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気になる言葉遣い 1「限定正社員」

公益財団法人日本生産性本部 参与 北浦 正行

 このコラムには久しぶりに書くことになる。以前に書いていた時に比べると、最近の労働をめぐる言葉づかいには気になるものが少なくない。

 たとえば、その一つは「限定正社員」という用語である。職種、地域、時間等に制約なく働くのが正社員であるが、それに対しこれらに一定の条件を付けて働くスタイルであることはいうまでもない。それによって、正社員も生活との調和を考えた働き方ができるとともに、非正社員の正社員転換のステップとしての受け皿にもなる。

 そのこと自体は結構なことだ。ただ「限定」という言い方はいただけない。こんな名称の下でいきいき働ける社員はいるのだろうか。何かその人の能力に限定があるようにも聞こえるならば問題だ。もともと理屈で考えた言い方だから、実際にはこんな名称は会社としても使えないだろう。

 それだけではない。そもそも正社員がまずあって、その正社員に一部足りない要件で働くようなイメージを与えないだろうか。たしか「パートタイマー」という言葉は、フルタイムが基本であり、それが満たせない「不完全な」働き方という意味合いがあったと聞いたことがある。1970年代までは、労働団体も不完全就業者の代表格の一つでパートを位置づけていた。もちろん今では重要な基幹人材となっているから隔世の感はあるが。

 問題はどちらが基本なのかということだ。むしろ短時間で働く人をベースにおいて、フルタイム正社員は時間面で余計に働く人だと考えれば、見方も変わる。もちろん1日8時間、週40時間というワークルールはあるが、これは「標準」ではなく「上限」として定められている。「転勤」しないのも特殊でなく、全国移動が特殊ケースと見る。そんな発想で、軸足を非正社員に置いて見直すということがあってもよいのではないか。

 処遇の決め方もそこからは「引き算」ではなく「足し算」で考えることができる。今回の同一労働同一賃金の考え方で行けば、ベースは同じでも加算があるのが正社員と考えればよいのではないか。何事も足し算で考えたほうが前向きになるだろう。

 要は正社員を働き方の見方の軸足だという点が強すぎることだ。正社員や非正社員という言葉遣い自体なくしたいというのが今回の働き方改革の眼目だともいわれるが、そうであるならば、「限定正社員」などといわなくても、多様な勤務スタイルの社員だといってしまえばよいと思う。これからはダイバーシティの時代なのだから、それに合わせた名前を考えたいものだ。

以上