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今月のテーマ(2011年9月)
企業の品格が問われる今年の採用活動
9月に入ると新卒採用は、一気に来年度の準備に入る。今年の場合、夏採用、秋採用を継続している企業も少なくないが、大勢は、次年度の体制づくりに重点が移っている。では、次年度の採用活動の準備として現在、企業は、何を課題として取り組もうとしているのだろうか。いくつかの企業に「来年の採用課題」を聞いてみた。
まずは、代表的な意見。「倫理憲章の見直しにより広報活動開始時期が10月→12月に変更され、広報期間が短縮される中で、学生の当社に対する理解をどのように深めていくかが課題です」(大手通信)。「倫理憲章の変更により、広報活動の開始時期が遅れるため、来年度の会社PRでは告知の仕方等をいかに工夫するかが当面の課題」(メーカー)。「12月からの就職媒体スタートにより、11月末までの期間で、学生との接点を持つ施策の検討が緊急課題だ」(サービス)。これが多くの企業の回答だった。採用担当者の関心は、今年の春に発表された経団連の倫理憲章が、秋からスタートすることへの対応が最大の関心事ということだ。素直に倫理憲章を遵守すれば、悩みはないが、どのように上手に抜け駆けをするか、ということに知恵を絞ることがこの時期の課題のようだ。
このほか課題としては、「グローバル時代を担う人材確保にむけて国内だけでなく、海外にも採用対象者を広げた採用活動が緊急課題」(大手輸送用機器)とか「技術系、事務系ともに春採用以外の通年型の定期採用(既卒者含む)の新しい試みを検討していきたい」(総合電機)という長期的な人材戦略を語る企業もあるが、少数派だった。
この企業の課題という取材で意外なことが分かった。あれほど被害の大きかった東日本大震災は、新卒採用にほとんど影響を及ぼしていないということだ。大震災によって企業の採用計画や人材基準を根底から見直すなどという課題をあげた企業は皆無だった。地域の企業では、雇用問題が深刻化したり、契約社員の雇止めや高卒内定者の採用取消しに追い込まれたりしたが、それは、ごく一部に留まった。新卒大卒の採用が、それほど重要であり、企業にとっては、継続しなくてはならないものであることが確認されたのはせめてもの収穫だった。
当面は、経営環境に大きな変化がないかぎり新卒の採用計画も昨年並みの採用となれば、企業の採用活動も従来と同じ動きとなる。しかし、秋から始まる来年の採用は、これまでとは違って倫理憲章の制約が強まる模様だ。倫理憲章を大学、企業、就職情報業界の3者で遵守していこうとお互いに誓約したからである。だが、企業のトップからは、これからのグローバル時代を生き抜くために優秀人材を獲得することが採用担当者に厳命されている。全体が採用減になってもコアになる総合職やグローバル人材、優秀な技術者の採用は、緊急課題になっている。そのため採用担当者の本音は、次のような倫理憲章スレスレの行動となって秋からの採用活動にあらわれそうだ。
まず当面の課題は、採用広報活動の工夫である。ここでは、採用情報が解禁される12月1日までの「選考に直結しない採用広報活動の拡大」である。業界シンポジュームや仕事研究セミナー、就活応援セミナーなどによる迂回作戦だ。これらのテーマ別のセミナーや異業種が連合した業界セミナーにすれば、大学内でも開催が可能かもしれないと大学と折衝し、許可された企業もある。ゼミや同窓会組織との提携セミナーもある。なかには、大学新聞や生協とタイアップして学内セミナーを獲得した企業もある。
次の課題は、12月から集中すると予想されるエントリーシート、筆記試験、面接などの「スピーディーな選考プロセスの改革」である。マニュアル本の普及で形骸化したエントリーシートを廃止し、WEB教養試験を関門にして選考、合格者を直ちに懇親会や質問会で選考を行い人事面接のまえに候補者を選抜する選考システムの変更を検討したり、5日間のインターンシップを活用したりして選考と拘束を行うという作戦も検討中だ。3番目の課題は、読みにくい選考・内定スケジュールへの対応である。今年のように4月素材メーカー、5月金融、6月商社・電機・自動車という選考スケジュールになると、学生の内定辞退は今年より増えそうなので、早期に内定を出しながらも夏採用、秋採用を継続するという長期採用活動を覚悟する企業もある。
このように今年の課題にどう取り組むかということで共通しているのは「優秀学生の早期囲い込み」である。倫理憲章の精神は、学校教育の尊重であり、採用の早期化阻止だが、ほとんどの企業は、ライバル企業の遵守状況を見ながら、12月から2月までは、臨戦態勢で望む企業がほとんどだ。相互監視しながら4月1日までは、無事であってほしいが、どうなるか。早々と6月選考を宣言した商社にメガバンク、保険業界が同調すれば、一定の秩序ある動きになるのだが、どうだろうか。これら有名企業は、企業の品格としてどこまで倫理憲章を守るかが今年こそ問われるだろう。
【就職アナリスト 青田守男】
