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採用企業は大規模と中小規模のどちらの人材紹介会社を選ぶべきか

一般社団法人 日本人材紹介事業協会 相談室長 岸 健二

 新卒の採用にあたって、「ナビ型紹介業(求人情報提供業)」が既にそのインフラとなっているということは、3月のこの欄”>http://www.chosakai.co.jp/information/13702/でも紹介いたしましたが、このところの雇用情勢の好転のせいか、経験者採用(中途採用)を行おうとする求人企業から、民間の職業紹介業(人材紹介ビジネス)をどのように利用したらよいのか、どのような人材紹介会社に依頼したら良いのか、というご質問・問合せが増加してきています。
元来の人材紹介会社は、どちらかと言うと離職後の人材の取扱い比率が高いハローワークに比べて在職者の職業紹介比率が高く(それでも昨今は失業中の人材の扱いが増加していると聞きますが)、マクロで見れば「産業構造の変化による労働移動」の円滑な実現をはかり、個々の人材の方々にとっても「在職中からの転職活動により、失業を経ない円滑な転職」を実現できる社会的機能を担ってきた訳です。
しかし「経験者採用・中途採用」と言ってもそのニーズは一様ではなく、とりわけ昨今の求人内容のそれぞれをよく見ると、「いわゆる正社員」だけではなく、一年契約の有期雇用(更新可能性あり)であったり、パート労働の組合せによって生産活動や販売活動全体の仕組み全体が稼働するような求人企画のご相談であったり、「紹介予定派遣」であったりと、まさに「多様な雇用形態」時代の到来を彷彿させるものがあり、人材紹介業界のレベルも「単に右から左に履歴書を流す」だけでは、とても採用企業の需要に応えられない時代になったと言えると思います。
また労働者派遣法が衆議院を通過し、成立の見込みがいよいよ濃くなってきたことを反映してか「派遣先企業である当社に対する(行政)指導が厳しくなるのであれば、派遣による人材確保はもうやめて、有期の臨時雇用や時間限定(パート)の雇用形態で直接雇用することで、今まで派遣社員にしてもらっていた仕事を担当させたいが、どうだろうか?」といった質問も、まだ数は少ないですがお受けするようになってきました。

このような「経験者採用・中途採用」についてのご質問で良く聞く言葉が、今回のテーマである「人材紹介会社は大規模と中小規模どちらを利用すべきでしょうか」というご質問です。
筆者は「御社は、中途採用活動にあたって、『応募者の量』を重視しますか?それとも求人要件に合致するかどうか十分に吟味された『応募者の質』を重視しますか?」とうかがった上で、お答えしたいと思うのです。
大学での職業教育に余り信頼を置いていない企業のメンバーシップ型新卒採用活動において、「企業に相応しいブランド大学からの一定量の応募者数」を確保した上で選考を行わなければならない事情は、百歩譲れば理解しなくもないですが、新規事業や社内の労務(年令)構成是正などの必要に拠って実施する数名~十数名の中途採用においては、「何しろ応募者、候補者の数を集める」よりは、新卒採用においては見ない「職務経歴」をはじめとした「求人要件を具備した応募者、候補者を集める」ことがより重要だと思うのです。

その観点では、どちらかというと「大量の求人情報の中から、転職希望人材に対し応募先情報を提供する。」ことを得手とする「ナビ型大規模職業紹介業」よりは、ベテラン担当コンサルタントが丁寧に求人要件を読み込んで理解して、人材の転職先候補企業のことをよく説明した上で応募の意思を確認し、候補者リストを提出する「助言型中小規模職業紹介業」を利用したほうが、数はさほど多くなくても求人要件によりマッチした応募者(候補者)と面談でき、採用効率としては一枚上のような気がするのです。

もちろん自社の採用選考体制に十分な時間と人を当てることができるような求人企業であれば、「中途半端な理解で人材選別をした上で候補者リストを提出する」ような所よりは、「先ずは候補者の数を集めよ」という作戦も、あながち間違いとはいえないとも思います。

クレイムの観点からすると、「ナビ型大規模職業紹介業」には「求人要件とマッチしない人材ばかり挙げてくる。当社の求人票をよく読んでいるのか。」といったご不満も求人企業から伺うことがありますし、何より規模が大きいのですから顧客数も多く、ビジネスにおいても求人においても競合先企業からの求人も取扱っていると思ったほうが良いでしょう。採用担当者の心に「同一人物を競合先にも紹介しているのではないか」という疑心暗鬼の芽が出ても不思議はありません。紹介会社の社内で競合企業のそれぞれの担当者が、代理戦争のように人材の取り合いをしている光景があったとしても、おかしくないと思います。
一方「助言型中小規模職業紹介業」については「仕事が遅い。なかなか面談までこぎつけられる実際の候補者の提出がない。」といった声もあることが現実です。

とある求人情報提供型の人材会社の社長さん曰く、「3人の応募者から選考するより、300人の応募者から選抜するほうが、いい人が採用できるに決まっている。」とおっしゃっているのを聞いたことがありますが、果たして本当にそうでしょうか?

筆者の仮説的結論としましては、「1社『ナビ型大規模職業紹介業』と契約し、他方で求人企業の文化までよく理解した数社の『子飼いの助言型中小規模職業紹介業』双方をうまく使い分ける」ことが現実的ではないかと考えています。
もちろん上場会社等で自社子会社としての「人材紹介会社」を保有しているところは、その企業系列人材紹介会社を後段の『子飼いの助言型中小規模職業紹介業』として育てることが人材採用の正否を決することになるような気もいたします。
以上

注:この記事は、岸健二個人の責任にて執筆したものであり、人材協を代表した意見でも、公式見解でもありません。)