労働あ・ら・かると

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今月のテーマ(2009年9月 その2)

企業の人材雇用責任 その2 人材育成の責任と自己研鑽の責任

 今回は入社後の企業と人材の関係について考えてみます。

 私たち人材ビジネスの側面から言うと、人材は、入社後の新人時代は、夢をいっぱい持ってスタートします。一方、企業もその人材の将来の活躍を期待して、スタートすることになります。しかし、必ずと言ってよいほど、その後、一定のミスマッチが起きてくることになります。

 それは、会社も変わってくるし、人材も変化するということです。‘企業の寿命30年説’というのがありますが、企業も30年すれば変わってくるということでしょう。

 人材も60歳まで働くとすると、高卒で42年、大卒で40年弱労働することになります。企業の寿命が30年だとすると、定年まで同じ企業で働き続けるのは稀有な事例ということになります。

 つまり数十年のキャリアの中で、それがハッピーであるかどうかは別として、同一の企業で働き続けるというのは、珍しいケースであるということが言えると思います。

 一番ハッピーなのは、60歳の人が40年前にマッチしたとして、その後企業は大きく変化してきたのに、人材が能力を発揮し続けることができるということです。

 たとえば、ダイキンという企業があります。もともとは金属屋さんでしたが、いまではクーラー屋さんというイメージがあると思います。リクルートという会社がありますが、転職情報の雑誌屋さんから、今ではウエッブの会社で、提供する情報は、旅行情報であったりして、さまざまな情報を提供する会社となっています。変わっていないのは、情報を提供するということで、その情報は時代によってさまざまにマッチングさせています。

 一方、人材の方も、場数を踏んで、経験によってレベルが上がるということがあります。しかし、加齢によって、記憶力が減退したり、視力が衰えてくるということがあります。

 そして、最初に採用された企業が、40年間、マッチし続けるということはめったにないということになります。また、企業の中でも、船に例えるならば、小さな手漕ぎのボートを漕ぐのが得意であったり、大きな船舶を多くの人で航海するのが得意であったりするケースがありますが、全員がマッチし続けるということが何十年も続くということはなく、時代によって、船もさまざまに変わってくるわけです。

 そうした時に、新しい船に移るお手伝いをすることが、職業をあっせんする我々の仕事だということがいえます。できるならば、古い船が沈没する前に、安全に新しい船にお世話することができたらと考えています。ただし、昨今の情勢ですとなかなか厳しいところがありますが…。

 したがって、企業も変化するし、人材も変化します。いずれにしても、企業から見れば、新陳代謝を図るために、乗組員である一定の人材は去っていくことになります。その間に、新しい船の変化に応じた操縦法を覚えなければなりませんし、新しい船の情報、あるいは天候の予測であるとかさまざまな情報をキャッチする能力も磨かなければなりません。

 そんななかで、ミスマッチになった人材をよりよいところに移すという職業紹介の面からみれば、企業を使い捨てにする人材がいたり、反対に、すぐに希望退職を募ったり、解雇に走る企業が多いのも事実です。

 一方、人を大事にしてワークシェアリングなど様々な方法を模索し、雇用を確保し、雇用調整助成金を活用しながら、新しい時代に備えた人材育成に力を入れる企業もあり、その努力には頭の下がる思いです。

 最初の電卓ができたのは30〜40年前だと思いますが、私が就職内定した時は、そろばんの練習をするように言われたものです。それが電卓に変わり、今ではより高度なコンピューターに変わりました。

 その間に人材はどのように適合しなければならなかったのか、あるいは企業は、より効率的な道具をどのように提供した方がよいと考えてきたか。それには、企業と人材の双方に義務と責任があるのではないかと思えます。

 よく、求人で「即戦力」という言葉が使われます。しかし、今日の即戦力は明日の旧戦力、あるいは老朽力ということが言えます。つまり‘即戦力’がいつまでも即戦力であり続けることはありえないのです。

 企業において戦力であり続けるためには、人材は努力し続けなければなりません。企業は、その環境整備を進める必要があるのです。そして、その両方があって初めて企業が力を持ち続けることができると思います。

 ベテランの労働者にもそれは例外ではありません。ただし、能力には年齢によってピークというのもあります。あるベテランの技術者が「老眼には勝てない」といったことが印象に残っています。企業は、その能力の中身によって貢献してもらうというのが、本来の労務管理だということができるのだろうと思います。

 人材が能力を磨くというのは、まず知識を吸収し、それを編集し、シュミレーションする力が必要です。そして、それを提案する、つまり情報を発信するということです。

 そして、企業は人材が情報を収集しやすい環境を提供する。少なくとも、過労死が起きるような職場は、そうした能力を磨く時間を奪っているということが言えます。病院などの職場では、過労死や長時間労働が言われていますが、それでは医師は新しい疾病の情報収集や新しい治療法の技術を吸収することができません。

 一方で、人材の側も、休み時間は自由に使うことができますが、勤務時間であるかどうかにかかわらず、少なくともホワイトカラーは、自己啓発も含めて、広く情報収集の努力を怠ってはいけないということになります。

 日本の企業の教育はOJTによる育成が中心といわれています。そうだとすると、ジョブローテーションによるキャリア計画が必要になります。適材適所ということがありますが、この人は管理が向いているから経理がいいとか、知識を持っているから法務担当がいいとか、これらは企業の中の適材適所ということがいえます。

 一方、人材紹介の立場で言うと、企業の中でのミスマッチであっても、社会の中での適材適所ということがあります。適材を求めている企業には適材を、適所を求めて能力を発揮したいという人材にはいい企業を紹介するのが、われわれ人材紹介の適材適所ということになります。

 人間というのは保守的な面と進取の面がある。これを企業の中の人材チームが、どうかじ取りをしていくのかが、この混乱の時期、企業不況の中で真価が試されているということがいえます。

 船でみると、暴風雨の中で、船である企業自身がどう変化しなければならないのか、乗組員たちがどう成長し、進化しなければならないのか、両方の義務と責任の中で、それがかみ合うかどうかがこの難局を乗り切る企業と人材の在り方だといえるのではないでしょうか。

【岸 健二 (社)日本人材紹介事業協会(略称/人材協) 事務局長】