当コーナーでは、専門家による労働政策、労働経済情勢等に関するレポートを、随時紹介させていただいております。専門家の方々の明快な主張、独自の切り口による鋭い論評等が満載のレポートとなっています。ぜひ、ご覧になって下さい。
今月のテーマ(2009年6月 その4)
常用型の特定労働者派遣事業と登録型の一般労働者派遣事業
「常用型」の特定労働者派遣事業は雇用が安定しているから存続させるが、「登録型」の一般労働者派遣事業は雇用が不安定であるから禁止すべきだという議論が労働組合関係者などにある。あるいは、全ての業務ではなくても、たとえば製造業務についてはそうすべきだという議論もある。
形式的にはもっともらしく聞こえるが、実態はそう言いきれないことが厚生労働省が取りまとめた「労働者派遣契約の中途解除に係る対象労働者の雇用状況について」で明らかになっている。
すなわち、労働者派遣契約が中途で解除された場合には、「登録型」では91.1%の派遣労働者が離職しているが、「常用型」でも87.2%が離職しているというのである。この差は有意な差と呼べるようなものではないであろう。少なくとも、「常用型」の特定労働者派遣事業は存続させ、「登録型」の一般労働者派遣事業は禁止するとの論拠にはなり得ないであろう。
あるいは、「常用型」の特定労働者派遣事業は届出制、「登録型」の一般労働者派遣事業は許可制という現在の法規制そのものを見直して、特定労働者派遣事業についても許可制とすることが必要なのかもしれない。
情報処理業務などでは、これまでも、「常用型」の特定労働者派遣事業は届出制であるために、事業運営がいい加減であるとの批判があった。都道府県の労働局の審査においても、許可制の場合と届出制の場合では、その審査にかける時間や密度は当然違ってくるだろうし、たとえば、派遣元責任者講習でも、一般労働者派遣事業の派遣元責任者は5年に1度受講することが義務付けられているのに対し、特定労働者派遣事業の派遣元責任者には推奨されている程度である。
現在の派遣元責任者講習にはその効果に疑問があることは否めないにしろ、やはり丸1日講習を受講しているか否かにより、法令に対する理解には差が出てくる。
行政処分にしても、一般労働者派遣事業の場合には法違反があるときには許可の取り消しを行うことができるのに対し、特定労働者派遣事業の場合には欠格事由に該当する場合に限って事業廃止命令を科すことができることになっている。
制度の建前は重要ではあるが、実態がそれに合っていなければ、大胆に見直すことも必要であろう。
もちろん、これまで届出制で運営されてきた特定労働者派遣事業にいきなり許可制とする訳にはいかないだろうが、段階的にでも対応を考えなければならないかもしれない。
いずれにしても、「登録型」の一般労働者派遣事業性悪説というのは、現実には合致しないことを認識して、「常用型」の特定労働者派遣事業と「登録型」の一般労働者派遣事業とをトータルにとらえて、かつ、実態を踏まえた議論が行われることが期待される。
【木村大樹 国際産業労働調査研究センター代表】
