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今月のテーマ(2005年12月その4)
経団連の「経営労働政策委員会報告」について
最近、日本経団連は毎年12月の中頃になると、翌年の経営労働に関する経営側の基本方針を「経営労働政策委員会報告」として発表している。今年も13日に発表し、マスコミに大きく取り上げられている。
報告書は、第一次オイルショック後の昭和49年に出された日経連「大幅賃上げ行方研究委員会報告」が最初で、その後、賃金だけではないということで「労働問題研究委員会報告」に改名、そして日経連と経団連の合併以後、経営との関連等範囲を広げて「経営労働政策委員会報告」となり、企業経営の指針として今日に至っている。
今回出された2006年版「経営労働政策委員会報告」の内容は、3部構成になっており、第1部が「企業を取り巻く環境変化」、第2部が「経営と労働の課題」、第3部が「今後の経営者のあり方」となっている。今回マスコミに大きく取り上げられている点は「春季労使交渉・労使協議に臨む経営側のスタンス」の中の賃上げ問題についての考え方・姿勢である。
この報告書は既述のようにスタートが、労働側の”春闘”に対する経営側の指針ということもあって、報告書には色々な重要な問題が盛り込まれているが、マスコミ等で注目されるのはいつも賃上げに対する経営側の考え方・姿勢である。今回も一部マスコミでは「経団連、賃上げ容認」といった報道がなされている。そのような報道をされた記述部分を一部紹介しよう。
「経済環境が好転しつつある現在、企業にとって本格的に『攻めの経営改革』に乗り出す環境が整いつつあり、競争力を高めうる好機にある。この好機を活かすためには、労使の一層の協力が不可欠であり賃金などの労働条件の改定についても、企業の競争力を損ねることなく働く人の意欲を高める適切な舵取りが望まれる」。
経営環境が改善されてきていることや賃下げについて触れていないことなどを考えると、経営側としても今までと少し違ったメッセージを発信したいとの思いが報告書の行間から読み取ることも出来る。このような経営環境になってきたことは喜ぶべきことであり、労使の長い間の苦労と努力の結果であり、この良くなりつつある経営環境を今後とも持続・発展していくことに公労使だけでなく、国民挙げて知恵を出し合い努力していかなければならない。
そのようなことを考えた場合、また来た道に戻るような安易な対応は厳に慎まなければならない。その視点で見れば、経営側の基本的なスタンスは従来と大きく異なることはなく、現在から将来に向けてごく当たり前のことを述べていると言ってよいであろう。
一言で言えば、賃金決定は自社の支払い能力によるということが基本であり、生産性が向上し、将来的にも経営が安定している企業は可能であるが、そうでない企業は、賃上げは「企業の競争力の低下を招き、雇用の安定や企業の存続さえも危うくする」とし、本報告書でも「個別企業の賃金決定は個別労使がそれぞれの経営事情を踏まえて行うべきである」としている。つまり、個々の企業の経営実態を検討して、自己責任でお互いが納得いく対応をして欲しいということであろう。
また、報告書では、賃上げとの関連で、「生産性の上昇のない企業も横並びで賃金水準を底上げする市場横断的なベースアップはもはやありえない」とし、「わが国の高コスト構造の原因にもなる」としている。
そのほか、総額人件費管理の徹底との関連で所定内賃金を100にすると総額人件費は168と約1.7倍であること、日本の賃金は依然として世界のトップクラスにあること、短期的な成果については、引き続いて賞与・一時金に反映すること、などを指摘するとともに、毎年だれもが自動的に昇給するという定期昇給の見直し、能力・役割・業績を中心とした人事・賃金制度への抜本的改革、多様化する雇用への対応の検討など、今後検討すべき課題を挙げている。
報告書では、「横並びの『春闘』はすでに終焉した。春季の労使討議の場としての『春討』が継続・発展することを期待したい」としている。年を越えれば、いろんな考え方、動きがあるが、労使が広い視点に立って、十分話し合いを行い、日本の将来や国民生活がよりよくなる方向で対応されることを強く期待したい。
