当コーナーでは、専門家による労働政策、労働経済情勢等に関するレポートを、随時紹介させていただいております。専門家の方々の明快な主張、独自の切り口による鋭い論評等が満載のレポートとなっています。ぜひ、ご覧になって下さい。
今月のテーマ(2009年1月)
休職社員の復職判断について
休職とは何らかの事情により労務に従事することが不能または不適当な社員に対し、その社員の労働契約関係を維持したまま、一定期間、労務への従事を免除または禁止することです。そして、私傷病で労務提供ができない場合は、休職事由に該当し、それが休職期間の満了までに「治癒」すれば復職が可能になり、「治癒」しなければ自然退職あるいは解雇に至るという制度が一般的です。
近時、精神疾患による休職社員の増加が社会的な問題になっており、そのような社員の復職の可否の判断については、会社側も神経を使うことが多いことと思います。とりわけ、精神疾患の場合は、治癒したかどうかの判断が微妙であり、判断に迷うこともしばしばだと思います。
さらに、休職期間が満了すると退職に追い込まれてしまう休職社員側の切羽詰まった事情を察して、その意向に沿うように「復職可能」あるいは「治癒したが業務軽減の配慮を要する」との診断書を書く主治医の援護もあいまって、本当の治癒が判定しにくく、状況を一層複雑にしています。そもそも、復職の可否をめぐって、私傷病の治癒を最終的に判断するのは使用者である会社ですが、復職を可能にする「治癒」とはどのような状態をいうのでしょうか。また、私傷病の治癒を証明するのは休職していた社員なのでしょうか、それとも会社が治癒していないことを証明するのでしょうか。現職(休職前の職務)復帰が原則なのでしょうか。会社はリハビリ勤務をさせるべきなのでしょうか。このような疑問を多く耳にしますし、現に、裁判所の判断や実務家の意見も分かれています。
ところが、労働基準法には休職制度についての定めはありません、むしろ、労働基準法施行規則第5条第11号は、使用者が休職について定めをしない場合も当然に予定しており、会社が休職制度を導入するか否か、そしてどのような休職制度を導入すべきかについて、法律は全く干渉していないということです。にもかかわらず多くの会社が休職制度を採用しているのは、労働契約という継続的な契約関係を重視して、解雇猶予措置を設けようという会社側の配慮です。
こうした、法制度や企業の恩恵的対応を前提に考えると、「業務軽減の配慮を要する」という診断ではそもそも復職可能な治癒とはいえないように思います。勿論、会社の規模やその人が職種の限定なしで採用されているか否かによっても復職の可否の結論が異なる場合はあるとは思います。しかし、原則は従前の職務を通常の程度に遂行できる状態に回復していることが治癒であるという意見には頷けるものがあります。
また、休職社員の最大の責務は病気の治療です。そして、治療や健康状態についての情報を一番持っているのは休職社員本人ですから、病気の治癒を証明する義務も休職社員の側にあるのではないでしょうか。
さらに、復職時の対応についても、精神疾患では、従前と異なる新しい職場への適応には負担がかかるため、現職復帰が原則だと言われています。ただ、リハビリ勤務という制度はやや問題があるように思います。周囲にも気を遣わせ、周囲から気を遣われていることが分かることも、心理的負担になります。また、精神疾患の場合、休職中や休職前より、一度復帰した後の方が、自殺する人が多いという話も聞くところです。そうなると、リハビリ出勤の態様にも企業は相応の配慮が必要だということにもなります。
制度として休職を設けている以上、休職社員には復帰できるレベルまでの治療に専念してもらい、そのかわり、会社は復職の可否を産業医などの意見も聞いてきちんと判断するということが合理的だと思います。
【中野厚徳 虎ノ門パートナーズ法律事務所 弁護士 社会保険労務士】
