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初任給で新入社員の信頼を得る3つのポイント

社会保険労務士 川越雄一

 

新入社員を迎え、職場内がパッと明るくなった会社も多いかと思います。そして、1カ月以内にやってくるのが初任給の支給日です。雇用関係において中核をなすのは賃金ですから、とても重要なイベントの一つです。採用過程で積み重ねられた信頼関係をさらに強くするのか、それとも一瞬で失くすのか、ポイントは3つです。

 

1.約束どおりの額であること

賃金で重要なことは、基本給や手当など雇用契約において約束された額を支給することです。また、日割計算を行う場合などは賃金規程のルールに従います。
●雇用契約書に則って支給する
雇用契約書(労働条件通知書)には、基本給や手当の金額、計算方法等を記載することになっています。つまり、賃金に関する新入社員との約束ですから、これに記載してあるとおりに支給します。雇用契約書は求人票から始まり、面接など採用過程を通じ、お互い納得のうえで作成されますから、これ以上もこれ以下もありません。
●日割計算は賃金規程に従う
賃金計算期間の途中に入社した人で、月額の基本給や手当を日割する場合は賃金規程の規定に従います。また、欠勤があり賃金控除する場合も同様です。日割計算とひと口に言っても、その計算方法は意外と難しいものです。何れにしても賃金規程に規定された計算方法によります。もし、規定が曖昧な場合は改定しておきます。
●信頼を失う後出しジャンケン
滅多にはないと思いますが、入社後の働きぶりを見て、当初の約束よりも基本給や手当の額を一方的に減らす、いわゆる後出しジャンケンでは信頼を失くします。確かに、見込み違いもあって約束どおりの額を払いたくないこともあるかもしれませんが、ここは厳に慎むべきです。そうしないと信頼どころか賃金未払いで労働基準法違反になりかねません。

 

2.労働時間が反映されていること

毎月の労働時間に連動して変動するのが時間外・休日労働手当ですが、実際の時間と一致していることが重要です。また、今の時代は1分単位での反映が原則です。
●時間外労働時間と手当支給額を一致させる
時間外労働手当は「時間外労働時間×割増賃金単価」で算出されます。休日労働も同じです。新入社員にとって「やったら、やっただけのことはある」というのは、時間外や休日に働いたら、それに見合う手当が出るということです。ですから、賃金明細の勤怠項目欄の時間外や休日労働時間数と手当額が一致していることは最低限必要です。
●1分単位で時間の厳しさを伝える
労働時間は1分単位で計算するのが原則です。始業時刻前と終業時刻後に制止することなく働かせていたら、会社にその意識がなくても黙認していたとして労働時間扱いになる可能性が高くなります。1分単位の計算に抵抗があるかもしれませんが、1分単位で賃金を支給する姿勢を示すことにより、時間の大切さと厳しさを伝えることができます。
●信頼を失くす割増賃金単価の間違い
割増賃金単価は「割増賃金の基礎賃金÷所定労働時間×割増率」で算出されますが、間違いが多いものです。例えば、割増賃金の基礎賃金が基本給だけにしてあったり、所定労働時間が昔ながらに1カ月200時間だったりする場合です。少し詳しい人が見ればすぐに分かる間違いです。信頼を失くすのはもちろん、単価が低く算出されていれば賃金未払いになります。

 

3.保険料等の控除に間違いがないこと

賃金からは税金や社会保険料等を控除します。控除できるのは、法律で決められたものと労働者代表との労使協定により定められたものだけです。
●法律に基づき控除する
従業員が負担すべき税金、社会保険料、雇用保険料は法律により負担率や負担額が決められています。これらは、毎年のように変わりますので常に最新のもので控除します。特に3月、4月は変更が多いので注意が必要です。また、税金は年末調整がありますが、社会保険料や雇用保険料にはありませんので毎月正しく控除して精算しておきます。
●当たり前のことを当たり前に行う
会社は、日本年金機構から社会保険料の基になる標準報酬月額の決定、または改定があった場合は、その内容を速やかに被保険者である従業員に通知することになっています。法律上の義務ですがなされていないことも多いので、あえてキチンと通知します。当たり前のことですが、このようなことが当たり前にできる会社を新入社員は信頼します。
●信頼を失くす社会保険料の控除時期
社会保険料は前月分を当月支給の賃金から控除することになっています。ですから、4月に入社した新入社員が、最初に社会保険料を控除されるのは5月に支給される賃金からです。これを、「うちはずっと採用した月から控除しているから」と、間違ったまま控除をしてしまうと、分かっている新入社員の信頼を失います。

初任給は新入社員にとって特別な賃金ですが、会社にとっても同じです。ですから、新入社員の信頼を得るためにも、約束どおりの額を払い、労働時間を賃金に反映させ、そして社会保険料等の控除を間違いなく行うことが大きなポイントなのです。