インフォメーション

労働あ・ら・かると

わが国企業の経営課題と対策について考えるーその6 新製・商品開発で付加価値・収益を高める

MMC総研代表 小柳勝二郎

 
 嗜好意識の多様化や企業間競争が厳しくなっている今日、企業にとっては、顧客ニーズにマッチした新製・商品を開発し、市場に提供することが企業の持続的の成長・発展するためにか欠かせない重要な条件になっています。わが国は、世界の中でもいろいろな製・商品を開発してきましたが、事業化が必ずしもうまくいかず他国に後れを取り、十分の成果をあげることはできなかったこともありました。
 これからのグローバル化は、新製品・商品の開発や事業化競争が一層強まることは間違いなく、難題ですが、企業もそのような認識を強く持って、資金や人材を投入して日夜努力をしています。

 製品と商品は区分なく使われる場合もありますが、敢えて区分すると、顧客が望むであろうということで作ったものいが物が製品で、消費者が欲しいと思って購入したものが商品ということになります。作る側と買う側の立場で異なりますが、製品がすべて商品として売れることが望ましいわけですから製品開発はすべて商品開発に含まれるという見方もあります。
 製品には開発期間の長短がありますし、全くの新規開発や、既存の製品に他の機能を結合させて新製品として売り出す場合もあります。

 いずれにしろ新製品として開発し、顧客から高い評価を受けて買っていただくことが重要です。そこで付加価値が生み出され効率的な経営をすることで利益も確保されることになります。製品化に投入するコストと売価の差が大きければ大きいほど付加価値や利益が高まることになります。企業経営としてはこの点を的確に管理し、継続的に新製・商品を開発できる体制を作っておくことが企業の持続的成長・発展にとって極めて重要です。
 製・商品を開発する中心は人材です。優秀な人材を確保・育成・活用することで、新製・商品を開発するベースを固め、併せて、開発を推進していく環境整備をしていくことが大切です。

 環境整備としては、設備・機械ということになりますが、それとともに重要なのは企業全体として新製・商品を開発していく意識が社風として強くあることです。それらが組み合わさることで従業員は、常に新たなことにチャレンジし、企業、職場に活気をもたらします。新製・商品を開発する場合、企業としてどのような点が検討すべきか見ることにしましょう。
 ①会社は目指すべき新製・商品の狙いや目的を明確にする必要があります。それが明確でなければよい製・商品を開発するこ
   とはできません。
 ②製・商品化するに当たってどのような知識・技術、設備が必要か、自社の経営資源で対応可能かを検討しなければなりませ
  ん。対応が不足している点については他社との業務提携やM&Aなどの対応策を考えることになります。
 ③製・商品を開発する場合、対象となる顧客の層やボリュームがどの程度であるか、市場の成長性が大きいかどうかも重要で
  すので調査・分析を十分する必要があります。 
 ④マーケット動向や開発を目指すべき製・商品の他社の動向がどのような状況か、いつ頃までに製品化し、市場に出すこと
  が 効果的かを検討することも大切です。
 ⑤目指すべき製・商品化と市場に出す時期が決まれば、それを実現するための人的配置、環境整備への投資額を検討します。
 ⑥製品化のためのコストと販売価格等から見てどれくらいの収益が見込めるかを検討し、期待されたような収益が見込めると
  いうことになれば、具体化に向けて積極的に取り組むことになります。

 新製・商品開発戦略で重要な点は、競争力のある新製・商品を継続的に開発できる仕組みをつくることです。その際の重要なポイントは、他製品との差異化、差別化の製品をつくり続けることが大切です。
 それらを実現するためには次のような点を考える必要があります。

 一つは製品技術戦略です。これは製・商品を開発する場合に、どのような事業領域や製・商品化に経営資源を分配するかという問題です。この基本的なことが明確に決まれば、経営資源の活用の仕方も変わってきます。経営資源の配分としては基礎研究が必要か、応用開発で対応できるかで配分の考え方も変わると思います。大企業は研究、開発の両面が可能な場合が多いように思いますが、中小企業はその余力がないため応用開発とコア技術を活かした戦略が現実的であるように思われます。

 二つは、製品の市場戦略です。競争激化時代を迎えて製品市場戦略は重要です。市場におけるポジショニングや価格設定などマーケティングの視点が重視されます。
最近、顧客ニーズの多様化や類似の製・商品の参入で製・商品のライフサイクルが短くなってきています。したがって、企業としても新たな顧客ニーズを的確に把握しつつ新しい製・商品を開発して市場に出していかなければ、利益を高めていくことが難しくなります。
 企業の対応としては、常に市場の動向を分析し、顧客が何を求めているか、機能、品質、価格、デザイン等を分析し、ニーズに合った製・商品を市場に提供することになります。
顧客が製・商品のどこに価値を見出すかは、人によって異なりますが、結論的には、顧客が製・商品について価格以上の価値として認めてくれれば購入されますし、価格以下であると感じれば売れないということになります。また、販売を高めるために無理をして価格を低くすると利益が減少し、経営上支障をきたすことになります。そういう意味で、価格戦略は、製・商品の差異化と並んで製品市場戦略では大変重要です。
 企業は、製・商品化に当たっては低コストと高付加価値の両要素を製・商品化の中に盛り込むことが求められます。

 三つ目は、製品展開戦略です。これは、中・長期的な市場展開を念頭に置いた戦略で、今後の経営戦略とも密接に関連しています。
 企業が持続的には成長・発展していくためには、既存の事業領域だけで製品展開を求めても難しく、新たなドメインも含めて製・商品を開発するための人材確保・育成・活用や機械・設備等の環境整備をすることも必要になります。具体的には、会社が考えている新しい製・商品等に関する顧客対象者、今後の市場性、競争関係等の市場調査、分析をした結果、推進すべきとの方針が決定されれば本格的にスタートすることになります。

 開発の手順としては事前調査の内容の分析を踏まえて、製・商品の企画や企画のコンセプトをベースに仕様を決め、商品化のめどをつけます。その後、試作として、性能、耐久性などの「機能試作」、デザイン、パッケージ等の「意匠試作」、生産数量、市場テスト、販売方法等の「量産試作」を行い妥当性の確認を行います。
 量産化の準備としては作業者の訓練、生産計画、資材購入計画、資材購入計画、販売の準備等を行って量産化を行います。

 企業が成長・発展していくためには、常に製品開発力を強めていくことが求められます。
長い間努力して作った新製品が市場に出ると同時に競合他社はそれを購入、分解し、設計や組み立て方等を自社と比較してどの程度の技術レベルか、どのような製作過程でできたのかなど詳細に分解・研究をします。
 その製品について顧客ニーズが高く、市場の拡大が今後とも期待されると判断した場合には、先行企業の特許等知的財産権に抵触しない範囲で類似なものをつくるとか、少し機能を高めて、同価格で販売することも考えられます。製品の多少の技術、機能の差異化は短期間でなくなる可能性があります。

 他社がまねのできないような製品開発能力を高めるためには、人材の確保、育成、活用をすることで研究・開発能力を高め、新製・商品を連続して市場に投入する仕組みを作ることです。そのためには技術開発、製品開発、生産、営業、購買等の関連部門の連携を密にすることなども大切です。