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労働あ・ら・かると

入管法改正をめぐって ―その2

武蔵大学 客員教授 北浦 正行

 入管法改正案が国会で成立した。準備不足とか、国会運営が急ぎすぎるとかなど、依然として批判が強いが、ともかく外国人受け入れの新しい枠組みが出来上がったことは間違いない。それにしても、今後の政省令策定に委ねられる部分があまりに大きいため、関係者もどう評価してよいのかまだ戸惑いもあるようだ。
 新たな在留資格に「上限」があるのかどうかはまだ玉虫色であるが、受け入れ数(「需要見込み数」と言っている)は5年間で最大約34万人という数値は公表されている。その詳細はあまり報道されていなようだが、これによると多くの業種で、受け入れの大半を技能実習からの移行を想定している。もちろん何らかの検定試験制度を持っている業種ではこれをもとに考えればよいだろうが、宿泊業や外食産業では新たに準備するしかない。このように、業種によっては準備状況の違いが大きいのが実情のようだ。
 もうひとつ気がつくのは、その数値の根拠に、生産性向上と国内人材の確保による対応分も明記されていることだ。これこそ更にその根拠が問われそうだが、結局は、人材の見込み数を業界に尋ね、そこからこれらの数を引いたものが「外国人材の需要見込み数」となっている。しかし、果たして生産性向上がきちんと見通せ、競争が激しい中で国内での確保がどこまで確実なのだろうか。現下の人手不足対策という中でも、きちんとした議論をする必要があろう。しかも、国内だけでなく国際的にも人材獲得競争が激しい。
 それに「業種」でと言っているが、今回の改正法の条文を読むと、「……特定産業分野……であって……相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務」として在留資格が認められる。つまり、この「業務」の範囲がどのように絞られるかが重要であり、また業界で「不足」と言っている対象者も変わってくるのではないか。少なくとも条文から読む限りでは、補助的な役割までは読み切れないような気もするがどうだろうか。
「登録支援機関」と「受入れ機関」の関係も詳細はこれからだ。技能実習制度では、「技能実習機構」という監視機構を置いて、団体監理型では、監理団体は許可制の下で非営利で活動を認められるが、必要経費(監理費)以外は取ってはならないとされている。しかも3ヶ月に1回以上の頻度で実習実施者の監査を行うことになっており、かなり厳しい。
 今回の新しい枠組みでは、「登録支援機関」と「受入れ機関」は、今のところ特段の規制がないから、委託料金設定も含めて双方の契約次第で決まることになる。また、登録支援機関には、業界団体や民間法人のほか社労士などの支援体制を整えた幅広い主体を想定しているようだ。企業など受け入れ機関になる者が、実施できない支援業務を登録支援機関に依頼することになるのだが、多彩な主体が登場するならば、その行う支援業務の水準を調整することが不可欠だ。
その他にも決まっていないことが多すぎて、新しい制度がどう展開されるのかが見えてこない。その中でも、国会でいろいろと批判の対象となっている技能実習制度との関係は早く整理する必要がある。せっかく新設して受け入れも少しずつ始まった第3号実習生が空洞化するのでないかという心配の声もある。既に実施している企業にも、また実習生自身にも不安を与えてはいけない。