労働あ・ら・かると

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今月のテーマ(2009年10月)

入管法改正と外国人雇用

 本年の通常国会(第171回国会常会)において、「出入国管理及び難民認定法」(以下「入管法」といいます)の改正法が成立し、2009年7月15日に公布されました。

 今回の入管法改正には、(1)新たな在留管理制度の導入、(2)外国人研修・技能実習制度の見直し、(3)在留資格「就学」の「留学」への一本化などが盛り込まれています。なお、施行日は、今後政令で定められます。

 以下では、今回の入管法改正によって影響を受けるとみられる外国人雇用の今後の展望について述べます。

1.新たな在留管理制度と不法就労の防止

 今回の改正により、従来の外国人登録法に基づく外国人登録制度が廃止され、入管法のもとで入国管理と在留管理を一本化する新たな在留管理制度が創設されます。

 新たな在留管理制度のもとで、3月を超えて在留する外国人(中長期在留者)については、一定の在留資格を除き「在留カード」が交付されることになります。しかし、在留資格を有さない外国人(不法滞在者)については、「在留カード」は交付されません。

 また、今回の改正によって、不法就労助長罪が強化されています。不法就労助長罪は、平成元年入管法(翌年施行)によって創設され、不法滞在者を雇用・あっせんするなどした事業主等が対象になります。今回の改正では、(1)そのような行為を外国人がした場合、退去強制事由となること、(2)不法就労助長罪に過失犯も含めること、の2点が加わりました。

 とくに後者の(2)については、重要な改正点と思われます。なぜならば、従来、不法就労助長罪は、同条の解釈上当該外国人が不法滞在者であることを「知っていること」が要件とされていました。このことは、「知らずに」雇っていたのであれば、同条の適用を受けないことになります。しかし、今回の改正により、知らなかったとしても過失がある場合には、なお、同条の適用を受けることになるわけです(73条の2第2項)。

 ここでの過失の認定方法についてはまだ明らかにされていませんが、私見では、事業主が外国人の「在留カード」などで就労できるかどうかの確認をしないまま、不法滞在者を雇用していた場合に、過失があると認められることになるのではないかと思われます。

 雇用関係においては、平成19年の雇用対策法改正により、外国人を雇用する雇用主に対し届出義務を課していますが、この届出義務の誠実履行が過失の有無の認定にあたり重要になるのではないかと思われます。

2.外国人研修生への労働法令の適用

 入管法改正による外国人雇用の第二のポイントは、外国人研修生に対する労働法令の適用です。今回の入管法改正により、在留資格「技能実習」が創設されることとなり、これには、従来、在留資格「研修」のもとで行われていた実務研修を含む研修と、その後「特定活動」の在留資格のもとで行われていた技能実習が、在留資格「技能実習」のもとで行われることになります。技能実習については、従来からも受入れ企業と技能実習生との間の雇用関係のもとで実施されていましたが、これが研修関係においてもそれが実務研修を含む場合は雇用関係のもとで実施されることになります。

 従来、研修については、労働法令の適用がなされない扱いがなされてきましたが、新たな技能実習制度においては、従来の研修にあたる実務を伴う技能修得の活動には労働基準法などの労働法令が適用され、労働基準監督署などの労働行政が関与することになります。

 外国人研修・技能実習制度については、人づくりの面からの開発途上国への技術移転という目的があり、この点について一定の成果は果たされてきたと思われますが、事実上の低賃金労働者として制度が悪用されているとの批判も多くなされてきました。今後は、受入れ企業等のコンプライアンスがこれまで以上に求められることになります。

【早川智津子 岩手大学准教授】

(注)「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律」(平成21年7月15日法律79号)。本稿で言及する法改正に基づく各制度の実施は施行日以降となります。なお、同改正法により、「特別永住者」に適用される「入管特例法」も改正されます。

(参考文献)
早川智津子『外国人労働の法政策』(2008年、信山社)
早川智津子「留学生と入管法−改正の概要と今後の展望−」留学交流2009年10月号(日本学生支援機構)