぼっちではない。」ということは忘れないでください。毎年何十万人という学生のみなさんが就職活動をするわけです。友人たちと「会って」情報交換をすることはできないかもしれませんが、みなさんにはスマホ、タブレットという強力な武器があります。こういう社会情勢だからこそ、就職活動に支障のない範囲で友人・仲間との会話・対話を大事にしてください。大学のキャリアセンターへの相談、情報収集も活用しましょう。
 世界中のほぼすべての企業が新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けているのですから、混乱があるのは当たり前、くらいの気持ちで就職活動を進めてください。

 でも、大事なことも忘れないでください。気晴らしのつもりでネットゲームを始めて止められなくなってしまうようだったり、「自分の心が折れそう」と思ったら、迷わず「心の相談窓口」を検索して、最寄りの信頼できるプロに電話をしてください。「孤立」で心にダメージを受けるのは、人間として自然な反応なのですから、躊躇する必要はありません。

 第一志望の業界が、企業が、このコロナ禍のために新卒採用を中止するかもしれません。でもこれからは間違いなく「脱・新卒一括採用」の動きが加速されます。「春の新入社員」がすぐに全くなくなるとは思いませんが、職業紹介の世界に永らく身を置いてきた筆者から見ると、過去新卒で入社できなかった企業に、資格を取るなど自分のスキルを磨く努力をして「リベンジ転職」した例もたくさん目にしてきました。今回「ご縁がなかった」としても「初志貫徹」する人生もあるでしょうし、「とりあえず」と思った職場が案外自分に合っていると思ってその仕事を極めた方ともお会いしたことがあります。「人生いろいろ」と思って、もう少しの間、就職活動にしなやかにスマートな力を注いでいきましょう。

 これからは少しずつ緊急事態宣言解除も進み、企業の採用選考も再始動する希望も出てくるでしょうが、第二派第三派の感染勃発の可能性も否定できません。警戒心は忘れてはなりませんが、応募企業が人材をどのように遇するのか、危機に対しての対処能力がどのくらいあるか、企業の特性や姿勢を見定めやすい環境でもあると思います。
 もちろん就活生の間で情報が広がっている「採用面接の今年の定番」は「緊急事態宣言中どのように過ごしていましたか?」です。多くの試験官は、この質問で就活生の何を見定めようとしているのかを推測想像し、準備を怠らずにいましょう。
 「今回の新型コロナウィルスの感染拡大とその対処で、社会の何が変わると思いますか?」という質問に対しての応募者の答を、質問の主旨を的確に捉えた返答であるかはもちろん、「国際的な視野で社会事象を見ているか」「歴史的な視野を持っているか」「自分を客観的に見ることができているか」という観点で「選考」されていることを忘れてはいけません。あえて筆者は「模範解答」を述べることはいたしません。「面接応募テクニックの達人」になって採用選考を通過しても、長い職業人生の中で自分を活かせる職場に出会う幸福にはつながらないと思うからです。
 ビジネスパースンにとって大事な能力には「シミュレーション力」もあります。さまざまな収集情報、先輩からの口コミ情報を整理しつつ、このような頭の体操をしておくことこそが大事だと考えます。

 人も企業も、ストレスが強くかかった時にこそ隠されていた本質が見えやすくなるという方もいます。「授業も心もとない、アルバイト収入減、活動変容でどうにも勝手が掴めない。」というこの厳しい状況は、自分だけを覆っているのではないですし、採用企業側にとっても初めての経験です。不安感にばかり目を向けるのではなく、お互い手探りな状態だと思うだけで、ずいぶん気分は晴れるでしょう。
 これから社会人になっていってからも、思いもよらぬトラブルは仕事につきものです。またいつか「想定外の」出来事に遭遇することになるでしょう。今を冷静に見つめていけば、将来のそのとき、今回の経験が活かされて、より適切な対応ができるに違いありません。

 みなさんを応援しています。
 くれぐれも感染拡大防止に留意し、睡眠は十分にとって就職活動を全うされますよう、将来のみなさんが、素敵なビジネスパーソンになって活躍していることを願ってやみません。

(注:この記事は、岸健二個人の責任にて執筆したものであり、人材協を代表した意見でも、公式見解でもありません。)