インフォメーション

労働あ・ら・かると

「何だ、この程度のことか」が採用の成否を決する

社会保険労務士 川越 雄一

 採用にいつも失敗している会社の言い訳の多くは「応募がない、採用してもすぐに辞めてしまう」です。
しかし、お叱りを覚悟に申せば、失敗する会社は失敗するようにやっているだけではないでしょうか。現に、世の中には求職者が全くいないわけでもなく、いつも採用に成功している会社もあるのです。

1.採用に成功する会社と失敗する会社

採用に成功する会社はいつも成功し、失敗する会社はいつも失敗しています。もちろん、たまたま成功する不思議な成功はありますが、不思議な失敗はありません。

●いつも成功する会社と、いつも失敗する会社
世間では「応募がない、採用してもすぐに辞めてしまう」が挨拶代わりのようになっています。しかし、世の中の会社すべてがそうではなく、採用に成功する会社はいつも成功し、失敗する会社はいつも失敗しているのです。確かに、採用というのは簡単なことではありませんが、成功する会社が特殊なことをやっているとも思えません。

●失敗する会社は失敗するようにやっている
仮に労働条件が同程度だとした場合、成功と失敗の原因はどこにあるのでしょう。一つ言えるのは「会社は求職者からさほど信頼されていない」という認識を会社自身が持っているかどうかだと思います。大企業ならともかく、名も知られていない会社に信頼を持てというのが無理な話かもしれません。そう認識すれば自ずと打つべき対策は見えてきます。

●採用手順を通じて信頼を得る
信頼というのは、小さなことをコツコツと積み重ねることにより得られます。ですから「何だ、この程度のことか」、言い換えれば基本をキチンと行うことが重要なのです。採用手順に限ったことではありませんが、やはり基本的なことをコツコツと積み重ねる人が強いのです。では、その採用手順の基本とはどのようなものなのでしょうか。

2.採用の成否を決する7つの「何だ、この程度のことか」

採用手順を求人から採用まで分けて考えた場合、それぞれの段階で押さえておくべきポイントがあります。言われてみれば、どれも「何だ、この程度のことか」なのです。

・その1:わかりやすい求人票で求職者に振り向かせる
求人票というのは、「こんな仕事をこの労働条件で働いてくれる人はいませんか」というお誘いです。ですから、わかりやすさが一番、そして会社へ親しみを持ってもらうことが必要です。また、求人票で応募者層は決まりますから、求人票の記載内容はとても重要なのです。

・その2:面接前に面接を終わらせる
採用で失敗しないためには、採用すべき人と面接し、そうでない人とは面接をしないことです。そうでない人ほど面接受けは良いものです。筆者もそうですが、面接で人を見抜けない人は、応募書類の送付方法、書類選考、面接来社時における応募者の観察など、面接前に面接を終わらせることも重要です。

・その3:面接本番は選ばれる立場で臨む
面接本番というのは、こちらが選ぶというより応募者から会社が選ばれる場でもあります。ですから、心地よい面接環境をつくることは当然ですし、面接担当者は身なりや言葉づかいなど細心の注意が必要です。また、面接は応募者と会社の相性を確認する程度の位置づけで良いと思います。

・その4:面接後のフォローで他社に浮気させない
面接で大切なのは、気持ちよく終了し、応募者に「面接を受けて良かった」と思わせることです。面接後は面接時の雰囲気やその後の対応で、選考辞退される可能性も高いので、他社へ浮気されないための対策も重要です。今は数社掛け持ちで就職活動する時代ですから、会社としてはここからが正念場です。

・その5:採否通知で会社の格を上げる
採否通知、特に不採用者への通知は重要です。送ってくださった履歴書にお断りの丁寧な文書を付けて返却します。また、普通郵便ではなく少なくとも特定記録郵便が良いでしょう。このようなキチンとした対応をしておけば、断わられたほうも納得できるでしょうし、会社の格は上がります。

・その6:内定時の打ち合わせで安心感を持たせる
採用予定者に安心感を持たせるのに、内定時の打ち合わせは絶好の機会です。仕事内容や労働条件の再確認、入社時の提出書類依頼、雇い入れ時健康診断の指示、場合によっては就業規則の説明などですが、これだけでも内定された人は安心するのです。これらを採用後にやっていては間が延びるというものです。

・その7:採用日に会社の真剣さを伝える
採用というのは大きな投資のようなものですから真剣さが必要です。提出書類の受け取り、雇用契約書の取り交わし、社会保険などの手続きをその日に、仕事をさせる前に行います。「会社は真剣ですから、あなたもね」を行動で示すのです。口先でいくら立派なことを言うより一つの行動にはかないません。

採用手順に魔法の杖などありませんし、そのようなことを求めている限り失敗を繰り返すだけです。ですから、「何だ、この程度のことか」という基本的なことをコツコツとやることが成功への近道なのです。