労働あ・ら・かると

 当コーナーでは、専門家による労働政策、労働経済情勢等に関するレポートを、随時紹介させていただいております。専門家の方々の明快な主張、独自の切り口による鋭い論評等が満載のレポートとなっています。ぜひ、ご覧になって下さい。

今月のテーマ(2009年3月 その4)

派遣をめぐる障害者の法定雇用率について

 平成20年11月20日に厚生労働省が発表した身体障害者、知的障害者及び精神障害者(以下「障害者」といいます。)の雇用状況によると、国の機関では、全ての機関で障害者の法定雇用率を達成しており、民間企業(56人以上規模)でも全体の実雇用率は1.59%となり対前年比で0.04ポイント上昇し、法定雇用率を達成している企業の割合は44.9%と前年比で1.1ポイント上昇しているようです。

 そもそも、法定雇用率とは、事業主が常用雇用労働者のうち障害者を雇用すべき割合です(「障害者の雇用の促進等に関する法律」第43条)。現在その法定雇用率は、民間企業が1.8%、国、地方公共団体、特殊法人の場合は2.1%、都道府県等の教育委員会が2.0%とされています。そして、法定雇用率を未達成の事業主からは、障害者雇用調整納付金を徴収し、一方で法定雇用率を達成した事業主には障害者雇用調整金や報奨金を支給して事業主の障害者雇用に伴う経済的負担の調整がなされていることは多くの方がご承知と思います(厳密には企業規模の要件もあります)。

 ところが最近何かと話題になっている派遣業界において、事業主が法定雇用率を達成するのは厳しい状況にあります。派遣業の事業主の場合、法定雇用率の算式の分母には常用雇用派遣労働者数も算入されますが、障害者を受け入れる派遣先がなければ、障害者雇用率は低い数値にとどまってしまいます。しかし残念ながら派遣元に派遣料を支払って障害者を受け入れる派遣先は極めて少数派です。法定雇用率の達成は業界に関係なく達成されなければならないというのが建前のようですが、やはり業界によっては障害者の受け入れにハードルの高低は存在するように思います。そこで、社団法人日本人材派遣協会も派遣先が障害者である常用雇用派遣労働者を受入れた場合、派遣元の雇用する労働者として法定雇用率にカウントするのみならず、派遣先の雇用労働者として法定雇用率にカウントするよう要望しています。同協会は、この手法によって、受入れた障害者である派遣労働者を自社の雇用する労働者として認めてもらえれば、派遣先の障害者雇用に対する理解も進み、障害者の受入促進に効果があるとしています。

 ただ、この案に対しては、様々な批判があることも事実です。たとえば、(1)派遣労働は障害者に最も不適切な労働形態であるとか、(2)直接雇用関係にない障害者を派遣先の法定雇用率の算定に加えるのは不平等であるとか、(3)1人の障害者をダブルカウントすることになる、などがその例です。

 しかし、(1)に対しては、障害者にも多様な就業形態があっても良いと言えますし、障害者採用のパイプを持たない企業が現実的な障害者受け入れルートとして紹介予定派遣などを考えることも今後あっても良いように思います。また、(2)、(3)に対しては、人材派業協会が次のようにコメントしています。すなわち、「派遣元にとっては同一人を障害者雇用率に1人としてカウントするのであって、2人とカウントするのではありません。合わせて派遣先に1人とカウントするので、派遣元に特に有利に扱っているわけではないのです。これはあくまでも障害者の雇用促進の手段であって、例えば重度障害者を雇用した場合1人を2人と計算するのと同様の考え方であると考えます。」

 現在、このカウント方法についても、派遣元0.5、派遣先0.5とするカウント方法や合計1を前提に派遣元と派遣先の割合を変える案なども検討されています。

 そもそも、障害者雇用納付金制度の目的は、障害者の雇用に伴う事業主の経済的負担の調整を図るとともに、全体として障害者の雇用水準を引き上げることにあります(障害者の雇用の促進等に関する法律第49条)。そして、障害者が働きやすい職場環境への配慮は、派遣元、派遣先の双方に必要であり役割分担が不可欠であることに異論はないはずです。それならば、派遣元と派遣先のカウント割合については今後の議論を待つにしても、障害者を受け入れる派遣先においても法定雇用率の算出において障害者をカウントできる人材派遣業協会の要望するような方向の法改正が望ましいのではないでしょうか。

【中野厚徳:虎ノ門パートナーズ法律事務所 弁護士 社会保険労務士】