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労働あ・ら・かると

三者構成による論議は古いのか

公益財団法人日本生産性本部 参与 北浦 正行

 公労使という三者構成で政策を論議することは、もはや時代遅れといったような意見がある。いわく、個々の法律を決める話ばかりで政策全体のグランドデザインは描けない。大体、労使で対立すればお互い簡単には譲らないから決定のスピードが遅く、生産的でない。労使団体の代表で議論といっても、それぞれカバーしきれない人は一杯いる。などなど批判の声が聞かれる。

 しかし、だからといって三者構成の政策決定は無理だという結論は早すぎる。そもそもグランドデザインは、経済計画や雇用計画などを作っていたときにはあったはずだ。従業員が全部ロボット化しない限り労働者と使用者の関係はあるはずだから、一番現場を知っているはずの労使でなくては実態を踏まえた議論はしにくい。組織された労使団体の役割は、自分たちのインサイダーの利害にとどまらず社会的に活動することを期待される。

 とはいえ、最近の政府の議論の仕方は、政府主導ですすめられることが多く、労使は有識者の一部になってしまっている。「働き方改革実行計画」の策定が典型であるが、労使代表と公益・学識のバランスで議論されるのでなく、労使はむしろ委員構成として少数派である。こうした形で議論していって、果たして政策の実効性を持てるだろうか。やはり現場感覚を持った労使の知恵が不可欠だろう。

 そういった中で、公労使同数で労働政策決定を行ってきた労働政策審議会(労政審)のあり方も論議され、ちょうど1年前に「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議報告」(2016年12月)が出された。その方向に沿って、旧来の労使の枠組に当てはまらないような課題を論議するため、本年7月31日から「労働政策基本部会」が労政審に置かれ、今後1年間で、技術革新(AI等)、生産性向上、今後の労働教育のあり方、時間・空間・企業に縛られない働き方といった中期的な課題が議論されている。委員は15名の有識者で構成されているが、労働団体関係は3名、経済団体の直接の関係はゼロである。

 しかし、ここで掲げられたテーマは果たして労使関係に無関係と言えるだろうか。例えば、技術革新と労働の問題は、優れて労使の切実な課題だ。技術的失業の問題はもちろん、職務の再編成や配置転換、更には賃金・労働時間面への波及効果など労使協議に関わる事項が目白押しである。労働の問題は優れて現場の問題だ。その当事者が登場しないような政策決定だけでは心もとないといえよう。