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今月のテーマ(2011年12月)
グローバル人材の育成・活用・処遇を考える
経済のグローバル化の一層の進展と円高により、わが国企業の海外展開とそれに伴うグローバル人材の育成・活用・処遇が大企業、中小企業を問わず大きな課題になってきた。
グローバル人材の育成・活用・処遇というと、言葉は頻繁に紙誌やテレビ等で扱われているが、これを効果が上がるように制度化していくには会社の方針を明確にし、社員全員に理解と意識改革を求めていかなければならない。
最近の企業の行動をみると、海外展開をしないと生き残れないということで、採用時から海外要員として採用する企業、採用後5年位の間に一定の期間順繰りに海外経験をさせる企業、処遇制度として海外勤務制度をつくり希望者を海外に派遣する企業等各企業の特長を活かした制度を考えている。韓国の一部の企業では、わが国企業より先んじてグローバル人材の育成・活用を行っており、それなりの成果を上げてきた。日本もようやく腰を上げたところであり、全体を有効に機能させるためにはまだ時間がかかりそうだ。
先般、グローバル人材の育成について話し合う財界の会合に出席した。アメリカからビジネススクール界の大物とその大学の教授が来日され、日本企業の人事担当者や先生方とグローバル人材について意見交換した。その際、アメリカサイドから「中国、インド、韓国をはじめアジア諸国、ブラジルから多くの人がアメリカに留学しているが、日本人は減少している」との話があった。
グローバル人材の育成・活用・処遇をしていくには、採用から配置、異動、処遇、評価、教育など多岐にわたり多角的な検討が必要である。この考え方を本格的に導入するためには、まず、グローバルな視点に立って、どのような事業をどこに拠点を置いて展開するかの経営戦略を明確にすることが大切である。それを踏まえた人材戦略を立て、グローバル人材の育成・活用・処遇等もその一環として位置付けて本格的に取り組むことになる。
グローバル人材というと一般的には、英語等語学が問題になるが、語学ができるに越したことはないが、それよりも健康で海外に働きたいというチャレンジ精神や他国の文化、慣習を理解し、受け入れることができる人などをあげる企業もある。もちろん、どの階層を派遣するかによっても求められる要素は異なる。若年層までは上記の点が重視されるが、中堅層くらいになるとさらにマネジメント能力や事業の戦略的展開、折衝能力等が求められ、管理職層になれば赴任国の市場動向、人脈、文化、政治動向など広い視点にたって戦略展開を行うとともに組織全体をマネジメントし、成果を上げていく能力が求められる。
会合の中で、アメリカ側からはグローバル人材の要件として、グローバルな知識とローカルな知識をバランスよくもつことが大切とし、ローカルな知識として次の4点を指摘した。
@文化的側面(文化、言語、民族性等)A政治的側面(政治体制の違い、国の規制、通貨政策等)B地理的側面(地理的条件等)C経済的側面(所得水準、資源状況、市場規模等)
これらの点については国によって大きな違いがある。単なる技術だけではなく、上記の点を理解し対応できることがリーダーの条件であるということであった。それはそれなりに納得であるが、私にとって、この会合で最も関心があったのは、日米間の質疑応答である。
アメリカ側から「経済はグローバル化し、経営のスピードが求められている。最近アジア諸国からアメリカに留学生が増えているのに日本からの留学生は減っている。その原因はお金をかけ、努力して勉強をしてきても、日本の企業はそれに見合った処遇をしていないからではないか。留学は最先端の学問をいろいろな国の学生と真剣に勉強することが出来る。能力開発のチャンスを与え、能力・成果に見合った仕事や処遇を行うことで、本人も勤労意欲を高め、グローバルな人材育成・活用が可能になる」といった趣旨の発言があった。
議事の進行役から指名を受けた日本のグローバル企業の人事担当者から「わが社は留学等で勉強してきたからといってよい仕事、よい処遇といった特別扱いはしない。チームワークを大事にして仕事していくことが望ましいと思っている。社内では海外要員の研修もしている。海外から幹部を日本に呼んで、当社の経営理念やノウハウを勉強してもらうように研修もしている」との発言があった。留学生が減ってきた要因としては就職活動のタイミングの問題も指摘されているが、日本の人事担当者の考え方は日本の多くの企業に共通しているように思われる。
これに対して、アメリカ側から、「各企業がどのような人材育成・活用・処遇をするかは自由だ。日本のやり方にとやかく言うつもりはない。ただ経営はスピードが大事であり、有能な人にはそれに見合う仕事と処遇をしなければ人材は育たない。現下の時代でどのような人材育成・活用がよいか、世界の動向を見れば自ずと分かるであろう」といった発言があった。私はかねがねこの問題に関心を持っていたので大変面白い議論であった。
日本企業がチームワークを大切にしている点も理解できるが、最近まで、日本の留学生は会社に戻っても転職するケースが多く、アメリカ側の指摘を日本企業も今一度よく考えてみる必要があるであろう。両方の考え方をうまくマッチングさせることは難しいが、個とチームワークの相乗効果を高める視点で人材育成・活用・処遇制度を構築することが出来ればさらに強い組織になるのではないかと考える。
日本の企業は周回遅れでグローバル人材の育成・活用・処遇に取り組んでいる。円高も加わって留学生が増加しているようであるし、経済界も力を入れていくとの動きもある。優秀なグローバル人材を育成・活用・処遇して競争力を強め、活力ある日本の再生を実現してもらいたいと思う。
【MMC総研代表 小柳勝二郎】
