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従業員の病気休職時は親身に対応しよう

 社会保険労務士 川越雄一

たとえ「健康良好」で入社した従業員も生身の人間です。ときには病気やケガで長期に会社を休むこともあります。
このようなときに会社の対応が冷たかったりすると、従業員から見切られるばかりか、積もりに積もった会社への不満が一気に噴き出し、労使トラブルになりかねません。
ですから、休職時は就業規則のルールに則った手順を踏むことは当然として、思いやりの言葉をかけるなど、親身になって対応することが重要なのです。

1.病気になると不安になる
人は病気になると、日頃は何でもないことに不安を感じたり、それをきっかけに不満が噴き出したりします。
●日頃は何でもないことが
病気などで心身が弱ると、日頃は何でもないことでも不安になったりするものです。「有給休暇は使わせてもらえるのだろうか、もし、それを使い切ったらどうなるのだろうか」などと日頃元気だった人ほど、あれこれと不安になるものです。また、真面目な従業員ほど、自分が休むことにより、どれだけ会社や同僚に迷惑をかけるか痛いほど分かっていますからなおさらです。
●退職ありきで対応すると逆効果
確かに小さな会社だと、一人あたりの比重が高いので、休職させようにもさせられない場合もあります。しかし、だからといって、「休職は困るな」などというような言動や態度をされると会社への信頼感は一気になくなってしまい逆効果です。そうなると「会社がそのようなお考えなら…」と雇用関係はにわかに怪しくなってしまいます。
●ドロドロになりやすい病気休職
健康な時ならともかく相手は病人です。そのような場面で会社の対応が情を欠いて冷たかったり、無理に退職を強いたりすると、不安は不満となり、一気に噴き出し雇用関係はドロドロとしたものになります。ドロドロというのは、会社の対応に不満を持つ従業員が意固地になり、「パワハラを受けた、無理に辞めさせられる」などと感情が先に立ち、まともな話ができなくなるのです。

2.情けとルールのバランスを意識する
病気休職は休職開始の対応が重要です。情けに流されすぎず、ルールのみで割り切らないのがポイントです。
●バランスが重要
確かに人は、理屈ではなく感情で動くのですが、だからと言って情けのみに流されるのではなく、休職の開始時には、手順や手続きもキチンと踏んでおくべきです。こうしておかないと、いくら情けをかけていたとしても、会社対応に不満があってトラブルになれば「それはそれ、これはこれ」と手のひらを返すように開き直られかねません。
●ルールに則った手順を踏む
休職については就業規則のルールに則って休職期間、休職中の賃金、復職条件などを確認し、お互いに納得づくで休職を開始させます。もちろん取り決めたことは文書にしておきます。また、休職期間中、従業員の賃金を代替するのが健康保険の傷病手当金ですが、これの手続きをモタモタせずにテキパキと行うことがポイントです。
●思いやりの言葉をかける
従業員の休職で会社が困るのは確かですが、やはりいちばん辛いのは本人やその家族です。ルールに則った手順を踏むことは当然として、何だかんだ理屈をひねくり回すだけで、情けの無い対応は、休職する従業員ばかりか、他の従業員からも違和感を持たれます。「うちの会社って、従業員のこと何と思っているのかしら」。だからこそ、こんなときには思いやりの言葉が必要なのです。ではどのように…。

3.こうやって親身に対応する
従業員は社長や上司からのさりげないひと言にグッとくるものですし、そのようなことを他の従業員も自分のことのように見ているのです。
●このひと言にグッとくる
「仕事はみんなでカバーするから心配しなくていい。しっかり療養しなさい」と社長からのひと言。このひと言に従業員はグッとくるのです。苦しみを抱えているときに、さりげなくかけられる情けほど人の心を打つものはありません。人の気持ちは良くも悪くも感情で動くのです。ですから、まず行うべきは社長や上司がお見舞いの言葉をかけることです。
●家族を味方につける
病気休職において、必ずといっていいほど関わってくるのが従業員の家族です。ですから、看病する家族に対してもそれなりの配慮が必要です。「小さな会社だけど、私たちのことを気にかけてくれているのね」と感じ取ってもらうことが必要なのです。そうすることにより、何かのときに会社の立場を理解してもらえる可能性が高くなります。
●みんな見ている会社の対応
従業員というのは、会社の行動や言動を、恐ろしいほどよく見ているものです。休職する人はもちろんですが、他の従業員にしてみても、ほとんどのことが“明日は我が身”なのです。ですから一従業員のことであって、実のところそうではないわけで、他の従業員からも見られていることを肝に銘じておくべきです。

病気休職時は心身ともに弱っているときであり、会社の対応次第によっては、あらぬトラブルを起こしかねません。ポイントは休職開始時の親身な対応です。