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今月のテーマ(2011年11月 その3)
グローバルな人材と「どじょう」ネーミング
大震災により日本の高度な技術による部品が製造できなくなり、世界中にモノの生産に影響したのは記憶に新しいですが、ここにきてタイの洪水により日本企業約450社の工場が被害にあったと報道されています。そのことが時期的に、クリスマス商戦への商品供給や年末年始に売れる消費材に影響してしまうという報道を聞くにつれ、経済のグローバル化はこういうことかとしみじみ感じています。
タイでいえば、いわゆるボーナス商戦や年末年始商戦でのカメラや自動車の供給体制にすでに支障が発生していることは報道されているとおりです。また、場合によってはおせち料理に使う蒲鉾の供給にすら支障が出るのではないかと危惧されています。
一方で、もれ聞いた話によれば、タイの隣国が国をあげて工場を誘致しているという情報も入っているので、経済のグローバル化、生産のグローバル化のリスクとメリットをもう一回、考えざるを得ないと思います。
翻って、よく「グルーバル人材を採用したい」「グルーバル人材って何でしょうか」という質問があります。一昔前であれば、外国語が出来るだけでグローバルな人材と言ったことがありますが、もはやそんなことではないことは明らかです。外国人を採用することだけがグローバル化ではないし、日本人が海外に赴任するだけでグローバル化でもありません。
もちろん、グローバル化の一つの要素として、国境が低くなることは大きい要素といえますので、日本人のビジネス上の移動距離が国内でなくなることはグローバル化の一つの現象ではあるし、外国の高度人材を採用すること、あるいは技能実習生のような形で外国人労働者が日本国内で働くこともグローバル化の一つといえるでしょう。しかし、本当の意味で、企業のグローバルな活動展開は日本にいてもありえるわけですし、海外赴任の求人だけがグローバル求人ではないことに注意すべきです。
語学も必要ですが、まさに「風が吹けば桶屋が儲る」ではないですが、タイの製造拠点に障害が生じたときに、どのような影響が日本に、また地球規模に発生するかということを理解しているのがグローバル人材ではないでしょうか。それは留学をした人のなかに多いという現実はありますが、留学すればいいということではありません。その国の言葉を知った上で、語学力を使って、その国の文化や社会的仕組みや、「現象と社会的反応」について類推力のある人材が必要なのではないかと思います。
ですから、繰り返しになりますが、タイで洪水が起きれば日本のおせち料理が危ない。バンコクで洪水が起きれば日本のカメラの売り上げが危ない――という構造をわかっていることが大事だし、そのなかで現地のタイ人労働者やタイに出稼ぎにきている周辺国の労働者がどのような行動をとるだろうかということを直感的にシミュレーションできる人材が大事なのだろうと思います。
人材の要件は「情報収集力」「情報編集力」「シミュレーション力」そして「発信力」です。グローバルなビジネス展開であればあるほど、想定(シミュレーション)するために必要な基礎知識の範囲が広がることは事実です。つまり、語学力で「文字」を読めればいいのではない、まさに“人文地理的” な発想を持った人材がグローバルな人材なのではないでしょうか。
話は変わりますが、今度の内閣は「ドジョウ内閣」というネーミングのようです。それはそれで日本人として言いたいことは、私にはわかるような気がしますが、その一方で「ドジョウ内閣」といったときに、例えばロシアの人々、中国の人々、アメリカの人々、韓国の人々がどういうことをイメージするかシミュレーションをしたのだろうかと思います。ひょっとして日本人が想起するような「田舎」「泥臭い」というイメージではなくて、「ぬるぬるした掴みどころのない内閣」「すぐ泥にもぐってしまい逃げ足の早いずるい内閣」というイメージを外国人が持つのではないかと危惧をしています。
本来のグローバルな発想をもった人材が内閣周辺にいれば(外務官僚の仕事かもしれませんが)、そういうアドバイスができなかっただろうかと思います。最近は、大臣の「暴言」として言葉だけを切り取って批判する向きも気になるところですし、言葉というものは前後の脈絡で生きてくるものですから、その言葉だけをとって袋だたきにするような傾向を私は眉をひそめてはいるところではありますが、一方で「派遣切り」「名ばかり管理職」といった「絶妙な」ネーミングによって、前後の脈絡、意味も考えないまま政策や社会が動いてしまっている事実も否定できません。
「ドジョウ内閣」という言葉には国内はともかく、国際的な視野でグローバルな発想を持った人材が検討しているのか。そういう人材がいなければ、日本の国際的な位置づけが弱くなってしまうのではないかという心配もしています。まさに本当の意味でのグローバルな人材が求められている時代ではないかと思います。
【岸 健二 (社)日本人材紹介事業協会(略称/人材協) 事務局長】
