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今月のテーマ(2011年7月 その5)
暑い最賃の夏がやってきた ― 春闘を見る2
未曾有の被害をもたらした今回の大震災によって、今年の春闘の存在も霞んでしまったような感もするが、本年の最終的な妥結状況がようやく発表となりホッとした。厚生労働省「民間主要企業賃上げの妥結状況」によれば、平均賃上げ率は1.83%で昨年を率、額とも少し上回ったという。当初、災害による経済への打撃が大きく影響するという声もあったが、蓋を開けてみれば、妥結時期が一月ほどだけ遅れただけの違いとなった。
とはいえ、発表される賃上げ率は、この数年程ほとんど変わっていない。しかも、定昇込みの数字だから、ベースアップ分はごくわずかとなっている(事実、中労委による1,000人以上企業の調査結果をみると、昨年度の賃金の年間改定率1.54%のうちベアは0.02%)。賃上げというよりもむしろ定昇の実態を示すような数字だ。
たしかに、春闘における「賃金改定」の位置づけは、大きく変わってきた。今年の労働側の賃金に関する取り組みにおいても、賃金に関する要求は、賞与・一時金に移ってきたが、こちらの方は経団連発表でも4.4%増と2年連続のプラスになった。
春闘のスローガンを振り返っても、「食える賃金」ではじまり、経済成長とともに「生活向上分の確保」に移り変わってきた。今だったらどうか。差し詰め「納得できる賃金」といったところだろうか。そうした観点から、賃金ミニマムや公平性の確保が大きな課題となる。労使の交渉でも、パートなど非正社員の賃金改善や企業内最低賃金の引き上げへの取り組みに焦点が置かれてきている。
考えてみれば、これらの課題は、すべて法定の最低賃金の問題に大きく関わる。地域別最低賃金は、パートなどの労働者の時間給引き上げに影響を与え、産業別の特定最低賃金は、企業内最賃協定にも関連するだろう。
その意味では、この夏にはじまる最低賃金論議は、今年の賃金の枠組みを決めていく重要な場面ともいえよう。マスコミでも大きく取り上げられることがないので気づかない人も多いが、現にあたかも春闘本番のようなエネルギーが労使双方から注がれている。皮切りとなった中央での目安審議も、夜を徹しての審議で決着は朝までかかったと聞く。結果の加重平均の6円は労使をどのように受け止めるか。今年も、答申は労使一致せず公益委員の見解をもって示し、最終的判断は都道府県単位の審議会に委ねられた。
その中でも、生活保護との逆転現象の解消は当面する大きな課題となっている。今回も北海道や神奈川など9つの都道府県での乖離が残された。難しいのは、最賃の引き上げによって一旦解消しても翌年にはまた開いてしまうこともある点だ。今年も埼玉、大阪など4つに府県で逆転したが、使用者側は、いくら引き上げても遠のく「逃げ水」のようだという。一方、労働者側は、今の最低賃金額では生活費水準に及ばず労使で合意した雇用戦略対話の履行確保を強く訴える。
これからは、地方での地域別最賃の審議に舞台が移る。この暑い夏を更に熱くさせるような論議が労使で交わされるだろう。最低賃金は1円単位の勝負というが、その決定には経済情勢や企業の経営状況、労働者の生活状況など様々な要素が総合的に勘案されている。最賃審議を通じて、これらの問題に対する共通の認識に立って、各地域における労使のコンセンサスづくりが進むことを期待したい。
【北浦 正行:公益財団法人日本生産性本部参事】
