労働あ・ら・かると
採用は失敗することを前提に取り組もう
社会保険労務士 川越雄一
〇人の採用において、「こうしたら成功する」という類のものは多いのですが、それでも100%大丈夫ということはありません。ですから、「採用は失敗する」ことを前提に、失敗の影響を最小限にとどめる対策を講じておくことが現実的です。ちょうど、機械や車両などで人の誤操作や故障が起きても、ケガや破損が生じないように設けられている安全装置と同じようなことです。
1.年がら年中採用は行うものの
〇中小企業は従来から年がら年中採用活動を行っており、採用の目利きともいえます。しかし、採用した人が早期離職、鳴かず飛ばずで問題社員化することも少なくありません。
●面接ではまずまずだったのに
〇結果的に失敗に終わる採用でも、面接まではまずまずであることがほとんどです。そうでないと採用には至らないはずです。しかし、よくよく考えると、たとえ面接の目利きでも30分程度の面接 で応募者の人柄や職務能力を見抜くのは至難の業です。加えて、面接時はお互いに“余所行き”、つまり最高の自分を演出するわけですからなおさらです。
●背に腹は代えられず
〇応募者の中から選んで採用できる中小企業は少ないのではないでしょうか。加えて、現場から「人手がないから早く採用して」と催促されれば、採用を急がざるを得ません。少々気になるところはあっても背に腹は代えられず、とりあえず採用してしまうこともあるでしょう。「教えればそこそこのことはできるはずだ」と人選の正当性を自分に言い聞かせて。
●「できていない」と注意すれば「やってますよ」と水掛論
〇採用の失敗はすぐには顕在化しません。採用直後は「緊張しているのだろう」「慣れるまでは」などと、少々の問題は大目に見るからです。しかし、日を追うごとに「何かおかしい」ということになり、たまりかねて「できていない」と注意すれば「やってますよ」と水掛け論に終始し、採用の失敗に気付くのです。
2.採用は失敗するものと割り切る
〇採用担当者は採用の目利きと自負するも、転職を繰り返している応募者は百戦錬磨の強者です。面接の受け答えで面接担当者に取り入ることくらい朝飯前ですから、失敗するのは無理もなく、そういうものだと割り切ることも必要です。
●相手は百戦錬磨の強者
〇中小企業はほとんどが中途採用です。中には毎年のように転職を繰り返している人もいるかもしれません。そのような人にとって30分程度の面接は、赤子の手をひねるようなものです。つまり、役者が一枚上なのです。そして、「この人は良い」という印象を面接担当者に与えて面接通過、採用されてしまいます。
●採用に不思議な成功あり
〇採用について、世間では「こうしたら成功する」というノウハウ的なものが飛び交っていますが、実のところ、不思議な成功(たまたま成功)はできても、当たり前の成功はないと思います。ですから、不思議な成功を追い求めるより、成功手順は踏むとしても失敗することを前提に会社の損失を少なくする対策を打っておいたほうが得策です。
●安全装置としての出口対策
〇採用は失敗することを前提に考えると、機械などの安全装置と同じように失敗後の対策が重要になります。いわゆる出口(退職)対策です。問題のある従業員を採用してしまっても、それが顕在化せず、また顕在化してもスムーズに退職していただければ良いわけです。仮に、採用が成功であったとしてもこの対策は無駄にはなりません。
3.3つの段階で安全装置を働かせる
〇対策のポイントは、会社として従業員に求める到達レベルを具体的に示してお互いに共有し、それを基に節目で確認し合うことです。こうしていくことにより、到達レベルを物差しとして「できている」「できていない」を客観的に判断できます。
●第1段階:採用時に求める到達レベルを具体的に示す
〇求人票に明示した「仕事の内容」をベースに、できるだけ評価しやすい到達レベルを、採用後2週間、会社試用期間、1年、3年などの節目ごとに設定し雇用契約書に盛り込みます。これだけでも問題化しそうな人は「この会社、自分の手に負える甘い会社ではない」と、恐れおののき入社を辞退してくれます。
●第2段階:2週間に集中する
〇2週間というのは労働基準法に規定された試みの使用期間、いわゆる法定試用期間であり、この間であれば解雇の難易度が若干低くなります。ですから、雇用契約書に盛り込んだ到達レベルを日々確認しながら2週間に集中します。問題化しやすい人も数日なら何とかごまかせても、2週間となればボロが出やすいものです。
●第3段階:会社試用期間を最大限活用する
〇2週間を過ぎると次は会社試用期間です。通常は3カ月から6カ月程度設定されているかと思います。もちろん、その間も1カ月などの節目はありますが、できるだけ節目は多く設定し、到達レベルを確認する機会を増やします。また、試用期間中で十分に確認できない場合は延長措置も必要になります。
〇採用を成功させることは大切ですが、そもそも失敗するものだと割り切り、その影響を最小限にとどめられるよう採用後の節目において、安全装置としての対策を講じておくことが現実的です。

