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2026年最賃引上げ目安提示難航。6%前後か 中央最賃審で労使激突、目安小委員会での答申、8月にずれ込む
労働評論家・産経新聞元論説委員・日本労働ペンクラブ元代表 飯田 康夫
〇2026年度の最低賃金引上げ額目安答申を巡って中央最低賃金審議会で労使双方が厳しく対立。中央最賃審の小委員会での意見調整が難航、7月末目安提示の予定が8月にずれ込む可能性が出てきた。ここ3年労使双方の春闘賃上げ率は5%台を達成。この勢いを受けて労働者側は、物価高騰を背景に昨年の63円アップ(地方最賃審での上積みで66円)以上の金額(目安)を求めているのに対し、使用者側は、中小企業の経営実態を考慮、支払い能力を上回る目安の提示に、厳しい意見を表明。中央最賃審の目安小委員会での意見調整が難航、7月23、27日の小委員会でも労使の意見対立は解けず、目安の提示はできず、7月末か8月にずれ込みも想定される。目安答申は、不確定要素があり、見通せないが、1,100円台後半で6%程度が想定される。
最賃時給1,500円の実現は、2030年代前半、早期達成めざす
〇最低賃金の将来目標として石破前首相が打ち出した2020年代中に最低賃金を時給で1,500円台実現をめざすとした方針を明かした。1,500円を実現するには、2025年の時点で最低賃金の全国平均1,121円。これを2026年度以降、4年間でその差379円を加算するには、年間95円の引き上げ目安が必要となる。
〇この高額な目安設定は、昨今の情勢から考えて、不可能とされ、政府の骨太方針に、「2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向け、官民でたゆまぬ努力を継続し、労働生産性の継続的な向上を図ることで、遅くとも2030年代前半、できる限り早期に全国平均1,500円を達成する」と明記。1,500円達成目標の方針転換が明かされた。
〇2025年の目安63円引上げ以降、例えば、2026年で70円、75円、80円の引き上げであれば、残り3年間は100円を超える目安引上げが必要となる。的確な最低賃金を実現するには、今回の骨太方針で、2030年代前半、できる限り早期に1,500円を目指すとした方針転換は、妥当なものと判断したい。
連合「人たるに値する生活を営む賃金水準とする必要がある」
〇ところで、2026年度の最低賃金引上げ額(目安提示)を巡る労使双方の意見、弁護士会、マスコミ論調など第三者の見解などを見ていくと、それぞれの立場からの声が聞こえてくる。
〇攻める立場にある、労働者側の連合は去る6月17日、最低賃金行政などに関して厚生労働省に要請行動を行い「2026春闘では3年連続の高い水準での妥結結果が多くの組合から報告されている。各労使の真摯な議論により、賃上げの重要性、必要性に対する共通認識が広がりつつあると考える。賃上げノルムの確立に向けて、連合として全力で取り組んでいる」と述べた上で「最低賃金は、社会全体に賃上げの流れを広げていくことで、労働組合のない企業で働く労働者に波及させるために欠かせない。最低賃金近傍で働くひとの生活と安心を確保し、誰もが希望をもてる社会を目指し、最低賃金の確実な引上げとその履行確保を徹底されたい」として要請書を手交した。
〇連合の要請書のポイントは、最低賃金の水準について、「最低賃金は、憲法第25条、労働基準法第1条、最低賃金法第1条を踏まえ、経済的自立を可能にし、人たるに値する生活を営む賃金水準とする必要がある。国際的な最低賃金の流れとして相対的な賃金水準(一般労働者の賃金中央値の60%など)が重視されていることも念頭に置きつつ、中期的に大幅な賃金水準引上げを目指す」とする。
中小企業4団体連名で「経営実態踏まえた見直し徹底を」要請〇
〇一方、使用者側の日本商工会議所・東京商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会の中小企業関連4団体は連名で「最低賃金に関する要望」について~地方の中小企業・小規模事業者の経営実態を踏まえた政府方針への見直し、法定三要素に基づく議論の徹底を~政府に提出した。
〇その中で、4団体は「わが国が成長型経済へ本格的に移行するためには、雇用の約7割(三大都市圏を除くと約9割)を支える中小企業・小規模事業者の自発的・持続的な賃上げが不可欠だ」と引上げには賛意を示すも、「最低賃金は、近年大幅な引き上げが続いており、物価と賃金の上昇が続く中、ある程度の引上げは必要と考えるが、企業の経営実態を踏まえない引上げは、地方の産業・生活インフラを支える中小企業・小規模事業者の事業継続を脅かし、地域経済に深刻な影響を与えかねない」と指摘。「特に昨年は、地域間競争への過度な意識などから、地方最低賃金審議会において、中央最低賃金審議会が示した目安への大幅な上乗せが相次いだ。また、都道府県によって、発効日に最大6カ月程度の差異が生じ、一部の地域では、発効日が金額引上げの交渉材料として用いられたとの声も上がっている。こうした認識のもと、中小企業4団体は、2026年度の中央・地方における最低賃金審議にあたり、政府に対して以下の5点を強く要望する」。「今後、政府・与党へ提出し、実現を働きかける」とする。
- 中小企業・小規模事業者の経営実態を踏まえた政府方針への見直しを
- 法定三要素に基づく審議会での議論の徹底、過度な地域間競争の抑制を
- 企業の準備期間等を踏まえた合理的な発効日の設定を
- 産業別に定める特定最低賃金制度の適切な運用を
- 中小企業・小規模事業者が自発的・持続的に賃上げできる環境整備の推進を
東京弁護士会が最低賃金の大幅な引上げを要求
〇東京弁護士会は、会長声明を発出「東京都の最低賃金は、2025年10月3日発効の改定で時給1,226円となった(引き上げ額63円、引き上げ率5.4%)。一方、東京都区部の消費者物価指数(総合指数)は2020年を100として、2026年4月中旬速報値で112.4を記録、前年同月比では1.5%の上昇となっている。中東の武力紛争を受けた原油価格高騰により、2026年3月にガソリン補助金が再導入され、物価上昇が一時的に緩やかになった側面はあるものの、全体としては、収まることのないインフレ基調が続いている」と指摘、「物価はさらに上がる可能性がある」とし、「労働者にとっては、家計の収入増加を実感しにくくなっている」と分析。「もはや1,500円でも十分とは言えない」と踏み込み、「大幅な引き上げ」を要求している。
〇マスコミ論調をみても、「着実な引き上げが必要だ」との見出しをつけ、「物価変動を加味した実質賃金は今年に入ってプラス基調が続いているが、中東情勢の悪化を受けた物価上昇が懸念され、今後もこの基調が維持されるかは見通せない」とし、「今年度も高水準の引き上げが求められる」と主張。「最低賃金の影響を受けやすい中小・零細企業の支払い余力は乏しくなっているが、人手不足は深刻で、人材を確保できなければ事業の存続さえも危ぶまれる企業も多い。ここは、生産性の向上で賃金引上げ原資を生み出す努力が欠かせない」と指摘、「政府には生産性向上に資する投資への支援など着実な引き上げにつながる環境を整備してもらいたい」と指摘する。
【特記】
〇7月28日に開かれた中央最低賃金審議会で2026年度の最低賃金の引き上げ目安として、55円が提示され、8月に持ち越すことなく、ギリギリの段階で、決まった。これで全国平均は昨年度の1,121円から1,176円となった。今後、各都道府県最低賃金審議会で、さらなる上積みがあるのか、熱い議論が展開され、8月から9月にかけて最低賃金額が決まる。

