労働あ・ら・かると
昔ホウレンソウ今チンゲンサイと山本五十六の名言
一般社団法人 日本人材紹介事業協会 相談室長 岸 健二
〇先日、企業の中堅層の人材の方々と暑気払いということで一献傾けた際、話題が今どきの中間管理職の苦労話になりました。
〇筆者が「昔は報告・連絡・相談の必要性を、ホウ・レン・ソウと言っていたけど、今のマネジメントの場面ではどんな言い方があるの?」と聞いたところ、「テレビの受け売りですが」との前置きの後で、今は「チンゲンサイ」「オヒタシ」ですよと一同が話し始めました。
〇「チンゲンサイ」というのは、マネージャーとしてイラっとした時に自戒の言葉として唱えるそうで、チン=沈黙して/思ったことをすぐに口に出さずに飲み込んで、ゲン=限界まで言わず、サイ=最後まで我慢、と、自分に言い聞かせるそうです。またプレゼンテーションや自己表現が不得意な部下に対しては「チンゲンサイにならずに話してみてよ。」と優しく語りかけるときにも使えるとのことでした。
〇「オヒタシ」は、オ=怒らない、ヒ=否定せず、タ=助けの手を差し伸べて、然る後にシ=指示する、というマネジメントの心がけだそうです。
〇いやはや、今どきのマネジメントの場面はそういう時代になっているのかと感心しました。そこで筆者の脳裏に浮かんだのは、山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて…」の名言です。
〇筆者が初めて管理職になったときに受けた研修において、「部下を育てられる上司」を目指せ、OJTの場面ではまず手本を示し、その手順について説明して理解させた上で、部下に実践させて成果を褒めることが重要だと、この名言が用いられていました。昭和平成の時代はこのことばに納得して良き管理職たらんと努力したものです。
〇しかしその時に教わったのは「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」までで、後日そのあとに続いて下記の文言があることを知りました。
〇続く言葉は
〇「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。」「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」だそうです。
〇続くこの言葉は、「部下や相手と話し合い、その意見を聞き、尊重して認め、責任ある仕事を任せることで、人は成長していく。」と説いています。
〇そして、放り投げることなく部下や相手の手がけている仕事の進捗を温かい心で見守り、信頼することで成果を上げてくれるという言葉です。
〇チームで仕事をするのに必要なリーダーの心得としては、令和(というより21世紀も四半世紀経過した今)になっても語られる山本五十六のこの言葉は、部下を育成する上で、一方的な指示だけでなく、対話や承認、そして信頼が不可欠であることを教えてくれます。
〇ちょっと叱咤しようと思ってもハラスメントに該当してしまうのではないか、と言葉を飲み込む時代のマネージャーは、ただでさえ人間関係が希薄化していると言われるこの時代、さぞかし大変だろうと思いますが、信頼して仕事を任せた後輩人材が成長していく姿を見ることができれば、そしてその後輩から感謝の言葉を聞くことができれば、「チームワークで仕事をする」という企業会社での仕事の本質を実感でき、満足感に浸れることと思います。
〇昭和平成を過ごし、20世紀後半と21世紀四分の一を生きてきた筆者は、さらにこの先どのような野菜標語がいいのだろうかと、考えあぐねています。
〇以上
〇(注:この記事は、岸健二個人の責任にて執筆したものであり、人材協を代表した意見でも、公式見解でもありません。)