2023年06月30日 大阪市
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―新しい資本主義実現実行計画を踏まえて―「いわゆる同一労働同一賃金の行政指導対応」をめぐる企業の対策実務(大阪)

講師:安西 愈 弁護士

(安西法律事務所)

 

 政府は「新しい資本主義実現会議」を設置し、その議論を「グランドデザイン及び実行計画」に盛り込み、いわゆる「内閣の骨太の方針」の実行計画の策定を目指している。
 その中で労働政策としては、ジョブ型雇用(日本型の職務給制度)の確立、リ・スキングによる能力向上支援、成長分野への円滑な労働移動を三位一体の改革とし、さらに非正規労働者の賃上げをめざし、そのためには「同一労働同一賃金」の徹底した施行が不可欠であるとして、本年3月(実際には4月)から本格的に実施される「労働基準監督署による調査と労働局(雇用環境均等室)による指導の枠組みの整備」を通じて同一労働同一賃金の徹底した施行による格差縮小が不可欠との方針が示されている。
 従来、いわゆる同一労働同一賃金問題は民事上の損害賠償事件で裁判所において争われてきたが、今後は政府の経済財政運営と改革の基本方針として行政が徹底した施行指導を行うと打ち出された。徹底した施行指導といっても具体的指導は労基署に賃金等の状況を調査させ、権限のある労働局(雇用環境均等室等)で事業者への指導をすることがスキームとされたものである。
 そうすると、今後事業主はこの問題について行政への対応が必要となり、今まで考えられていた従業員等からの裁判所への提訴を前提とする民事上の損害賠償請求への対策とは異なる対応が今後は必要となる。

【講師紹介】1938年香川県生まれ。高松商業高等学校卒業。1958年香川労基局入局。1962年中央大学法学部通信教育課程卒業。1964年労働省労働基準局監督課へ転任。1969年労働省退官、最高裁判所司法研修所に入る。1971年弁護士登録、安西法律事務所を開設。1985年第一東京弁護士会副会長。1987年中央大学法学部非常勤講師。1998年日本弁護士連合会常務理事。1999年日本弁護士連合会研修委員長。2004年中央大学法科大学院客員教授。
この他、最高裁司法研修所教官、労働省(現在厚労省)科学顧問、東京基督教大学非常勤講師、東京地方最低賃金審議会会長、第一東京弁護士会労働法制委員長、東京三弁護士会労働訴訟等協議会議長など歴任。人事・労務問題の専門家として活躍中。
著書に、『労働災害と企業の刑事責任』『多様な派遣形態とみなし雇用の法律実務』(労働調査会)など多数。

セミナー概要

講座名 ―新しい資本主義実現実行計画を踏まえて―「いわゆる同一労働同一賃金の行政指導対応」をめぐる企業の対策実務
日時 2023年06月30日  13:30~17:00
会場 大阪市/アートホテル大阪ベイタワー
講師 安西 愈 弁護士(安西法律事務所)
講座内容 第1.いわゆる同一労働同一賃金の行政指導
 ― 労基署調査・労働局指導への対応 ―

1.新しい資本主義実現会議のめざす労働政策の方向
 ― 三位一体の労働市場の改革と構造的賃上げ ―
2.非正規労働者の賃上げのための同一労働同一賃金の徹底した施行
 ― 新しい資本主義政策としての行政権限の行使による施行へ ―
3.労基署による調査・労働局(雇用環境・均等部室)による指導のスキームとは
 ― 同一労働問題に労基署には権限がないための措置 ―
4.パート・有期労働法の過料処分の2か条の行政権の活用
 ― 同一労働問題の報告の聴取、採用時等の労働条件の文書交付等 ―
5.助言・指導・勧告及び公表の行政措置
 ― 同一労働同一賃金問題への行政指導の踏み込み ―

第2.いわゆる同一労働同一賃金の実施をめぐって
 ― 中小企業への適用の本格化と対応 ―

1.中小企業への適用と施行の遅れ
 ― 施行期日直後に新型コロナ対策の「緊急事態宣言」の発出 ―
2.いわゆる同一労働同一賃金とは何か
 ― 趣旨・目的の理解を ―
3.パート・有期労働者の労働条件の向上目的
 ― 安倍内閣:「非正規という言葉をなくする」
 ― 岸田内閣:「非正規の賃上げのために同一労働同一賃金の徹底施行」
4.パート・有期労働者と正規労働者の賃金格差の是正
 ― 不合理な労働条件格差の是正 ―
5.これまでの判例は不合理性の立証責任は労働者側に
 ― 行政指導に対して使用者は合理性の説明責任を負うか ―
6.行政指導による「是正勧告」、「公表」等の社会的影響の重大性
 ― 社会的批判、認証・認定、入札等への不利益 ―
7.行政指導結果による民事上の損害賠償提訴の可能性
 ― 行政指導結果の是正指導等から労働者の提訴への流れも ―

