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今月のテーマ(2009年11月)
提言:労働法を1つの法律に統合する
私は,フランス労働法とフィリピン労働法を比較法として研究している。偶然にも,両国とも労働法を1つの法律に統合している。つまり,日本のように,労働法が個々の法律に分散しているのではなく,1つの法律になっている。
1つの法律になっていると,いろいろ便利なことやいいことがある。
第1に,すべての労働法関連条文は,1つの法律に収められているので,一目瞭然である。1つになった労働法を調べれば,何が労働法に書かれているかがすぐわかる。個々の法律になっていると,そのような法律があることや名称を知らないと,その法律にたどりつくのに時間がかかる。
第2に,労働法のうち主要な法律は小さな六法にも掲載されているが,主要でない法律は通常の六法には掲載されていないので,大きな六法を見なければならない。1つの法律になっていれば,そのような手間は不要である。
第3に,個々の労働法を体系的に位置づけることができる。個々の法律に分散していると,法律相互の関係が見えないが,1つにまとまれば相互の関係が明らかになる。また,法律において,不足している点を知ることができ,あるいは重なっている点を整理できる。
第4に,労働法を貫く総則規定を設けることができる。たとえば,現在は,性差別は男女雇用機会均等法,年齢差別は高年齢者雇用安定法というように,個々の法律に差別禁止が規定されている。総則として,一定の事由を理由とする差別禁止規定を置くことができる。労働法を貫く理念規定を設けることができる。
第5に,労働法の実効性確保の統一ができる。労働法が要請する公法上の義務に,使用者又は事業主が違反した場合,違反に対する制裁は法律によって異なっている。たとえば,労働基準法違反に対して刑事罰が規定されているのに対し,育児・介護休業法違反に対する刑事罰は規定されていない。育児・介護休業は,労基法にいう休暇であるにもかかわらず,同じ休暇付与違反に対する制裁に差異がある。使用者の公法上の義務違反のレベルが同じであれば,同じように制裁をするべきであり,1つの法律にすれば,法の実効性確保も統一できる。
それでは,労働法を統合した場合の問題点は何だろうか。全ての労働法が1つの法律になるので,持ち運びに重いということはあるかもしれない。労働法の統合によって,大きな問題が生ずるようには思われない。
現在,政権が交代し,労働者派遣法などの労働法の改正が喫緊の課題となっている。これを機に,労働法を総点検し,整理し,1つの法律に統合することを考えてもいいのではないだろうか。
【神尾真知子 日本大学法学部教授】