第3.いわゆる同一労働同一賃金とは
 ― 行政指導と判例の判断・取扱い ―

1.本来の同一労働同一賃金ではなくパート・有期労働者との差異の問題
2.均等待遇と均衡待遇
 ― 問題になるのは均衡待遇 ―
3.不合理な相違は賃金だけではなく「すべての待遇」
4.比較対比する労働者をめぐって
5.待遇の相違の判断基準はどうなっているのか
 ― 個別の賃金項目ごとの判断 ―
6.いわゆる判断の三要素と待遇の性質・目的との関係は
 ― 具体的な差異と待遇の関係が説明できるか ―
7.合意した労働条件なのにそれが不法行為(過失)となり損害賠償とは
 ― 行政の全社的是正指導判断と裁判所の提訴した個別労働者毎の判断にちがいはあるか ―
8.「不合理」な相違であるかは誰が判断するのか
 ― 行政の指導判断と裁判所の賃金格差の「過失」の認定の問題 ―
9.行政の是正指導等を使用者は争えるか
 ― 行政指導は法的に争うことができない問題 ―
10.「労働」に対し「賃金を支払う」契約なのになぜ賃金項目別に不合理の検討か
 ― 経済的な意義と法的な取扱いのちがい ―
11.パート等採用時の賃金、教育訓練、福利厚生への説明義務の重要性
 ― 行政指導上の格差の合理性判断としてまず各項目の取扱いの説明が求められる ―
12.労働者から求められた時の「待遇の相違の内容・理由、待遇の決定に考慮した事項」は行政指導の際には開示すべきか
 ― 立証責任は労働者にあるのに行政に説明する必要があるか ―
13.短時間・有期雇用管理者の選任をしておくこと
 ― 努力義務であるが行政指導への対応として必要 ―

第4.賃金・処遇項目別の不合理性判断と対応のポイント
 ― 過去の判例等からの不合理でないとの具体的説明理由が必要 ―

1.「短時間、有期、派遣労働に対する不合理待遇の禁止指針」(告示)の重要性
 ― 行政指導の中心的な判断基準となる ―
2.基本給についての相違事由に対応した説明
3.賞与について
4.退職金について
5.家族手当について
6.住宅手当について
7.職務・業務等の関連手当(職務手当、能率手当、営業手当等)について
8.就労環境・条件・就労時期等の関連手当(危険手当、作業手当、年始手当等)について
9.勤務・業務等の奨励関連手当(精皆勤手当、生産奨励手当等)について
10.職務内容・責任・人材育成に関連しない手当(物価手当、地域手当、食事手当、単身赴任手当等)について
11.通勤手当の相違について
12.私傷病に対する有給の病気休暇、休職期間の日数・賃金支給の相違について
13.慶弔休暇・法定外休暇等の相違について
14.労働条件か否かをめぐって
15.派遣社員の賃金については労使協定方式がルーティンとなったか
 ― 派遣社員の場合の特別な取扱い ―

第5.定年後再雇用者の処遇と同一労働同一賃金
1.定年後再雇用者・高年齢者雇用確保措置(継続雇用・就業確保措置)の取扱い等をめぐって
2.定年後再雇用者の処遇への同一労働同一賃金の適用をめぐって
3.判例からみた同一労働同一賃金の適用はどうなっているか
4.今後の雇用環境の動向と処遇のあり方をめぐって
5.70歳までの就業確保措置の場合の処遇への適用は

第6.新資本主義実現計画のジョブ型雇用移行と同一労働同一賃金をめぐって
1.ジョブ型雇用(日本的職務給)をめぐる多様な見解
 ― 日本型職務給とは ―
2.ジョブ型雇用といわゆる同一労働同一賃金問題は
 ― パート・有期はジョブ型雇用ではないのか ―
3.ジョブ型雇用では諸手当は全廃すべきか
 ― いわゆる同一労働同一賃金問題の解消か ―
受講料 一般のお客様:23,100円(税抜価格 21,000円)
「労働基準広報」「先見労務管理」「労働安全衛生広報」ご購読者様:17,600円(税抜価格 16,000円)
「建設労務安全」ご購読者様及びビジネススクール会員様:19,800円(税抜価格 18,000円)
※受講料は、消費税(10%)・テキスト代を含みます。
※ビジネススクール会員様の受講料の割引価格は、受講者1名様のみ適用させて頂きます。
但し、法人会員様は受講者3名様までの割引価格を適用とさせていただきます。
申込方法 下記の申込PDFファイルに必要事項をご記入の上、FAXにてお申込みいただくか、『本セミナーのお申し込み』から入力フォームに入力の上ご送信ください。 PDFを見る
支払方法 ◆支払い方法
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主催

株式会社労働調査会 関西支社

共催

一般社団法人 日本労務研究会